049 "マセキ"とステータスの開示
《そうだな。……ますますこの世界がゲームに近い気がしてきた》
ロランはエリクシルの指示に従い、コスタンに「マセキ」について尋ねた。
「レベルと魔石の関係とは?」
「魔物を倒し、魔石に魔素を蓄えると、このようにステータスに"レベル"が表示され、少しずつ上がっていくのです」
コスタンは再び「ステータス開示」と唱え、空中に自分のステータスを表示した。
そして、そこに表示された「レベル」を指さす。
「なんだか……ゲ……すごい話ですね」
ロランは一瞬「ゲームみたいだ」と言いかけて飲み込んだ。
目の前で繰り広げられていることが、自分の知っているゲームの仕組みそのものに見えてしまったのだ。
{{ロランさんのレベルも確認してみましょう! もしかしたら上がっているかもしれませんよ!}}
「……あの、魔物を倒すとレベルが上がるんですよね? 実は俺も
ロランがコスタンに尋ねると、コスタンがうなずいて指示を出す。
「そのようでしたな。では実際に見てみましょう! 私の言葉を繰り返してください……"ステータス開示"!」
《えっ!? 俺もできるのか?》
ロランは面食らって助けを求めるかのようにエリクシルを見ると無声通信する。
{{開示して下さい!今すぐに!!!}}
エリクシルはロランを急かす様に早口で伝える。
「ステータス開示!」
すると、目の前に半透明のスクリーンが浮かび上がり、ロランの情報が表示された。
◆ロラン・ローグ 23歳
◆無職 自由民 レベル1
「で、できた……本当にステータスが出てきた……!」
ロランが驚きの声を上げると、エリクシルもまた目を輝かせてスクリーンに見入っていた。
{すごい!これは本当に驚きです!}
コスタンもうなずきながら、ロランのステータスを覗き込んでいる。
「どうやって消すんだ……?」
ロランがそう思った瞬間、スクリーンは光の塵となって消えた。
「ふむ、消したいと願うだけで、自然に消えますぞ」
ロランはその仕組みに感心しながら、少し落ち着きを取り戻した。
エリクシルは魔素の流れを観察していたようで、すぐに報告してきた。
{身体から微量の魔素が放たれてステータスが構築されていますね! 消えたあとは再び体内に戻っていきました!}
「……エリクシルさんは魔素の流れが見えるのですか?」
「ええ、朧気ながらも見えています」
「それは素晴らしい……魔素を感じ取れるとは、稀有な才能をお持ちですな」
コスタンがエリクシルを褒めると、エリクシルは少し照れた様子を見せた。
「ところで……魔素がどうやって名前や年齢などを表示しているんですか?」
ロランが興味を抑えきれずに尋ねると、コスタンは少し考えて答えた。
「うむ……私たちには当たり前のことなので詳しいことはわかりませんが、魂に名が刻まれているとも……魔石に刻まれているとの説もありますな」
{……魂ですか。とても興味深い話です}
ロランは魂がオカルトではないのかと考え、思わず身震いする。
「ロランさん、もう一度ステータスを開示してもらえますか? もう一度レベルを確認したいので」
「え、ええ、わかりました……ステータス開示!」
再び浮かび上がったステータスを見て、コスタンは顎に手を当てて考え込む。
◆ロラン・ローグ 23歳
◆無職 自由民 レベル1
「ふーむ……やはりレベルは始まりの1ですな……はて……」
ロランは少し残念そうに、だが興味を持ちながら再びコスタンに尋ねる。
「レベルが上がると、どうなるんですか?」
「レベルは魔石に貯められた魔素の量を示します。レベルが上がるほどスキルを得やすくなると聞いたことがあります。ただ、レベルには"壁"と呼ばれる限界があり、その壁を超えるには格の高い魔物を倒さなければなりません」
{レベルの壁……ですか}
「はい。私が19レベルで止まっているのは、この"レベルの壁"を超えられなかったからです。壁を超えられなければ、器も広がらず……それが冒険者の試練でもあるのです」
エリクシルが静かに頷いた。
{本当に命懸けの冒険なんですね……こうしてお話ししてくださることに感謝です}
「ありがとうございます」
コスタンは照れくさそうに頷き、話を続けた。
* * * *
ロランとエリクシルは、コスタンから聞いた話にじっくり耳を傾け、異世界での『レベル』や『スキル』についての理解を深めていた。
特に『覚醒』や『スキル』の獲得条件については、ロランにとってもエリクシルにとっても非常に興味をそそる内容だった。
レベルが上がればゲームのようにステータスが向上するようなことはない。
あくまでレベルは
そして、レベルの壁は5、10、15、20……と、5レベルおきに存在する。
20の壁がとても厚いとコスタンが言う。
そんなコスタンの前任の町長は24レベルらしく、壁を越えているからか所持する
そして話題は壁を越えた時の飛び級、覚醒について戻る。
「『覚醒』によって一気にレベルが上がるなんて……それこそ冒険者にとっては夢のようですね」
「ええ、確かに。まさに壁を乗り越えたご褒美でしょう。ある冒険者は、何年も壁にぶつかり続けた末にようやく覚醒し、大幅な成長を遂げたと聞きます」
覚醒という言葉にロランの胸が高鳴る。
成長の過程に努力と試練があり、その果てに待つ覚醒——それはまさに冒険心を掻き立てられるものだった。
コスタンはさらに、スキルの詳細についても説明を続ける。
「"スキル"についても先程お話しした通りですが、これは専門技術ですな。ある程度の修練を積んだ後に得られるものでして、指導を受けたり、独自に鍛錬を積むことで習得できるとも言われております」
{なるほど……技能としてのスキルですね。実際にスキルを持つ魔物とも遭遇しましたが、やはり彼らも特定の技術を持っていたんですね}
エリクシルが納得したように答えると、通信で興奮を抑えきれずない様子を見せる。
{{魔石の内部にあった針状の内包物とスキルの関連が色濃くなりましたね! わたしの仮説が立証できるのかもしれません!}}
そしてコスタンにさらなる説を確かめる。
{……コスタンさん、そういった特殊な技能を持った魔物の魔石は色や中身に特徴があるものですか!?}
「うぅむ……。中身についてはわかりませんが、より強大な魔物の魔石は複雑な色をしているとは聞いたことが、それ以外はわかりませんな」
{……複雑な色ですか……}
《仮説を立証できるのはまだ先になりそうだな。そう焦らなくてもサンプルが手に入ればわかるさ》
{{うぅ、その通りですが……。それでもわたしの中では確証に近づいています!}}
「……さて、だいぶ話し込みましたな。そろそろ一息つきましょうか」
コスタンはコップに残ったお茶を見て、休憩を提案した。
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