第8話忍び寄る影
「そう言ってる割にはずいぶんと余裕そうに見えるけどな」
「いやいやもし君がその女の子を抱えて戦ってなかったらもっと危なかったわけだから運が良かったってことなのか」
「意外とそういうわけでもないかもしんねえぞ」
「結局お前がいくら運が良かったとしても倒されたら変わらないわけだからな」
「それは考えたくない未来の話だな」
言いながら後ろに逃げるように高く飛びどこかに隠れる。
「遠くに隠れて俺の隙を狙うつもりか」
とりあえずここにずっと立ってるのは危険だ。
俺はほとんどどこに何があるのか感覚をつかめていない場所をまっすぐひたすら走る。
ひたすら走り続けていると目の前に洞窟の穴のようなものが見えてくる。
「あそこにひとまず隠れがてらあいつがどこにいるのか探ってみるか」
洞窟の中に入る。
洞窟の壁に片手で抱きかかえていた葵の体を横たわらせる。
「葵を片手で抱きかかえたまま戦い続けるのはまあなんとかなると思うが、戦っている最中に意識が戻ったらまずい」
「……」
「今のうちに今回あったこの出来事の一部を消しておくか」
葵の額に手をかざす。
「いやそれをやるのはもうちょっと後にしよう!」
「俺があいつに勝てばいいだけの話しだ」
「葵もう少しの辛抱だもうちょっと眠っててくれ」
そう言ってもう一度葵の体を片手で抱きかかえる。
覚悟を決めたところでその洞窟から出る。
「見つけたぞ!」
「もう逃げないで俺と戦うんじゃなかったのか」
「俺はそんなことを言ったつもりはない」
「ただ体制を立て直そうと思っただけだ」
「わざわざ逃げたってことはだいぶ危なかったってことか?」
煽るような口調で言ってくる。
「いやそういうわけじゃねぇよ」
「ただ走り続けるのがめんどくさくなって少し休憩しようと思っただけだ」
相手が魔法の杖を俺の方に向け魔法を放つ。
飛んできた魔法は光の玉のようなもので見たことがない魔法だ。
俺は剣を構え直しその大きな光の玉を真っ2つに切り裂いた。
「今の魔法を瞬時に真っ二つに着るなんてやっぱりお前は狂ってる」
不気味な笑い声をあげながら言う。
「そろそろ本気を出すとするか」
そういった相手の目は薄気味悪い黒の紫色へと変わった。
「お前もしかしてその目!」
「俺も君と同じように呪いの力を持ってるんだ」
言った次の瞬間相手の足元に丸い円盤のような形をした乗り物が現れる。
その円盤に乗り素早い動きで後ろに下がり森の中へと隠れる。
「待て!」
相手が俺と同じように呪いの力を持っていることがわかった以上下手に深追いするのは危険だ。
ここは慎重にゆっくりとあいつを探していくしかないか。
俺は走りながら相手の姿を探す。
「なぁ君呪いの力に飲み込まれた人間がどうなるか知ってるか?」
「知らねえな」
相手の姿が見えずどこからともなく聞こえてくる声に俺はそう答える。
「呪いの力に飲み込まれた人間はその呪いの力を持った本人の力よりも倍の力を得ることができる」
「だがその時にはもう自分自身の理性は飛んでいるだろう」
「もしそんなことになればその呪いの力に飲み込まれた本人はモンスターとして冒険者たちに
「それがどうした」
「いや別に深い意味はない、ただの忠告だ」
「今君が抱きかかえているその女の子も君自身も呪いの力に飲み込まれモンスターと化す可能性があるってことだ」
「それに君自身がもうすでに化け物みたいなものだ」
「いくら呪いを体に宿しているからその影響でスキルが使えないとはいえそれを差し引いたとしても化け物に近い」
「もしそんな君が呪いの力に飲み込まれ完全な化け物になってしまったらその力は倍増しこの世界の完全な脅威になる」
「俺は大丈夫だ」
「そんな確証はどこにもないだろう」
「お前の言う通りそんな確証はどこにもない」
「だけど俺がそんな状態になっちまったら誰かしらが俺のことを討伐してくれるんだろう」
「だったらその時はその時だ」
「それに俺はそんな呪いの力なんかに負けない必ずこの力を抑え込んでみせる」
「そんな心配はいらない力を抑え込む抑え込まないの前に俺にここで殺されるんだからな」
俺は相手が言った次の瞬間剣の斬撃を飛ばした。
「そんな剣をむやみやたらに振ったところで俺にあたりはしない」
そんな言葉は一切無視して同じ攻撃を放つ。
「もう戦いの策を考えるのが面倒くさくなったのか」
「まさにバカの一つ覚えだな」
その言葉には何も答えず俺はとにかく走り続ける。
走り続けているとさっきの洞窟の穴の場所へと再びたどり着いた。
さっきと同じようにその洞窟に入り葵を壁に横たわらせる。
「どうしたさっきと同じ場所に戻ってきてここに墓を作って欲しいのか?」
そう言いながら円盤に乗っかった状態で空中から降りてくる。
「残念ながら俺には死ぬ予定がまだねぇな」
「なにせやらなきゃいけないことが結構多くてよ」
「この世界の悪である魔王も倒さなきゃいけねぇし」
「はははこの世界の脅威になるかもしれない人間がこの世界の悪を倒そうとしてるなんて皮肉なものだな」
「後は葵の呪い含め色々と調べないといけないこともあるしな」
「そういうことならどうだ俺たちの組織に入ってくれればいろんな情報を提供するぞ」
「お前とどこかで偶然の出会いをしてたらまだ仲間になる可能性はあったかもしれないが、今こうして敵対している人間と手を組もうとは思えない」
「それにお前のさっきの言葉を聞く限り、これから俺たちのことを調べる団塊みたいだし、そんなにこの呪いのことについて調べられてないんだろう」
「随分と痛いところをついてくるな君」
「確かに言うとおりまだそれらしい研究結果も出てないしだからこそ連れ去ろうとしたっていうのが大きな理由だからな」
そう言いながら静かに剣を構える。
俺も両手で剣を握り構え直す。
次の瞬間相手が自分の目を光らせそれと同時に妙な空間を作り出す。
「この空間の中じゃ俺の力スピード全ての基礎能力が底上げされる」
「そうか…」
「追い込まれてるのに随分と余裕そうだな」
「まあ何をどうしたところで俺が勝たないといけないのは変わらないからな」
「後のなぁ…」
「これで俺のことを追い込んだつもりか!」
「いつの間に!」
俺は相手の後ろに回り込み剣を振り下ろし相手の体を切った。
「うわ!」
「さすがだな切られる直前まで後ろにいることに気づかなかったぞ」
言いながら再び目からどす黒い色を放つ。
「いくらこの結界の中でのお前の力を倍増したところで俺には勝てねえぞ」
その俺の言葉を聞いているのかいないのかその結界の中を飛び回る。
相手がその結界の壁を踏めば踏むほどスピードがどんどんと加速して行き俺の周りを飛び回る。
容赦なく攻撃を畳みかけてくるが俺はその攻撃を全て避ける。
「いくらお前が動くスピードを底上げしようが俺がそれを上回っちまえば関係ない」
俺は再び後ろに回り込み券を振り下ろす。
「俺が2度も背後を取られるとはな」
「うおおおーーー!!!」
これが最後だと言わんばかりに叫び声を上げ俺に剣を振り下ろしてくる。
「無駄だ!」
俺は手に持っている剣を相手の胸に突き刺す。
「お前が俺を倒したとしても…また別の誰かがお前たちを襲いにくる」
「その時はまたお前と同じように倒すだけだ」
言いながら突き刺した剣を抜く。
「そうか…」
仰向けで地面に倒れる。
「最後に教えろお前たちの組織は何が目的だ?」
「それは組織の鉄の掟だ教えてやることはできない」
その言葉を最後に自分の剣で静かに胸を刺した。
「かずくん?」
眠気さを含んだ口調で葵が俺の名前を呼ぶ。
「やっと目覚たか」
これからどんな脅威が降りかかってくるとしても俺は守るべきものを守る。
生まれ持った【呪い】なんかに支配されないスキル魔力なんて使えなくても『剣を極』め最強を目指し、大事なものを守るだから代わりに守ってくれ カイト @478859335956288968258582555888
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