第二章 星家と魔法
第15話
「フェリシア、アリエーテ家に行くよ」
朝食を食べている時に、テオドールはそう言った。今日の朝食は、エミリー特製のコーンスープと、カリカリに焼いたパン、サラダだった。なめらかな口当たりのスープの作り方を、後でエミリーに聞いてみようと考えていたところに、テオドールのその言葉。
「結婚の報告に行かないとね」
「なるほど、そうね」
そもそも、儀式に呼ばなくて良かったのか、とも考えたが、急に決まったことだった上に、三か月の期限付きなら、逆に呼ばなくて正解だったかもしれない。
「準備をしてくるわ。セミフォーマルでいいかしら」
「いや、そんなにかしこまらなくていいよ。ただ、実家に顔出すってだけだから」
契約上とはいえ、相手の実家に行くのは緊張する。ほどよく、礼儀を弁えた服装で臨まなくては。
「エミリーは、どこに?」
「ああ、エミリーには先に行って、訪問のことを伝えてもらおうと思って」
テオドールは、ダイニングの庭に面した窓を開けた。開けた瞬間に、朝の爽やかな風が入ってきて、心地がいい。
「あ、旦那様。行って参ります!」
「うん。よろしく頼むよ」
エミリーが、箒に乗って行くようなのだが、その様子が少しおかしい。箒には、またがって乗る、もしくはフェリシアがするように横向きに座って乗るパターンが主だ。しかし、エミリーは地面に箒を置き、その上に立っている。そして、そのまま飛行魔法を使った。
「わっ」
エミリーが箒から落ちる、と思って一瞬目をつぶったが、エミリーはまるでサーフィンをするように、悠々と箒に乗っている。
「フェリシア様……じゃなくて、奥様もお見送りしてくださるんですね。ありがとうございます! 行って参ります!」
エミリーはメイド服のまま、波に乗るように、軽々と空を駆けて行った。
「本人いわく、あれが一番バランスが取れるらしいんだ」
「独特ね……それと、何だかエミリーが嬉しそうに見えたわ」
「会いたい人に会えるからね」
「?」
首を傾げて、続きを促しても、テオドールは教えてくれなかった。エミリーに直接聞くことにして、フェリシアは身支度を整える。
細かいプリーツが綺麗な、水色のロングドレスを選んだ。ドレスやアクセサリーは、テオドールから贈られたものだ。生活する上で必要なものは揃えられている。他に必要なものがあれば用意すると、言われているが、正直充分すぎるくらいだ。
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