オカルト研究部
しゅがあー
危機
「おい、中島。お前昨日のニュース読んだか?」
昼休み。唐揚げを口に放り込んだ瞬間に声をかけてきたのはオカルト研究部(通称オカ研)に所属している2年安西だった。安西とは中学からの付き合いである。
「お、おう、天地一変しちまったなあ。これでオカ研も廃部の危機ってわけか。」
オカ研は、1年が4人、2年が5人、顧問0人からなる高校で唯一顧問のいない部活で部長が俺、副部長が安西で成り立っていた。顧問はいないと言ったが、一応お金や安全管理の為の形だけ顧問は1人だけいる。それでも、普段の活動は全て生徒だけで行われていた。
「俺さ、ニュースは読んだけど、中身は読んでないんだよね。もしかしたら大したことないかもよ?」
安西は俺のスマホにリンクを送ってきた。
「とりあえずこれ見な。」
送られてきたリンクをタップする。それは研究論文のPDFだった。タイトルにはニュースでも見た字が並んでいた。
【霊及び霊障に付随する問題に関する科学的根拠を示す幻覚と脳波】厳島 洋二
文字ばかりの論文にウンザリしながら何とか最後まで目を通した。高校生にしては難しすぎて幾らか理解できない表現もあったが、要約すると幽霊は存在しないことを科学的に証明したということだった。
ネット記事を漁ってみると、どうやらこの論文を発表した某有名大学の厳島教授は以前から未確認生物や妖怪、宇宙人、ましてや神など、一般的に目視することがなく存在自体があやふやなものについての研究をしていた人であった。が、いずれも存在の有無自体については迫っていなかった。
ある意味オカルト研究なのかもしれないが、この部活とは似て非なるものである。厳島教授はいないものという前提で証明を試みているが、俺たちはいるものとして証明しようとしている。そこが大きく違うのだ。
厳島教授は論文を発表するにあたり、確実に注目を受けることを理解していた。そこで、世界15ヶ国語に翻訳し同時発表をすることにした。発表1か月前から大々的に宣言し、発表前から記者たちを釘付けにしてきたのだ。
結果、予想できる通り、たった一つの論文は一夜にして世界中に混乱を招いた。霊に関する現象が解明されたのなら、その他迷信に近いこともすぐに解明されてしまうだろう。
スピリチュアル系の団体は崩壊を起こし、教会では暴動が起き、墓荒らしが絶えず、心霊スポットには人が集り、未確認生物に関する雑誌は休刊が決定し、と挙げたらキリがない程、多くの問題が蔓延っていた。
被害を受けたものの一つ、それがこのオカルト研究部であった。実感は湧かないが、証明されてしまったのであれば来年から入部者もほぼいないだろう。なんなら、今から誰か退部するかもしれない。
そうなると、廃部決定だ。俺と安西はそれだけは何としても避けたい。なにより、2人で設立した部活で思い入れが深かったし、社会貢献もしてきた。心霊スポットにくるやつは大体ゴミのポイ捨てなどマナーに配慮しないことが多い。そこで俺たちは、心霊スポット調査と課外清掃とを同時に行ってきたのだ。一石二鳥。
まず、部員を確保するということで早速今日の放課後からミーティングが始まる。
予鈴が鳴り響いて俺たちの昼休みは終わった。
オカルト研究部 しゅがあー @nightmare_14
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