とある神社での不思議な出来事

優美香

大和神社での出来事

 創建は紀元前とも言われている、大和神社おおやまと じんじゃ

 そこで体験した「あれっ?」と感じたことを書きますね。

 恐ろしいことではないのかもしれないな……。


 それは三年前の夏の終わり。日付にすると、八月二十五日。

 紀元前に創建されている、由緒ある神社のひとつ。所在地は奈良県天理市です。

 大和神社の参道の長さは戦艦大和の甲板と同じ。そして参道の横幅の、ほぼ四倍の長さが戦艦大和の甲板横幅なんだそうで。

 実際に太平洋戦争時、戦艦大和は大和神社から分霊されているのです。また、大和が沈没した際に乗っていらした人たち全員の御霊が祀られているのです。

 その年の三月に来た折は、その祀られている場所……祖霊社……に手を合わせることはしませんでした。帰りの電車の時間が気になっていたからだと思う。

 だから、そちらの社に向かって言いました。

「次に来たときには、必ずお詣りしますね」

 その「次」が八月二十五日だったのよ。

 なんといっても大国主命さまも祖霊社の祭神ですし、嘘はつけないと思いまして。

 で。

 ものっそい暑かった……。(しょうがない、奈良は盆地だ!)

 御朱印をいただいたのですが、あらためて御朱印帖をひらくと汗がぽたぽた落ちてしまうくらい暑かったのよ。

 参拝客も帰り支度っぽい男性、ひとりしかいない。

 わたしと、その先客さんの間は相当な距離がある。

 だだっぴろーい境内。

 神さびた雰囲気いっぱい。加えて、残暑厳しい空気感が満載。

 そんな中で、ちょうど祖霊社の正面あたりの参道上。わたしのすぐ横に砂利を踏む音がする。

 黄色と白のシャツみたいな人の姿も「ちらっ」と。目の端で捉える。もちろん、地面にも影が見える。

 やたら近い距離で砂利を踏む音がするものだから、ついっとそちらを見てみたりする。

 でも誰もいない。

「変だなあ」

 けど、本殿に向かう途中や祖霊社に向かう途中で何度も「すぐ隣で砂利を踏む音や人の気配はするのに、誰もいない」ということが起こったのです。

 おかしい絶対おかしい。

 でも誰もいない。

 たしかに聴こえたはずなんだけどな……ざくざくっと敷き詰められた細かい砂利を踏む音が。

 ひっそりとした人の気配も、たしかに感じられたはずなんだけどな。

 人っ子ひとりいない神社の境内なんだもの、すぐそばに立っているような人間の「波動」って、あるじゃない? あれを間違えるわけがないのよ。 

 あまりの暑さに視覚までおかしくなっちゃったかな、と思ったけど、四、五回も重なるとなると……。

 でも、そのときも。今、思い返してみても。

 全然、怖い感じがしなかった。って、いうか。

 昔からの知人と待ち合わせしていて「あっ、いたいた! こっそり近寄ってビックリさせてやろっかな!」みたいに。そーっと、そーっと近寄ってきた、そーっと隣に立ってました、みたいな雰囲気でした。

 だから全然まったく怖い感情とは、かけ離れていて。懐かしい感じがしました。

 きっと沈んでしまった戦艦大和の御霊のうちの何人かが「いらっしゃい」とお迎えに来てくれたんだろうと思うことにします。

 ……違う意味の「お迎え」だったら困るなあ。



 追記:こんな体験をしているから、のちに「京都河原町・瑞泉寺(豊臣秀次さまの菩提寺)」で味わう体験が「ゾッ」とするのよねえ。


 

 








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