第20話 鍛錬(フォノン視点)
「皆さん、もう少し近くに固まってください。まだバラバラに当てるのは慣れてないので、力加減に失敗するかもしれないんです」
「フォノン、威力の調整を優先でな!」
「分かってますよ~」
主さまからの注意に答えてから、魔力の制御に集中する。
「行きますよ~。構えてください」
目標に向かって魔法を撃つ。
「エアーボール」
5人に向かっていった空気の塊は、バーンと思ったより大きな音を立てて全員を吹き飛ばした。
あっ。少し強かったかも。
「……いたた。フォノンちゃんの魔法は強力ね」
「フォノン。容赦なし」
「いつもの事だから少し慣れてきたな……」
「フォノンは手加減が苦手かもしれないですね」
「鍛錬としてはフォノンぐらいの方が合っているぞ」
皆さんが立ち上がりながら話しています。
「えっと、少し強かったみたいなんですが大丈夫ですか?」
少し心配になったので尋ねてみた。
「ああ。誰も怪我はしてないから問題ないぞ(……かなり痛かったけどな)」
主さまが問題ないと答えてくれました。最後の方はゴニョゴニョとよく聞こえませんでしたが。
新たにソフィアさんとサラさんがパーティに加入して、10日が経ちました。あれ、11日? えっと、だいたい10日ぐらいかな? その間は全員で鍛錬を頑張っています。主さまは2人のスキルがある程度育つまで鍛えるつもりみたい。元々2人ともダンジョンに入っていたのだから平気だと思うんだけど、身近な人が亡くなったこともあって、心配になってるのかもしれない。
主さま、パーティメンバーの安全にはかなり気を使ってると思う。と言っても冒険者自体がとても安全とは言えないんだけどね。それでも私は主さまと一緒の生活は楽しい。
私は居た堪れない村から離れられる喜びと、両手がほぼ使えないという将来への不安を抱えながら奴隷となった。奴隷となって時間が経つほど、喜びの気持ちは薄れ、今後への不安な気持ちが強くなっていった。
そんなある日、奴隷商のリグルドさんから紹介されたのが主さまだった。どんな人が私の主人になるんだろうと心配だったけど、とてもカッコいい人だった。これで優しい人だったらいいんだけど、とこっそり思っていた。
主さまは不思議な能力で私に魔法をくれて、何より両手の火傷を治してくれた。そして奴隷の私にも優しい人だった。たぶん主さまは私の運命の相手。奴隷になったのも主さまと出逢うためだったんだ。
主さまを独占できないのは残念だけど、村でも魅力ある人には何人も相手がいるようだった。獣人は特に、優れた人に対して惹かれる傾向があるのかもしれない。私も奴隷だからというのではなく、主さまの全てに惹かれている。
「フォノン。もう大丈夫だから、どんどん撃っていってくれ」
私が考え込んでいた間に、皆さん位置についていたようだ。
「はい。どんどん撃っていきますね」
私はそれから何回も魔法を撃っていった。
私の隣では、同じく魔力の回復中で休憩しているサラさんが、ステータスを表示して確認をしている。
ステータス
================
名前 サラ
種族 人間
年齢 25
スキル
戦闘 槌術☆0 ( 0.30 ) △0.03
盾術☆0 ( 0.20 ) △0.02
身体 体力強化★1 ( 0.33 ) △0.02
頑健強化★1 ( 0.52 ) △0.03
筋力強化☆0 ( 0.30 ) △0.03
器用強化☆0 ( 0.40 ) △0.04
敏捷強化☆0 ( 0.30 ) △0.03
魔力強化☆0 ( 0.30 ) △0.03
魔抗強化☆0 ( 0.50 ) △0.05
特殊 気配希薄☆0 ( 0.00 )
解体☆0 ( 0.00 )
並列思考☆0 ( 0.00 )
魔法威力☆0 ( 0.40 ) △0.04
魔力回復速度向上☆0 ( 0.40 ) △0.04
魔力視☆0 ( 0.40 ) △0.04
命中精度☆0 ( 0.40 ) △0.04
魔法 生活魔法★1 ( 0.85 ) △0.04
土魔法☆0 ( 0.50 ) △0.05
回復魔法★1 ( 0.54 ) △0.02
加護 生体掌握網 (スレーブ動作中)
成長促進 (スレーブ動作中)
================
「サラさん、スキルレベルが上がるのも、そんなに時間が掛からない感じですね」
主さまに買われた最初の頃には、ステータスに表示されている内容はよく分かっていなかった。それぞれについて説明されて何とか理解したぐらいだった。私が生まれた村では、日常で読書きを必要としていなかったのもあって、読書きが出来る人が限られていた。
主さまに貰った能力を理解できないなんて嫌だったので、少しずつエレノアさんに教えてもらったおかげで、今ではステータス以外でも少しは読書きが出来るようになった。
「表示されているのが事実なら」
サラさんは表示を見ながら呟いた。
「サラさん。主さまの能力にウソはありませんよ。見てください。私なんか数か月前はスキルなんて無かったんですよ。それが今はこうです!!」
ステータス
================
名前 フォノン
種族 獣人 (狐系)
年齢 16
スキル
戦闘
身体 体力強化★1 ( 0.28 ) △0.02
頑健強化★1 ( 0.75 ) △0.03
器用強化☆0 ( 0.56 ) △0.01
魔力強化★2 ( 0.53 ) △0.05
魔抗強化★1 ( 0.40 ) △0.03
特殊 気配希薄☆0 ( 0.42 )
解体☆0 ( 0.37 )
並列思考★1 ( 0.68 ) △0.04
魔法威力★1 ( 0.89 ) △0.03
命中精度★2 ( 0.01 ) △0.03
魔力回復速度向上★2 ( 0.02 ) △0.03
魔力視★1 ( 0.30 ) △0.02
魔法 生活魔法☆0 ( 0.81 ) △0.02
火魔法★2 ( 0.57 ) △0.03
風魔法★1 ( 0.68 ) △0.03
氷魔法★1 ( 0.43 ) △0.03
加護 生体掌握網 (スレーブ動作中)
成長促進 (スレーブ動作中)
火神の祝福
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私は主さまの事を疑われるのは好きじゃありません。確かに主さまの能力は不思議なところがありますけど、そんな事関係なく素晴らしい能力なんです。
「うん。すごいと思う。ごめん。疑ってるわけじゃないから」
サラさんが申し訳なさそうに言った、と思う。あんまり表情に出ないから分からないんだよ。
「私もごめんなさい。でも不思議な能力だけど、主さまを信じてください。主さまは素晴らしい人です」
「分かってる。凄く魅力的な人」
サラさんも主さまの魅力が分かってついてきた人だ。別に疑ってるわけじゃなく、戸惑っているんだと思う。私も主さまの事になると、少し過敏かもしれない。注意しないとね。
でもそれも仕方ないかなぁ。私の運命の人だから。
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