憎悪の消費期限

 父と母との暖かい晩餐は、突然押し入った強盗たちによって打ち破られた。父と母は無惨に殺され、私は朝日が昇るまで延々と犯され続けた。

 少女は絶望していた。このまま命を絶って、両親の後と追おうと思った。

 そんな時、一羽の小鳥が窓から部屋へと入ってきました。虹色の輝きを放つ小鳥は、白濁液に塗れてうつ伏せに倒れる私の横へと着地すると、小首を傾げました。


「貴方は、憎んでいますか?」


 その言葉を聞いて、少女の絶望は憎しみへと変じた。暖かく幸せな日常を、何の前触れもなく破壊された。何をしたというのか。私が。私達が。私は下唇を噛み締める。鉄の味がする。


「………憎い」


「どのくらい」


「一生忘れないほどに。あいつらに惨たらしい死を与えたい」


「叶えましょう。叶えるための力を与えましょう」


 小鳥がそう言うと、目の前に刀身が奇妙に捻くれた短剣が現れた。


「それで一刺しすれば、相手は生きていることを後悔するほどの苦しみを味わいます」


「ありがとう、美しい小鳥さん」


 そうして、私は気を失いました。


 それから、私は復讐と憎悪だけを糧に生きていました。調べれば、あの男たちは指名手配されている凶悪犯であることは直ぐに分かりました。そして、私は彼らが何処にいるのかすら分かりました。これもきっと、あの小鳥がくれた力なのでしょう。


「あっ、あっ、ああああああああ……!!」


 小鳥の言う通りでした。一人を待ち伏せて短剣を突き刺すと、男は叫び声を上げて地面を転がり無様にもただ手足をばたばたと動かし、たっぷり五分ほど経ってから白目を剥いて死を迎えました。

 一人の仲間が危機感を与えたのか、他の仲間達は散り散りに隠れましたが、それでも私は与えられた感知能力を駆使し、相手の生活を監視して隙を見つけた瞬間に刃を突き立てました。苦しみ藻掻く姿に、私は昏い悦びを感じていました。


 ▼


 そうして月日が経ち、私は年老いました。夫には先立たれてしまいましたが、娘夫婦2人と高校生になる可愛い孫と四人で静かに暖かく暮らしていました。復讐のことはもう頭の中にはありませんでした。


 ある日の夜、突然強盗が押し入り、娘夫婦は惨殺され、孫は犯された上で殺されました。私は重傷こそ負ってもかろうじて生きていました。私は倒れ伏したまま息も絶え絶えに、血まみれの室内を見渡していました。


 カラン、と目の前で音がしました。目の前に刀身が奇妙に捻くれた短剣が落ちていました。


「今度はいつまで憎んでいられますか?」


 綺麗な小鳥は言いました。

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短編置き場 ゆゆみみ @yuyumimi

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