182 ようこそ、湖の街バイユールへ★
「どうぞお入りください、冒険者殿。滞在中はお気をつけて」
兵士の一人が礼儀正しく言い、ロランは会釈すると街の中へと足を踏み入れた。
「うわ、広え……!」
バイユールの街はポートポランとは異なる雰囲気を持っていた。
広々とした通りには様々な店が立ち並び、人々の活気に満ちている。
{{ バイユールの街並みは湖と山々の自然美を背景に持つだけでなく、街の中にもその自然を取り入れた設計がなされているようですね }}
「相変わらずの情報処理能力だな……」
感心したように頷くロランと、褒められて喜ぶエリクシル。
広場には美しい噴水があり、その周りには季節の植物や常緑樹が整然と植えられていた。
噴水の周りでは子供たちが楽しそうに遊び、大人たちはベンチに腰掛けて談笑している。
街の至る所に木製のベンチや石畳の小道が整備されており、住民たちが穏やかに過ごすための工夫が施されていた。
「ポートポランよりゆったりしてるな」
{{ 確かに、慌ただしい雰囲気はありませんね }}
石造りの建物にはつる植物が絡まり、バルコニーには常緑の植物が飾られている。
屋根には緑の芝生や小さな庭が設けられ、自然を感じられる工夫が随所に見られた。
窓からは翡翠のような色鮮やかな植物が顔を出し、建物全体が緑に包まれているようだった。
「うーん、この街の匂いは特別だな……。新鮮な草や木の香りが混じり合って、まるで森の中にいるみたいだ。清々しい空気が鼻を抜ける感じがたまらない」
{ ふふ、お父様と狩りをした時のことを思い出していますね? }
「あぁ、よくわかったな。あんな感じの匂いだ」
ロランは懐かしむように微笑んだ。
通りの両側には緑豊かな樹木が立ち並び、その木陰にはカフェや小さな飲食店が点在していた。
テラス席でのんびりと過ごす人々の姿も見受けられ、彼らはお茶を楽しみながら通りを行き交う人々を眺めていた。
《うわ、めっちゃいい匂いするな……》
ロランが匂いに惹かれた市場の一角には新鮮な魚介類が並び、独特の香ばしい匂いが漂っている。
ここではバイユール名物の魚料理が堪能でき、多くの旅人や冒険者たちが足を運んでいるようだ。
{{ 染物に鉱石を使った工芸品、いずれも湖の水を利用したり、山から採れる物を利用しているのでしょうか? }}
ロランはエリクシルの問いかけに頷きながら、雑貨店や工房が軒を連ねる街並みを眺めていた。
店先には手作りの工芸品や染色された布が並び、その鮮やかな色彩が街を一層魅力的に彩っていた。
「土産物みたいな木の細工もあるな……」
{{ この近辺で採れる材木とは異なるようです。輸入品かもしれませんね }}
「へぇ……よく
ロランは街の中心部に向かって歩きながら、周囲の様子を観察していた。
冒険者たちの姿も多く見られ、皆、目的地に向かって急ぎ足で歩いているようだった。
バイユールの街並みは建物の切れ目から湖が見え、その湖面には大連山の壮大な景色が映し出されている。
湖と山の美しい景色が街並みと見事に融合しているようだった。
「こりゃ、予想以上だな……」
{{ 観光はまた後程するとして、手始めに冒険者ギルドに向かいましょうか。換金と宿についての情報を集めるのがよろしいかと }}
「おう、エリクシル。さっそく頼もしいな!」
ロランは街の広場にたどり着くと市場では新鮮な食材や工芸品が売られ、賑やかな声が響いていた。
広場では人々が集まり、情報を交換したり商談を行ったりしていた。
その中に紛れ込んで情報収集を始める。
「すみません、バイユールの冒険者ギルドはどこにありますか?」
「あぁ、それなら、あっちの道を真っ直ぐだよ」
ロランは近くにいた商人に尋ねると、親切に道を教えてくれた。
冒険者ギルドへの道すがら、ロランは街の様子をじっくりと観察しながら進んだ。
街並みは整然としており、防壁も堅固であることから、ここが重要な拠点であることが伺える。
「ここか……。んで、お向かいは商業ギルド、か」
{{ この配置はもう決まられているのかもしれませんね }}
冒険者ギルドに到着すると、その建物は他の施設よりも一際大きく立派な造りをしていた。
入り口にはギルドの紋章が掲げられており、その威厳に満ちた雰囲気が漂っている。
反対にある商業ギルドもそれは同じだった。
ロランはギルドの扉を押し開け、中に入る。
高い天井と広々としたホールが広がり、重厚な木材と石材が調和した内装が目に入る。
壁には歴戦の冒険者たちの肖像画が掛けられ、ギルドの歴史を感じさせる。
大きなシャンデリアが中央に吊るされ、温かみのある光がホール全体を照らしていた。
多くの冒険者たちがカウンターに並び、併設された酒場は大変な賑わいで活気に満ちていた。
《おぉ……》
{{ ポートポランのギルドとは随分と造りが異なっていますね。潮風対策が必要ないからでしょうが…… }}
「受付……結構並んでるな」
ロランは目の前の列へと並び、売却したい素材の準備をし始めた。
酒場では噂話で盛り上がっているのか、やや騒がしい。
「そういや、北の鉱山で新たな魔物が発見されたらしいぜ。討伐依頼が来るのも時間の問題だな」
「あの鉱山、魔物の巣になってるって噂だしな。危険だが報酬は良いんだろうな」
冒険者たちは食事をしながら大声で話し合っており、その中には酒を煽りながら話す者もいた。
「おいおい、あの商人ギルドの連中がまた価格を吊り上げてるって話だ。どこまで儲けるつもりなんだか」
「あの連中には気を付けないと、足元見られて大損しちまうぜ」
別のテーブルでは、冒険者たちが険しい表情で酒を飲みながら噂話をしていた。
またあるテーブルでは、冒険者たちが机に脚を載せてリラックスしながら、噂話に花を咲かせていた。
{{ 気になる話題が話されています……! }}
エリクシルが噂話のひとつに注目した様子を見せた。
ロランのARが展開され、冒険者たちのグループが強調表示される。
テーブルを囲む数人が、ジョッキを片手に肉を喰らいながら盛り上がっていた。
「おい、聞いたか? タロンの遠征が失敗に終わったって話!」
「3つの
「あぁ、特に『豊穣の風』がとんでもねぇ被害を出したってのだろ」
「死者も出たってんだから、ありゃ立て直しが大変だろうな!!」
《タロンの遠征……!!》
――――――――――――――
地図。
https://kakuyomu.jp/users/PonnyApp/news/16818093081139688431
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます