第3話 入眠時幻覚

入眠時幻覚ってわかりますか。

要するに金縛りなんですけどね、寝入ったばかりか起きる直前に見るやたらリアルな夢のことです。

疲れすぎた時、睡眠のリズムが崩れた時、不安を強く感じている時に起きるようなんですよ。

これが本当に気持ち悪くて、今自分が布団に寝ている状態を認識してるんです。

寝ている自分の周りをライオンが歩いていて、体の周りの布団を踏んでいく感触がするんです。生暖かい息遣いも。

誰かが帰ってきた気がして飛び起きたら壁中に写真が貼ってあって、自分の部屋こんなんだったかな、なんて思ってたら目が覚める。

何度か繰り返すと今見てる部屋が夢なのか本物なのかがわからなくなる。

近隣の部屋の住人が暴れ回っていて、うるさいなあなんて思ってたら大きな地震が起きて窓ガラスが大破する。

慌てて布団から出て家族と猫の様子を確認しに行くと、一人暮らしのベッドで目が覚める。

女の人がくすくすと笑いながら、寝ている私の腰に巻きつこうとしてくる気配がして、どうしても嫌な私は「来週来ていいから、今はやめて、お願い」と懇願する。

2人目がきた気配があったけど、するするとやめて帰っていく。

全く知らない部屋で目を覚ます。

ぐるんぐるんと意識が体ごと回転するような感覚のあと、横向きに寝ている私の背後から男の人の呻き声がする。

首のあたりに息を吹きかけられる。

消えろ、と言いたいのに口が動かない。

何度か必死に念じるうち微かに呟けた気がして、同時に意識が無理矢理浮上してくる。

なんとか仰向けに寝返る。

汗をかいてる。

呼吸を整えて目を開ける。

呻く男なんていないし、自分の部屋だ。

心霊現象のいくつかはこれと同じで自分の脳が作り出す幻覚だと思っているのだけど。

寝ている体に干渉してくるあの感覚と、動けない恐怖と、いやにハッキリと感じる気配が、本物なわけあってたまるかと思うのです。

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もけこの怖そうで怖くないちょっと怖い話 @mokeko0824

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