別人の声

(尾崎氏とは明らかに別人の声が、男性であるが、テープの最後に収録されていた)

「尾崎さん、なんとか頑張ってくださいよ。秀樹君はどうするんですか、親の死に目に会えないのでは、秀樹くんがあまりにもかわいそうじゃないですか、尾崎さん、尾崎さん!」

(長い沈黙、しかし、電子音や、複数の人が、部屋の扉を開閉して、出入りする足音が録音されている。尾崎に呼びかける他の声が、遠くから聞こえてくる。やがてすべての電子音が、聞こえなくなった。そして、医者らしき人の声が、はっきりと録音されている)

「残念ですが、御臨終です」

(再び、尾崎とは別人の声)

「先生、ありがとうございます。遺体は私のほうで引き取って荼毘に付します。彼の息子には、私から連絡しておきます。一足遅かったのが残念でなりません」

(そしてかなり長い沈黙)

「一九八一年七月◯日、◯◯県、◯◯病院」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る