後日談

事件発覚後の日曜日と月曜日は、学園内の立ち入りがいっさい禁止となり、臨時休校となった。学園の敷地内で大規模な火災が起きたため、 生徒への安全確保と警察捜査への協力という名目である。

教職員は日曜日に臨時出勤を余儀なくされ、今後の対応を巡って、長時間の会議が行われたという。朝霧先生は、その会議から、何食わぬ顔で出勤していたようだ。本来なら非常勤教師の彼が会議に出席する必要性は無かったが、学園の教職員全てに一斉招集がかかったため、そもそも選択の余地が無かったし、彼自身も学園や事件のその後の動向を注視していたため、招集が無くても学園に来ていただろうと言っていた。


***


事件の翌日と翌々日は、臨時休校となった。学校内で大規模な火災が起きたために、 生徒への安全性配慮と警察捜査への協力という名目である。

朝霧先生は、月曜日から、何食わぬ顔で出勤していたようだ。

月曜日の朝霧子は電話をかけてきたミカに、電話口でいきなり怒られた。

「ちょっと、陽子、約束すっぽかすって、どういうことよ。あの日、家に電話したら、お母様が出て、出かけたって言われて・・・・・・」

「ホントにごめんなさい。急用を思い出しちゃって」

「急用?? 理由はこの際関係ないわ。とにかく、朝霧先生にもしっかり謝らなきゃダメだよ。私は、まあ赦すけど、先生には、ホントにすっごく迷惑かけたんだから」

「わかったわ。先生には、後で謝っておくわ」

「後で? 気に入らないわ。『すぐに』って言いなさいよ」

「そうね。すぐに謝るわ」

「それに、謎解きだって出来なくなっちゃたし。あぁ、でも、一体どうなってんだろう。やっぱり陽子が見た事件と関係あるのかなぁ。あ、もちろん、陽子の話は、誰にも話してないよ。それは信用していいから。それにこんな大事件になっちゃたから、下手なこと言ったら、シャレになんないからね。ところで、警察にはあの話をしたの?」

「いえ、してないよ」

「え〜、警察からは呼ばれてないの? でも、まあ、ちょっと言いにくいよね。なんで黙っていたんだって、絶対に言われるだろうし」

「そうね」

「たしかに。ま、とにかくそのことについては、あんたに判断は任せるわ。私はあんたの話だけしか聞いていないから、実際に現場を見たわけでもないしね。でも、何人かの遺体が見つかったっていうからね。学校としてもすごいスキャンダルになっちゃってるから、私はその行方を見守っていくことにするわ。あんたの話は、頭から消すことにするよう、努力するから心配しないでね」


***


ミカはさらに話し続けた。

「実はあの日、朝霧先生も先に帰ってしまったのよね。お母様が急病になったっていうことで、執事の楠さんがわざわざタクシーで学園まで駆け付けてきてくれて、そのことを朝霧先生に伝えにきたのよ。そしたら朝霧先生も、そういうことであれば仕方がないな、大変残念だが、今は帰らなければならないと言ったのよ。そして私に本当に申しわけないって、丁重に謝罪してくれたのよ。この埋め合わせは近いうちに必ずするからって。でも朝霧先生はその時すごい申しわけなさそうに謝ってくれたから、なんか私のほうが、もっと気が引けてしまって本当にお気の毒って感じになっちゃったわ。わたしとしては、先生の言っていた『埋め合わせ』っていうのを、心待ちにしているところ」

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