20230923
●20230924
意思無き意志。
私は汽車に乗っていた。
汽車と言っても蒸気機関車が引くよう客車ではなく、旧型国鉄気動車だ。
そのすこし懐かしい、ボックスシートの車内の中をたった一人、進行方向を向いて外を眺めていた。
外の眺めは日本の物とは言い難く、ヤシの木やうっそうとした木々が生い茂る如何にも南国といったような風景だ。
だが単なるジャングルの中というわけではなく、所々には家々が点在し人もちらほらと歩いていて、ずっと遠くには黒い巨大建築物が聳え立っているのがわかる。
何故かあの巨大建築物の事をアルコロジーという事だけは分かっていて、そして私はあのアルコロジーに向かわなければならないという目的も同様に理解していた。
汽車は音も揺れも無く、そして気動車ゆえのガス臭さすら無く静かに只々真っすぐ進んで行く。
レールの上を走っているにも関わらずにまるで浮いているかのように滑らかに。
「○○駅での乗降は終了いたしました。」
突然車内に放送が流れる。
それはまるで乗客宛ての丁寧な言葉づかいで行われる乗換案内などではなく、運転手や車掌に向けた業務連絡のような無機質な業務連絡その物であった。
夢の外であれば、この乗降は終了などと乗り換えに不安になるような案内が流れれば、直ぐにスマホで運行状況を確認するはずだ。
だが私はただ何も思わず、さも当然かのようにこれを受け入れただうつろに前を向く。
ああ、そうだ。
私はあのアルコロジーで神経処理されて何も考えることも無く感情も無く動く、生きた意思無き死体になるのだ。
もう苦しむことも無く悩むことも無く、ただ処理し処理するだけの何かに。
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ここで目を覚ます。
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