日本語の伝統芸能といえば、落語でしょう。現代にはない江戸言葉や風習がいまも息づいています。
筆者の優美香さんは、大の落語好き。毎週のように寄席へ通う彼女の落語ライフを綴ったエッセイです。落語のあらすじや解説も興味深いのですが、噺家さんとの交流エピソードがとにかく面白い。
優美香さんは江戸前落語も上方落語も、新作も古典も分け隔てなく楽しむタイプ。お気に入りの噺家さんの公演を昼夜通しではしごしたり、若手の噺家さんをYouTubeで発掘したりと、落語への情熱と愛情が行間から溢れます。
噺家さんとの舞台裏での会話や、客が自分ひとりだけという贅沢なミニ落語会の思い出など、寄席のほんわかとした空気が感じられます。記帳すると年賀状や暑中見舞いをいただけるなど、観客と噺家の距離が違いというのも、落語の魅力の一つでしょう。
「あの噺家さんは色っぽい」、「あの人は知的で素敵」と熱弁する姿は、まるでアイドルを追いかけるファンのようで微笑ましくなります。
同じ演目でも演者によってまるで異なる顔を見せる落語。その人情と言葉の技を、改めて味わいたくなるエッセイです。
(「日本語を楽しもう」4選/文=愛咲優詩)