第3話

 後書き


 何か書き忘れている。

 そう思いつつ本文を書き終えた私宛に先日、外国からの手紙が届いた。

 女間諜ミチェイルリンベからの、息災を伝える手紙だった。

 彼女は母国に戻っていた。自分を溺愛する夫と楽しく過ごしているそうだ。結婚してからのセカンドライフとして女スパイの道を歩んだのは、とても貴重な体験だったと書き添えられていた。

 それを読んで、私は気付いた。第三夫人バーリィバーナムビーのその後を、私は書いていなかったのだ。

 バーリィバーナムビーは王宮が革命派に占領される前に脱出した。ミチェイルリンベが脱出させたのだ。そのせいでミチェイルリンベは逃げ遅れ、挙句の果てに逮捕されてしまった。

 その恩をバーリィバーナムビーは忘れなかった。ミチェイルリンベご夫婦の豪華なライフスタイルの維持には、第三夫人が渡した多額の退職金が役に立っていることと思う。

 今回のノンフィクションがきっかけで、私はバーリィバーナムビーと縁ができた。彼女が新大陸に作る予定の、共和主義的国家のハーレム建設計画の一部始終を独占取材し、本にする仕事を与えられたのだ。

 それがどんなものになるのか、さっぱり分からない。長い作品になりそうな予感だけはある。今回の作品は二万字程度なのに、それすら悪戦苦闘していた私に書き上げることができるのか……正直、不安でいっぱいだ。

 でも、こんな私を夫は力強く支えてくれる。異世界から転移してきて、右も左も分からなかった私を溺愛してくれるヒーローの夫には、どれだけ感謝しても足りない。嫁入り後のセカンドライフとしてノンフィクションライターの道を選んだ私のために、自分の生活を犠牲にしてくれる夫を、私は末永く愛し続けるだろう。

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嫁入りっつってもハーレムなんすけど後宮のセカンドライフはオッケオッケーっすかねえ @2321umoyukaku_2319

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