もけこの怖そうで怖くないちょっと怖い話

@mokeko0824

第1話 たぬこちゃんの生霊

私には霊感がありません。

零感の人。

家族も全員そう。

ただ幽霊とかホラーとかの類の話は大好物で夜な夜な怖い話を貪ってます。

なのでもし本当に幽霊さんがいるものなら一度ぜひお目にかかりたいと思い、日々挨拶の言葉などを考えているのですが今のところまだその機会は訪れておりません。


そんな私ですが過去に二度、飼っていた動物に関係する不思議体験があります。


私が中学生のころ、自室のベッドで寝ている時。

窓からは強い西日が差し込んでとても明るい夕方でした。

突然金縛りが起き仰向けのままぴくりとも動けなくなったのです。

私は、

これが例の金縛りってやつか!?うっひょーすげえまじで動かねえ!

と大喜びしました。

当時2000年を迎えて数年経ち、テレビでは怪奇現象やUFO、UMAを科学的に解明するような特集がよく組まれていました。

金縛りは脳のメカニズムとして誰にでも起こり得るものと、この間やっていた心霊検証番組で見たばかり、そして西日に照らされた明るい部屋の中でのことであり、幽霊的な怖さは皆無でした。

とはいえ初めて自分の身に起こったものですから、中学生は嬉しくて興奮しまくったのでした。

ところがそのままの状態でしばらくいると、呼吸がしづらく段々と苦しくなってまいりました。

なんとか解けないかとあちこち体に力を入れてうめいていると、ぱちっと目が開きました。

するとそこには、当時実家で飼っていたフェレットのたぬこちゃんのドアップがありました。


たぬこちゃん?????????????


状況が理解できないまま視線だけを移動すると、人の手が見えました。

たぬこちゃんは誰かに胴体を握られた状態で、私の眼前へとぶら下げられてるようなのです。

さらにピントを遠くへ合わせると手の持ち主の顔がありました。

母でした。


母??????????????????


ほれ、ほ〜れ〜と私の鼻先にたぬこちゃんをチラつかせる母。


何やってんのおかん。


状況がさらにわからなくなったその時、ばっと全身の硬直が取れ体に自由が戻りました。

やっと息が吸えるようになり、私は大きく胸で呼吸をしました。

上半身を起こすと、そこにたぬこちゃんも母の姿もありませんでした。

全身は汗でびっしょり濡れていました。


リビングに行くと、和室に母がいました。

本を読んでいる母に「今、私の部屋にたぬこちゃん持ってきた?」と聞くと、訝しげな顔で「そんなことするわけないでしょ」と呟き、ページに視線を戻します。

たぬこちゃんはケージの中のハンモックで、同居フェレットのこんちゃんと一緒にすやすやと寝息をたてていました。



金縛りが科学的に証明できる現象だとして、その時に見るものは自身が作り出した妄想、幻覚、錯覚なわけです。

自分が怖いと思っているもの、髪の長い白ワンピースの女みたいなテンプレ幽霊さんの姿など、とっさに脳が作り出して見せてしまうのが心霊現象なんじゃないかとか言われているのですが、そうなると私が見たものは一体何なのでしょうか。

私の脳みその限界、なのでしょうか…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る