第22話 鍛錬(ソフィア視点)


 同じ孤児院出身ということで、5人で冒険者パーティを組んで一緒に生きてきた。もちろん別の生き方が見つかったら、冒険者を辞めて幸せを掴もうって話してたけれど。だけど私のパーティがこんな最後になるなんて思わなかった。


 メリッサ、ポーラ、シャーラを弔ってから2日が経ったけど、未だに立ち直れないでいた。何時までも呆けていられるほど私には余裕はないのだけれど、気が抜けたみたいになっていた。リーダーがこんなんじゃあダメなのは分かってはいるけど。


 そんな感じでぼ~っとしていると、いきなり頭を叩かれた。


「いたっ」


「ソフィア。そろそろ立ち直って」


「サラ。いきなり痛いわよ」


「悲しいのは分かる。私も悲しい。でも私達は生きていかないといけない」


 サラが私の目をしっかり見ながら淡々と話してきた。彼女は表情も声音も、感情を表に出していないけど、悲しんでいないわけじゃない。長い付き合いでよく分かっている。でもそれを抑えて、今の最善を考えてくれている。

 リーダーがこれではダメね。


「そうね。分かったわ。考えていたのとは違う理由でパーティ解散の危機ね。何か考えないと」


「前回はソフィアの結婚騒動だった」


 ぼそっとサラが呟いた。


「……その話は止めて。何だか私が疫病神みたいに思えるじゃない」


「ごめん。口が滑った」


 あの人も私達も冒険者なのだから、いつでも死の危険があるのは分かっていた。冒険者が死ぬことは珍しいことじゃない。それでも私に関わった4人が死んでしまった事実に変わりはない。……ダメだわ。また暗い思考に戻りそう。


「サラは今後どうしたい?」


 気分を変えるためにサラの考えを聞いた。


「……他に出来ることはない。冒険者一択」


 サラはそう言うけど、回復魔法を使えるから道はありそうなんだけれど。私と違って。


「サラと違って私は冒険者以外に道は少ないのよね。でもいいの? 私と一緒に冒険者を続けるってことよね?」


「問題ない」


「そう。ありがとう。でもさすがに2人って無謀よね。ルクルスを離れて、もっと安全なとこに行けば大丈夫かもしれないけど。今更よね」


「メンバーを増やすのは難しい」


「今更冒険者成り立ての子と組むのもね~。そうなると他のパーティに合流ってことになるんだけれど」


 問題は合流できるパーティがあるかどうかよね。合流して肩身の狭い思いや、揉め事になるのは楽しくないし。


「……シオンのパーティ」


 少し考えていたサラが呟いた。


「シオン君のとこ? 実力的にも人柄的にも問題ないけど、あそこは彼のハーレムパーティよ?」


 シオン君は言わなかったけど、彼女達3人ってたぶん奴隷よね。そんなところに加入するってことは、つまり彼の女になるってことなんだけど。私はともかくサラは大丈夫なのかしら?


「サラって男が苦手とまでは言わないけど、少し敬遠してなかった?」


「生理的にダメな男はダメ。でもシオンは平気」


 サラが少し顔を赤らめて言った。あら、珍しい。


「もしかして、そういう事なの?」


 サラの顔を覗き込んで尋ねると、それ以上何も言わないで後ろを向いてしまった。もう長い付き合いになるけど、こんなサラ初めてじゃないかしら。


 サラはそれでいいとして、私はどうかしら。シオン君か。魅力的な男性なのは確かよね。好きになれるかしら。


 だけど長く悩んでいられるほど選択肢が多いわけじゃないし、私達だけで決められることでもない。賭けてみてもいいかもしれないわね。


 もしパーティに入れて問題無さそうだったら、その時は彼にお願いしてみようかしら。昔からの望みを。


「分かったわ、サラ。じゃあシオン君が町に戻ったら相談してみましょう」



◇ ◇ ◇



 そして現在、シオン君のパーティに加入して鍛錬する毎日。


 なかなかに大変だわ。ここまで準備する冒険者パーティって聞いたことが無い。稼ぎのためにすぐダンジョンに潜る冒険者が多いもの。そこはシオン君も気にしてくれて、生活費なんかは彼が持ってくれているんだけれど。私達もダンジョンに潜っていたから少しは貯めていたけど、彼のパーティの稼ぎは私達とは比べものにならなかった。


 そして何と言っても教えられた彼の能力。こんな能力を持っているなんて聞いたことが無いわ。明らかに特別な存在。彼らのパーティが強い理由が分かったわ。



「ソフィア。それでは次いきますね」


「ええ、お願いするわ」


 エレノアが構えたのを見て、私のほうも木槍を構える。

 彼女が近づいて来たのを見て素早く突いた。この攻撃は盾で弾かれて失敗に終わる。そのまま近づかれて棍棒を叩きつけられるが、何とか木槍で受け止めた。しかし次の瞬間には盾で叩かれて体勢が崩れると、棍棒の一撃を喰らった。


「は~っ。まだまだね」


「まだ始めたばかりですよ」


「分かっているわ」


 少し座り込んで溜息をついた。実際、今日までの鍛錬で驚くほど成長しているのは分かる。



ステータス

================


名前  ソフィア

種族  人間

年齢  25


スキル

 戦闘 剣術★1 ( 0.15 )

    槍術☆0 ( 0.82 ) △0.05


 身体 体力強化★1 ( 0.48 ) △0.02

    頑健強化★1 ( 0.02 ) △0.04

    筋力強化☆0 ( 0.81 ) △0.04

    器用強化☆0 ( 0.80 ) △0.04

    敏捷強化★1 ( 0.65 ) △0.03

    魔抗強化☆0 ( 0.82 ) △0.04


 特殊 料理☆0 ( 0.00 )

    気配希薄☆0 ( 0.00 )

    解体☆0 ( 0.00 )

    魔力視☆0 ( 0.80 ) △0.04

    遠見☆0 ( 0.60 ) △0.03


魔法  生活魔法☆0 ( 0.84 ) △0.04


加護  生体掌握網 (スレーブ動作中)

    成長促進 (スレーブ動作中)


================



 不思議なことに成長しているのが目で見えても、焦るものなのかしらね。どうしてもエレノアやリリーと戦っていると、差を実感してしまうものね。でもそれは武器を変更した自分の責任というのもあるから文句は言えないわ。

 やっぱり皆を待たせているっていうのが大きいかしら。


「ソフィア。そんなに焦る必要はありませんよ。私達のパーティは鍛錬を疎かにしません。十分な時間を掛けて鍛錬することを嫌がる人はいませんから」


 エレノアが私の気持ちを理解して言ってくれた。


「そうよね。前進しているのは分かっているんだもの。頑張りましょうか」


「はい。次、いきましょう」



 この鍛錬は自分のためにもパーティのためにも大事だもの。もう二度とメンバーを失うようなことはしたくないわ。私は絶対に強くなってみせる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゲーム好きの異世界生活 天宮志貴 @Yuu_kari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ