073 アライアンス結成★
「では、パーティーと
コスタンはそう言うと握手を求めるように右手を出した。
《握手を求められているけど、パーティーを組むのに必要なのか?》
{{そのようですね。接触を必要とするのか……魔素の流れをモニタリングします}}
ロランが躊躇している様子に気付いたのか、コスタンは優しく微笑みながら説明を続けた。
「パーティーを組むにはリーダーに触れる必要があります。握手をしたら私が申請しますから、ロランさんは承認の意思を示してください」
「わ、わかりました」
ロランはゆっくりと右手を伸ばし、コスタンの手を握る。
「パーティー申請」
「し、承認します!」
瞬間、暖かな感覚がロランの手のひらを駆け抜けた。
同時に、視界の隅に淡い光が流れ込み、板状のプレートが浮かび上がる。
「うわっ……急にステータスが……」
◆ロラン・ローグ 23歳
◆無職 自由民 レベル1
◆パーティ:コスタン(リーダー)
ロランの驚きをよそに、コスタンは落ち着いた声で解説を始める。
「このステータスは、パーティーを組んだ者同士で表示されます。ですが、不思議なことに、これが他者には見えないのです。おそらく必要がないからなのでしょう」
エリクシルは視界の端で浮かび上がる紐状の魔素に目を留めた。
淡く光るそれは、ロランとコスタンを結んでいる。
{{ロラン・ローグに魔素の流れが確認できました。お互いがリンクしているようです。これは……一部の魔素を共有しているのかもしれません}}
《……本当に魔素で繋がってるんだな》
{{はい、うっすらと紐のような魔素で繋がっていますね……}}
《へえーーっ、これで特性スキルだっけ? それが共有されるのかな》
{{恐らくそうだと思います。そしてダンジョン内ではこの魔素のリンクによって、魔物から得た魔素を分配したり、レベルの壁越えを共有したりしているのかもしれませんね}}
《……なるほど》
ロランがその感覚を確かめている間に、コスタンは他の村人たちとも次々にパーティーを組み、最終的にリーダー同士で
「これで準備は整いましたな。初心者であるロランさんにも確認をお願いしたい。ステータスをもう一度開示してみていただけますかな?」
「あ、はい。……ステータス開示!」
新たに「
《リーダー同士が繋がることで、全員の情報が共有される仕組みか……すごいな》
{{コスタンさんが別のパーティーリーダーと思われる村人の方に"
エリクシルの分析もあって一通りパーティーと
「……
「うむ、上手くいっていますな。これでパーティーと
{{ステータスを閉じるのと同様に意思が肝心なようですね。それで魔素の繋がりが断たれるのでしょう}}
《……面白い!》
「……パーティ解除、ですね。覚えておきます」
コスタンが笑顔で頷くと、皆を手招きし集める。
「……さて、このまま皆でまとまっていては効率も悪いでしょうから、我々は3人3組で別れましょう。……チャリスさんとラクモさんは私と……あとの6人は――」
コスタンは穏やかな口調で村人たちを振り分けていく。
ラクモ――獣人の料理人。ロランはその名前に聞き覚えがあった。
パスタを打つのが得意な彼がいったいどれほどの戦闘力を持つのか、とロランは驚く。
「では、砦外周のゴブリンを一体ずつ仕留めていきます。ロランさん、先陣をお願いできますかな?」
ロランはこの襲撃で最前線を任されることになった。
彼の
その能力を存分に活かせる役目だ。
「……この3人1組は、決して崩してはなりませんぞ。
コスタンの言葉には経験に裏打ちされた説得力があった。その真剣な目が、全員の気を引き締める。ロランは自然と背筋を伸ばしながら、彼の指示を聞き入れた。
《やっぱり先生だな……さすがだよ》
{{
過去に
「わかりやした! 岩トロールを前に怪我なんてしちゃあ、おしめぇですわ! 皆ァ気張ろうぜ!」
「「「「おう!!」」」」
チャリスが発破をかける。
彼らしい豪胆な様子は不思議と皆に安心感を与える。
ロランは一歩前に出ると、真剣な表情で口を開く。
「俺たちは力を合わせる。それだけです。絶対に勝てます!」
その短い言葉に、静かだった村人たちの士気が少しずつ高まり始める。
エリクシルも冷静な声で続けた。
{大切なのは無駄な被害を出さないこと。わたしたちの計画通りに動けば、確実に成功します}
エリクシルの声はどこか穏やかで、それでいて揺るぎない信頼感を帯びていた。
その言葉に、村人たちは背筋を伸ばし、次々に頷いた。
決意が一つの流れとなり、場を支配する。
「うむ。そして最後に申し上げますが、命の危険を感じたら迷わず退くことも重要ですぞ」
コスタンの締めの言葉が、場を完全に引き締めた。
彼の目配せを受けたロランが、先頭に立つ。
エリクシルもそれに寄り添うように続き、村人たちは静かに篝火を離れた。
「コスタンさん、これを……」
「ほう、これが例の物ですか。随分と小さな道具のようですが……」
ロランが手渡した小さな機械が、コスタンの手のひらでかすかな光を放つ。
「小さいですが、今回の状況にはぴったりなんです」
ロランは歩きながら、機械の使い方や注意点を簡潔に説明する。
コスタンはそれを手に取り、動作を確認しながら小さく頷いた。
「村では『奥の手』と聞いて期待していましたが……正直、少し緊張しますな。しかしロランさんの期待には応えねば! 使いこなしてみせますぞ!」
「ありがとうございます。心強いです!」
その時、エリクシルの冷静な声が二人の間に割って入る。
{ロラン・ローグ、もうすぐ1体目のゴブリンが攻撃範囲に入ります}
――――――――――
砦の外観。
https://kakuyomu.jp/users/PonnyApp/news/16817330666850533256
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