20231028

 時間が空いてしまったが久々にストーリーと呼べる夢を見たので綴る。


 白い服を着た主人の家に招かれた。


 崖の上で私の居城が遠巻きながらよく見える場所だった。


 もうすでに宴もたけなわ。


 酔いを覚ます為に夕霞でも頂こうか、と夕日に染まる居城を眺めつつ風に当たっていた。


 すると、主人が水が入った盃を2つ持ち私の横に座る。


「お加減は如何ですか。」


「いやあ良い酒でした。惜しむらくはあなたの事か。何度願い出ても私の元には来てくださらんかった。」


「もっと早くにあなたと出会えれば、とは思います。」


「ご両親の為ならば致し方ない。」


 私は彼を私の門下に加えたいと何度も願い出たが遂にはそれは叶わず、彼は病に苦しむ両親の元へ戻る事となった。


 彼の能力があればこの地はもっと豊かになる筈だった。口惜しい。


「もし、私が戻る事があれば、あなたは私を受け入れて頂けますか。」


「それは無論。この地もあなたの力があればより良く・・・」


 幾つもの金属が擦れる大きな音が遠くから鳴り響く。


 聞き覚えのある音だ。


 それもあまり聞きたくない方の音。


 鎧の小片が擦れぶつかり合う集合音と響く銅鑼。


「どこかから遠征軍が戻られたのですか。」


 彼は音が鳴り響く方を眺めながら尋ねてくるが、私は答えに詰まる。


「いや、そんなはずは・・・。」


 派遣した覚えのない遠征軍は続く銅鑼の音に従い、矢を居城に向かって弾く。


 蝗の群れのような空を埋め尽くすほどの矢が落陽を隠して居城を襲う。


「あの青い旗印は・・・。」


 それは幾度の戦場で相まみえた、見覚えのある旗印だった。


 夕闇に染まって行く居城に向かって数多の隕石が落ちてゆく。


 いや、あれは火矢だ。


「まずい、もしあれがあなたの事を知っているなら・・・。」


「・・・きっと私はあの方の元で鎖に繋がれるように、無為に親の顔すら見る事も出来ず暮らすでしょうね。」


 彼は唇を少し噛みしめて再度放たれる火矢の行方をじっと見つめていた。



 私はあれに見つかった敵方の智将の成れの果てを聞き及んでいる。


 敵の力を削ぐため、その将を家に閉じ込め何のことは無い政務を与えて飼殺す。


 親の死に目にも会う事も出来ずに心を崩してしまう者もいた。


 彼をそんな目に合わせるわけにはいかない。


 なればこそ、彼を逃がさなくては。



「貴方は今すぐここを離れるべきだ。ここに居てはならない。」


「しかし、逃げ切れるでしょうか。」


 彼は心底心配そうな顔を私に向ける。


 私も正直どうにかなるかすらわからない為に、暗い顔で彼の方を向く。


「分かりません。抜け道はありますがそこを見抜かれてしまっては・・・。途中までお送りします。」


「ですがそれではあの白の人々は・・・。」


 彼の命と、町の人たちと城兵の命どちらかを断腸の思いで見捨てなければならないかもしれない。


 ここで目を覚ます。

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夢を書き綴る 斧田 紘尚 @hiroyoki_naoyoki

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