女の子を家まで届けたら俺のことが嫌いな後輩が出てきた件

桜木紡

第1章

第1話 俺のことが嫌いな後輩

突然だが後輩の中には俺のことが嫌いな奴が1人居る。別に俺が何かそいつに対してやらかした訳では無いしなんなら委員会以外では話したこともない、まぁわざわざ1年のフロアにまで移動して話に行ったことは無いが。


そもそもとして自分のことを嫌ってるとはっきりわかるやつのところに自分から行かないだろう。まぁ俺からしたら嫌われてる理由は不明なのだが。


それでも委員会は俺と一緒でしかも俺とそいつの2人ともう1人だけなので話すことはちょくちょくある。今は放課後でそいつだけが先に帰ってしまったので委員会の仕事は俺とそのもう1人である小鳥遊たかなしとやっている。


「なぁ小鳥遊、なんで俺が星野に嫌われてると思う?」


「僕に聞かないでもらえるかな? 僕は隼人はやとじゃないんだからかえでの気持ちはわからないよ。理由を知りたいなら本人に直接聞きなよ」


「自分のことを嫌ってるやつにわざわざその理由を聞きに行くやつなんて居ないだろ? 連絡先でも持っていたらスマホでどうにかなったが」


嫌いな先輩の連絡先を聞きに来るわけないし、連絡先をもっていたとしても送ったところで無視される可能性の方が高いだろう。


「なら楓のことは諦めなよ、別に同学年じゃない上に異性なんだから無理して友達になる必要は無いんじゃないかな?」


「でも同じ委員会だぞ? 友達とは行かなくても話せるくらいにはなっておきたいと思ってる」


まぁそのためには星野がなんで俺の事を嫌っているかを知る必要がある。その理由から俺が改善したら話すくらいにはなってくれると信じたい。


俺としてはそもそも友達自体が少ないので友達になりたいところだがまぁ今から友達になるには現時点での好感度が低すぎる。


「そういえばなんで星野は委員会の仕事をせずに帰って行ったんだ?」


「確か親が今日の夕方から出張で居なくなるから、その間妹の世話をするためにしばらく委員会は来ないって言っていたはずだよ」


その事が小鳥遊には伝わっていて俺には伝わっていないことはひとまず置いておいて、大変そうだ。何歳の妹かは知らないが親に変わって世話をするとなると相当な体力を使うと思う。


小鳥遊は俺と違って星野と普通に仲がいい、だから小鳥遊の耳にはこのことが伝わってきているのだとは思うが、俺と小鳥遊の違いがわからない。容姿は確かに小鳥遊の方が整ってるけど、それだけで嫌いだと思われているのなら俺は泣きたい。


「来ないなら来ないでいいや、別に図書委員なんか2人いればなんとかなるでしょ。図書委員の仕事なんかより妹の世話の方がよっぽど重要だろうし」


「隼人はそのことが理解出来てるのになんで嫌われてるんだろうね。他の男子どもより物分りが良くて顔も成績もいいのに」


「その全てで俺を上回ってる小鳥遊に言われても嫌味に聞こえないんだが」


どっちの方が物分りがいいかは分からないが顔に関しては圧倒的に小鳥遊の方が上だし成績も小鳥遊の方が少し上だ。


「普通に考えたら隼人に嫌われる理由なんてないと思うけどね、逆に好かれる要素の方があると僕は思うよ」


「小鳥遊に言われるならそうなんだろうな。というかなんで小鳥遊は誰とも付き合ってないんだ?」


「バイト」


「あーうん」


そんなこんなで委員会が終わって小鳥遊と逆の道を歩く。委員会がある日は19時ぐらいになるのであたりなのだが珍しい事に公園で1人の女の子がブランコをゆっくりと漕いでいた。


まだ真っ暗ってわけじゃないし遅くまで遊んでるだけなんだろう。俺はそのまま公園を通り過ぎようとしたのだが周りに親らしき人が見当たらない上に俺にはその女の子が泣いているように見えた。


下手したら泣かれるだけかもしれないがそれでも無視して帰るほど俺は薄情じゃないので声をかけに行った。


「1人でどうしたんだ?」


小さい子どもとなんて関わったことがないのでどんな感じで話し方をすれば良いかが分からない。


「お姉ちゃんが帰ってこないから……1人で出ちゃった」


「なら1回その家まで帰ろうか。どこに自分の家があるかわかる?」


「あっち……」


はぐれないように手を繋ぎながらこの子が指さした家まで向かっていく。まぁ5、6歳くらいの女の子だろうか、そんな小さな子が1人で来れてるということで家はそこまで遠くなかった。


星野と、俺の事を嫌いな後輩と同じ苗字が書かれてはいたが星野なんて苗字はそこまで珍しくもないだろう。届けたし、中の人にこの子を預けたら帰ろうと思ってはいたがちょうど家のチャイムに手をかけようとしていた時に横から来た人のせいで帰れなくなった。


「なんで澄風先輩が?」


「え?」


星野が横からやってきて、俺は今5、6歳の女の子と手を繋いでいる、そして家の前……。


これが意味するのはとんでもない誤解をされるということだ。俺に貸されたミッションはこの俺のことが嫌いな星野をなんとか説得しないといけない。


「澄風先輩ってロリコンだったんですね、見損ないました。というか探してた妹が先輩のとこにいるってことはそういうことですか?」


「断じて違う、俺はロリコンじゃないからな。公園に一人でいたから家の位置を聞いてここまで連れてきた」


俺にはこれ以上言えることがないので信じて貰えなかったら終わりである。


「……妹が泣いてないですし、それは本当なんでしょうね。一応お礼を言っておきます」


「一応ってなんだ、一応って。まぁ星野の妹が無事でよかったよ、じゃあ俺は帰るから次は目を離すなよ」


早く帰らないと晩御飯を作って待ってる妹に怒られてしまう!



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