レイド:岩トロール
072 コスタンの新たなる一歩★
「そりゃ! 良かったですが! この乗り物、怖すぎますぞぉーーー! アヒィーーーー!」
バイクは山を一つ越え、広がる平地の先に篝火の灯りが揺れているのが見える。
暗闇の中で、小さな炎が頼りなくも確かに道しるべとなっていた。
ロランがスロットルを緩めながらその方向へ進むと、待ち構えていたチャリスと村人たちが迎える。
「コスタンさんもお連れで! 槍はこの通り万全ですぜ!」
チャリスが槍を掲げて自慢げに笑う。
村人たちも続いて槍を構え、その穂先が火の光を反射して鋭く輝いた。
{無事に槍の穂を取り付けられたようで良かったです}
「あぁ、柄が軸受けにスルッとハマるもんで、驚きましたぜ。どんな魔法を使ったのか気になるところですぜ!」
{ふふ、それは秘密ですよ}
エリクシルは得意げに微笑みながら軽く会釈をした。
一方、コスタンはロランに肩を借りてヨロヨロとバイクから降りている。
「おっとっと……ぶはあ! 地に足がつくと、安心しますな……」
胸に手を当て、ふぅと息をつく彼の姿に、ロランが吹き出しそうになるのを堪えている。
「……さて、ゴブリンはまだ寝ているのですかな?」
{はい、相変わらず砦内に動きはありません}
「では、急ぎ向かうとしましょう……」
{と、その前に、ロラン・ローグ}
「おう」
ロランはバックパックからサポーターを取り出してみせる。
{コスタンさんにこれを右膝に装着していただきたくて}
「はて、これは何でございましょう?」
エリクシルがロランの
細かく分けられた手順が視界に浮かび上がる。
「こんなことまでできるのか……。コスタンさん、これを装着すれば膝の痛みが楽になって動かしやすくなるそうです。俺も仕組みはよくわからないけど、エリクシルが嘘をつくわけないので、試してみましょう!」
コスタンはその説明に期待を込めた眼差しを向ける。
「本当に何から何まで考えてくださって……ありがたい限りです。ぜひお願いしますぞ!」
ロランは
膝に支柱が固定されると、エリクシルが小さく頷く。
{それでは動作試験を行いましょう。右膝に体重を掛けてみてください}
コスタンは恐る恐る膝を屈伸させ、さらに体重を掛ける。
すると驚きの表情を浮かべた。
「……これは……まるで魔法ですぞ! 痛みが、嘘のように消えました!」
彼は試すように片足立ちになり、小さな跳躍まで披露した。
その動きは軽やかで、村人たちも驚きの声を上げる。
{用意した手順全てを説明する必要もありませんでしたね。様々な体重の掛け方をご自身で試しているようです}
「……えっ? この手順も全部用意してあったのか?」
{ええ、あと30ほど行程があったのですが、省略できそうですね}
「まじか……」
ロランはすべての動作試験をやらされずに済んだことを安堵していた。
「ほっほーーー! こりゃ凄いですな! 膝が嘘みたいに軽い!」
コスタンは腰に手を当て、無邪気に小刻みな駆け足を始めた。
その様子に村人たちは顔を見合わせながら笑う。
「ちらっと見た限りでは、金属の支柱で安定を取ってるようでさあ。これ、どうやって思いついたんですか?」
{支柱の構造により荷重を分散し、膝への負担を軽減しています。さらに動揺を抑える設計です}
「なんともまぁ、義足とは違いますが……こんな代物、よう考えつきますなぁ!」
チャリスは何度も感嘆の声を漏らし、コスタンに見せてほしいとせがむ。
サポーターを嬉しそうに見せびらかすコスタンと、技術に驚くチャリスのやり取りに、ロランとエリクシルは思わず笑みを浮かべた。
{……さて、コスタンさんの動きも確認できましたし、
エリクシルの提案に皆が静かに頷く。
先ほどまで和やかだった雰囲気が、一瞬にして張り詰めた緊張感に包まれた。
元冒険者のコスタンが周囲を見回しながら、落ち着いた声で提案を口にする。
「まずは、改めて敵の数を把握する必要がありますな。エリクシルさん、砦の敵の状況を教えていただけますかな?」
{はい、現在確認されている敵は、砦の主を含めて合計14体。そのうち13体がゴブリンです。砦の外周には7体が散開して休息を取っており、残りの6体は内部の2か所に分かれて、それぞれ3体ずつ配置されています}
ロランの視界には、
が、それをそのまま共有することはできない。
エリクシルが伝える情報が、他の者たちにとっては唯一の指針だ。
「そこまで正確な位置がわかるのは結構ですが、私どもにはわかりませんからな……」
コスタンは顎髭をゆっくりと撫でながら考えを巡らせる。
その表情は熟練の冒険者としての風格を感じさせるもので、村人たちも無言のままその言葉を待ち受けている。
「ロランさんの"銃"の威力は確かに強力ですが……音も大きい。それを使えば、たちまち全員が目を覚まし、乱戦に発展する恐れがありますな。ですから、まずは隠密行動で外周に散開している
「この明るさを活用し、慎重に音を立てず進む。どうでしょう、まず砦外部のゴブリンから手をつける形で」
コスタンの言葉に、村人たちが次々と頷き、力強い声を上げた。
{異論ありません!}「よし、やるぞ!」
「おうとも!」「そうだ、そうだ!」
チャリスが槍を握りしめ、村人たちもそれに続く。
皆の視線が自然とロランとエリクシルへ集まる中、コスタンが一歩進み出た。
「では、パーティーと
コスタンはロランに握手を求めるように右手を出した。
―――――――――――――
コスタン。
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