Sideマーオ 記憶を紡いで〜魔王マーオの回顧録・結〜
マーオに発破をかけたのはアナタでしょう?だからこれは、知っておいて。
何のことかわからない?もう。第四プランの3つ目の話の時に言ってたじゃない。忘れてしまいましたか?思い出してよ。
――――――――――――――――――――
「──第四プランで重要なこと三つめ。マーオの代わりに、私が魔王になることだ」
「……ハァ!?何言ってるのアナタ!?」
アナタは信じられないことを言い出す。
「だって君の願いは家族と昔のように穏やかに暮らすことだろ。魔素を消して、人間にも魔族にも追われなければ、魔王を続ける理由はないだろう」
「人間とワルイ魔族がいる限りあの子達が狙われるの!だから」
「魔王を始めたし、続けるつもりだったのか?なら安心しろ。魔素は消えたが、改造|能力は残るよ。魔王でなくなっても君は家族を守れるさ」
……それはそうだけれども。
「……ちなみに、アナタは魔王になって何をするつもり?」
「
「魔族を改造して?所有者をコロして?」
「魔族は改造しない。人間はまあ、殺すかもしれない」
「アナタ、ニンゲンをコロすのは楽しい?」
「楽しくない、君もそうだろ。オークを溶かしていた時ちっとも楽しそうじゃなかった」
「……アナタは本当に、マーオの何を知っているワケ?」
メガミの遣いと名乗る何でも知れる恐ろしいイキモノ。ドウグを自称するカワリモノに、マーオは問いかけます。
「そうだな。このままだと君が、家族を守るために永遠に魔王を続けてしまうコトは知っている。そして、本当はそれが嫌なコトも知っている」
「嫌なコト……」
「あ、だがな。君が魔王になると決意するに至った理由は見ていないぞ。……ゆっくり、君自身の口から聞きたかったから」
知ろうと思えばナンデモ知れるのに知ろうとしない。コイだとか、ケッコンだとか、ニンゲンのブンカは難しいわ。
「ン、じゃあマーオが何で魔王を続けるコトが嫌なのかは──」
「教えてくれるか?」
「イヤよ。マーオはアナタとケッコンしないもの。……逆に聞くケド、アナタは何のために女神の
「それはもちろん女神のため」
「ウソでしょ、わかるわそんなの。本当は?」
「本当は……そう願われたから集めているのが半分。もう半分は──愛のためだ」
アイのため。
「アナタにとってそれは、命より大切なモノ?」
「うん、そうだな」
それってタブン。
「話は変わるけど、アサに会ったあの子を殺した時、アナタは何を感じていたの?」
「いや……別に、とくには」
「ウソ。人殺しなんてしたことなかったでしょ」
「……まあそうだな」
ああヤッパリ、そうだわ。
「魔王になって、次はうまくできそう?」
「さあ。ただ、そうだな、想定外の事態に直面して反省した。報連相、報連相は馬鹿に出来ないと」
「何がいいたいの?」
「……ええと、だから。いっときの感情にながされ報連相を怠れば、取り返しがつかないことになるということだ」
「どういうこと?」
「今回ついカッとなって警部を殺したら、プリティヴァちゃんがここに現れた。本当はそんな予定じゃなかった」
カッとなってですって。面白いわね。このオトコ、自分がアノ獣族を殺す時どんなカオをしていたか自覚していないのね。
「ふーん。じゃああの獣族を生かしておけばマーオは襲われなかったんだ」
「そうだな、失敗だ」
「事前にマーオに取り入るつもりだとオトモダチなアノ獣族に話せばよかったと」
「!……いや、違う。違う。そんなことはないぞそんなコトは」
「まあそんなコトなら信用してなかったケド、アナタ嘘がヘタクソね」
「う」
「いいわ、ベツに」
ええ、このオトコが
「……ウソがバレているなら白状しよう。その……」
「いいったら、大切な人のためでしょ」
「……まあ、そうだな。……何だ、意外にも見破られているものだな……」
イガイでもなんでもないわ。アナタはかなりわかりやすい。
「こんなことならマチカに話しておけばよかった、見栄なんかはらずに」
「ミエ?なんの?」
「自分1人でも解決できると自負した。マチカを危険に巻き込まないためなんて言い訳だ。遠回りになるとしても一緒に君の問題に向き合うべきだった」
「……そうかしら。あの獣族とアナタがイッショだったらきっとマーオはお家にアンナイしなかったわよ」
「でもそうすればプリティヴァちゃんに君を傷つけさせなくてすんださ」
カオを見ればワカル。コレは本心ね。……オンナノコのスガタなら何でもいいのかしら、このオトコ?
「本当に、こんなことになるくらいなら素直に話してしまえばよかった。話したらまあ、ちょっとは怒られるだろうが、新しい道を一緒に探せたし」
「……ソノコに、幻滅されないかフアンじゃない?」
「幻滅?どうだろう。どちらかと言えば呆れられるかも。でも見栄を張り続けるよりはいいかな」
「マーオがもし、家族に幻滅されたら生きていけないわ」
そう、生きていけないの。
強くてカッコいい魔王のマーオじゃなきゃ、エーレとレーメに幻滅されちゃう。2人を、家族を今度こそ守れなきゃ、タローの最期も知らずにのほほんと花なんか積んでいた自分を許せない。2人にとって、マーオは最強の魔王でいなくちゃいけないから沢山人間を、ワルイ魔族を、コロし続けなきゃいけないの──
「君の家族が?それはないだろ」
「──なんでそう言い切れるの?」
「逆に聞くが、そんな大切な家族が君にちょっとやそっとのことで幻滅するのか?」
──それは。
「なんだ?フェアリーズに幻滅されるような隠し事をしているのか?」
「……まあね」
「じゃあ私と同じだな。同じ後悔をしないでくれ」
「……!」
コウカイなんて、そんなもの。──このオトコを見ていれば、ナイとは言い切れないのかしら。
「その隠し事はいつかどこかで、勇気を出して家族に打ち明けてみるといい。君の家族であれば必ず受け入れてくれるよ」
「……アナタは本当に、マーオとマーオの家族の何を知っているワケなんでしょうね」
「全部は知らないが、さっき君たち家族を見ていてそう確信した。自信がある、信じてくれていいぞ」
ああ──そう、アナタは。本心からそういうコトを言えるイキモノなのね。
「さ、お喋りはここまでだ。もうすぐプリティヴァちゃんの元に着く。ひとまず手と目を増やす物語の作成。頼むよ先生」
「ええ……エ、ひとまずって何?」
「うん。もし時間があれば、私をスライム風に改造するヤツもつくっといてくれ。デコイは君に似ていた方が、魔族だって
……このオトコ!そんな──!
「オンナノコがスキ過ぎてオンナノコになろうとするなんて──!ゾワッとしたわ!イヤッッッ!!!」
「いやそれは誤か、溶けてる溶けてるから待ってくれ落ち着いてくれ頼む頼む」
――――――――――――――――――――
ほら、アナタの改造はもう終わるけれど。
ねえ、思い出してくれましたか?
女神解剖録〜転生ごっこと7つの恋〜 何屋間屋 @nann_ya_kann_ya
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