第21話 鍛錬(リリー視点)
ソフィアが木槍を連続で突いてきたのを木剣で払って、武器を戻す前に懐に飛び込んで胴を薙ぎ払った。
「くっ。まだ簡単に入り込まれるわね」
ソフィアはお腹を押さえながら苦しそうに言った。
彼女はこの鍛錬期間が始まる前に、必要なスキルを覚えたばかりなので、まだスキルレベルが低い。それもあって槍を扱うのも未熟だ。それでも特に焦ってもいないし、痛い思いをしても鍛錬を止めることもない。これまでずっと冒険者として生活してきた彼女が、鍛錬だけする毎日に不満もないのは、今の努力の成果が目に見えているからだろう。
「リリー。まだ体は大丈夫よ。続けてお願いするわ」
「そうだな。回復できるのが2人もいるし、遠慮は必要なさそうだ」
「えっ。少しは抑え気味にしてほしいのだけれど」
「ふっ。痛いと感じるのは最初だけだ」
「あの、えっと……」
今は前衛として戦えるのが4人になって、使っている武器の種類も増えたから、鍛錬の内容も充実している。メンバーが増えたことによる恩恵だな。
一通り剣を使っての稽古が終わると、生活魔法も鍛えていく。★1になってからはクリーンを使えるようになり、格段に熟練度が上がりやすくなった。これで生活魔法の鍛錬に掛ける時間も少なくなって助かっている。
次に何をしようか考えていると、主殿が魔法の鍛錬を終えたのか歩いて近づいてくるのが見えた。主殿は私と違って、剣に魔法にと鍛錬する内容が多い。まったく多才だな。
「主殿。もし時間があれば稽古を一緒にしないか?」
「ちょうどいいな。今日はまだ剣を使っていないし」
「ありがとう。次に何しようか考えていたところだったんだ」
「俺としては、リリーには気配感知も少し鍛えてほしいんだけどな。俺以外に周囲を確認できる人がいると安心できるからな」
「済まない。どうしても鍛錬となると剣に走ってしまうな」
主殿に言われてまだ鍛えるべきスキルがあったことを思い出す。
「少しずつで構わないから頼むな。じゃあやるか」
「ああ」
主殿は特別に作ってもらった、大剣を模した少し大き目な木剣にするようだ。これ以外に普通の木剣と盾を使う時もある。主殿は私以上に鍛錬好きだと思う。
主殿は下段少し斜めに大剣を構えて静止した。
初めて出逢った頃とは比べられないほどの圧力だ。あの頃はまだまだつけ入る隙も多かった。スキルレベルの違いもあるのだろうが、実直に鍛錬を続けてきた成果だろう。
盾を構えて駆け寄ると、すかさず大剣を斬り上げて襲い掛かってきた。この攻撃に対して無理に受けたり払ったりせずに、避けることにした。そうして避けたところに、更に大剣が斬り下げられた。
一旦下がって回避すると、すぐに間合いを詰められ、正面から大剣が振り下ろされてきた。この攻撃は盾で受けて、お互い力で押し合う形で均衡した。しかし徐々に押されてくるのが分かる。明らかに力では主殿が上だ。
力押しを止めて、大剣を横に逸らしてから剣で斬りつけたが、回避されてしまった。
主殿相手に力押しはダメだな。やはり素早い動きで攻めるか。
再度主殿に駆け寄ると、狙ったように攻撃が来るのを、横に避けてから更に前に出る。素早く剣で斬りつけるがこれは回避された。連続で斬りつけると今度は大剣で相殺されるが、すぐに剣を引いて反対へと斬りつけた。この攻撃は体を少し掠っただけで避けられてしまった。
しかし、この近距離では大剣はあまり振れないだろう。予想したところに、斬るなのではなく突きを放つと、見事に剣は主殿の体を捉えた。
「やられたな。懐に入られたのが俺の敗因か」
主殿は剣で突かれたお腹を押さえながら言った。容赦なく突かれたはずだがダメージが少ないのは頑健強化のおかげだろうか。
「そうだな。本当の大剣となると話が変わってくるのだろうが、木剣だとこんなものだろう。それにしても主殿。もしかして筋力強化が更に上がったか?」
「あ、そうかもな」
主殿がステータスを表示した。
ステータス
================
名前 シオン
種族 人間
年齢 16
スキル
戦闘 短剣術☆0 ( 0.64 )
剣術★2 ( 0.44 )
大剣術★2 ( 0.08 ) △0.01
盾術☆0 ( 0.63 )
身体 体力強化★2 ( 0.30 ) △0.01
頑健強化★1 ( 0.64 ) △0.03
筋力強化★3 ( 0.00 ) △0.01
器用強化★2 ( 0.01 ) △0.01
敏捷強化★2 ( 0.29 ) △0.01
魔力強化☆0 ( 0.55 ) △0.01
魔抗強化☆0 ( 0.78 ) △0.04
特殊 気配感知★3 ( 0.08 )
気配希薄★1 ( 0.20 )
罠探査☆0 ( 0.07 )
解体★2 ( 0.15 )
並列思考★2 ( 0.77 ) △0.02
魔法威力★1 ( 0.57 ) △0.03
魔力回復速度向上★1 ( 0.02 ) △0.02
魔力視☆0 ( 0.74 ) △0.04
命中精度★1 ( 0.84 ) △0.03
精密操作☆0 ( 0.61 ) △0.04
遠見☆0 ( 0.70 ) △0.03
魔法 生活魔法★2 ( 0.90 ) △0.01
土魔法★2 ( 0.23 ) △0.02
水魔法★1 ( 0.96 ) △0.02
火魔法★2 ( 0.03 ) △0.02
風魔法★2 ( 0.37 ) △0.02
氷魔法★1 ( 0.12 ) △0.02
雷魔法★1 ( 0.06 ) △0.02
回復魔法★1 ( 0.91 ) △0.01
時空魔法★3 ( 0.20 ) △0.04
加護 転移ランダム特典 金一封
転移特典 言語理解
転生ランダム特典 生体掌握網
転生特典 成長促進
================
何度見てもよくここまで鍛えたと感心するな。少なくとも私がこれまで知っている中に、ここまで幅広くスキルを成長させた人はいない。主殿は本当に稀有な人物なのだろう。
「リリーも更に剣術が上がってないか?」
「分かったのか」
「剣を合わせれば何となくな」
稽古の最中だったのであんまり意識はしてなかったがそうなんだろう。
ステータス
================
名前 ミナサリアリリー・ルイーゼ・ファラダム
種族 人間
年齢 17
スキル
戦闘 短剣術☆0 ( 0.00 )
剣術★3 ( 0.00 ) △0.03
大剣術☆0 ( 0.00 )
槌術☆0 ( 0.00 )
盾術★2 ( 0.68 ) △0.04
身体 体力強化★2 ( 0.15 ) △0.01
頑健強化★1 ( 0.84 ) △0.03
筋力強化★2 ( 0.11 ) △0.02
器用強化★1 ( 0.88 ) △0.04
敏捷強化★1 ( 0.94 ) △0.04
魔抗強化★1 ( 0.46 ) △0.03
特殊 気配感知☆0 ( 0.80 )
気配希薄☆0 ( 0.49 )
罠探査☆0 ( 0.06 )
解体☆0 ( 0.14 )
魔力視☆1 ( 0.30 ) △0.02
遠見☆0 ( 0.01 )
魔法 生活魔法★1 ( 0.20 ) △0.03
加護 生体掌握網 (スレーブ動作中)
成長促進 (スレーブ動作中)
================
私も主殿に引っ張られて、ここまで成長できた。あの時奴隷商の言葉を信じたのは間違いではなかったのかもしれない。
私は祖国を失った。今では守るべきものと言えるのは、このパーティメンバーだけになってしまった。それでも今度は自分の無力さに打ちひしがれたくはない。そのための力は、そして道は主殿が与えてくれた。
これからもそんな主殿に付いていきたいと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます