第2話 いたちの続き

たぬこちゃんの生き霊エピソードはもうひとつあります。

金縛りに比べると弱いのですが2つあると書いた手前早々に出しておきます。


和室でフェレットを遊ばせている時でした。

黒茶で顔がたぬき柄のたぬこちゃん、全身黄味がかった白色のこんちゃんの2匹です。

そこは両親の寝室で広々としたダブルベッドとタンスがあるだけの部屋でした。

フェレットとの遊び方は他の動物と比べ独特で、ベッドにぽーんと放り投げてやると大喜びするものですから、何かしら齧ろうとしたり和室から脱走しそうな時にはむんずと掴んでベッドへダイブさせるのがいつものやり方でした。

その日私は閉めた襖の前に立ち、リビングにいる母と襖越しに何か会話をしていました。

すると足元に黒くて細長い影がにょろりと近づいてきたのが視界の端に映り、私はまたたぬこちゃんが脱走を試みにきたと思い、視線は襖の方に向けたまま前屈みに右腕を伸ばしました。

ところがそこにいるはずのふわふわには手が触れず、畳の感触がしました。

掴み損ねたか、と手の先を向くとたぬこちゃんの姿はなく、顔を上げるとベッドの上でぴょんぴょこ跳ねているのが見えました。

私のいる位置からベッドまでは大した距離ではありませんが、小動物が移動するには数秒程度の時間が要ります。

さらにベッドに登るには段になった踏み台を上がって行くか側面から布団をよじ登る必要があり、私が顔を上げる一瞬で移動できるとは思えません。

今確かにここに来たのにな、としばらく私は首を傾げました。

黒くて足元に這うにょろっとした影なんて、たぬこちゃんじゃないとしたら得体が知れなさすぎます。

まあ見間違いとか勘違いの類いではあるでしょうが、それだと色気がなさすぎる気がして、私が見たものはたぬこちゃんの生霊だということにしたのでした。




どうです、弱いでしょう。




ちょっとエピソードとして弱すぎるので、他のペットにまつわるお話しもさせてください。



フェレットと同時期に我が家には猫が3匹おりました。

そのうちの1匹は怪我で下半身が不自由になってしまい、それが直接の原因かはわかりませんがある日突然亡くなってしまったのです。

あまりに突然のことでしたから、学校から帰って聞かされた時にはなかなか受け入れられませんでした。

明日には霊園へ連れて行くということですが、私は次の日も学校があって付き添えないため、その夜はそばで一緒に寝ました。

泣きながら寝て、目が覚めた時、猫の顔を見て驚きました。


鼻ちょうちんができていました。

漫画みたいなそれはそれは見事な鼻ちょうちんでした。

泣きすぎてくちゃくちゃの顔のまま、吹き出して笑いました。

体内に残ってた空気が出たのかな、と不思議に思いつつ、

「息をしていたんだ」と強く感じて、この子が生きていたことを嬉しく想いました。

最後に私のこと笑わせてくれて、本当に優しい子です。ありがとう。


つい先日、もう1匹の白ブチ猫も旅立ちました。

こちらは21歳のご長寿でした。

私は既に実家を出て暮らしているものですから、母から猫危篤の電報(LINE)を受けてその週の休みに帰省しました。

寝たきりになってしまい、歳的にもいつ亡くなってもおかしくない状況でしたが、私が帰省したタイミングでは時折大きな声で鳴く様子もあり、精一杯生きていました。

実家から帰り、普段の仕事に戻ってからも気が気でなく、思い出しては泣いていたのですが、なんとその週も持ち堪えてくれたため再度私は実家に足を運びました。

もう水も飲めないくらい弱っていましたが、痩せ細った体で必死に息をしていました。

2度目の帰省の際も持ち堪えてくれましたが、私が自宅へ戻った3日後にとうとう息を引き取りました。

火葬の日、私は立ち会うことができなかったのですが、その日の夢に出てきてくれたのです。

寝たきりだったおじいちゃん猫は、ご機嫌に歩き回っていました。

自由になれたんだ、とホッとしました。

立ち会えないことに罪悪感を持っていたのですが、許してくれたように感じました。

所詮夢ですし、全部私の脳が作った勝手なイメージだったとしても、それでもいいと思えました。




ただのいい話ですみません。

動物にまつわる話はこれでおしまいです。

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