030 ニョムニョムおねしょ★
ニョムを救出してから4日目の朝。
ロランとニョムは一緒に寝るようになり、ニョムの夜泣きもなくなった。
しかし、朝4時、ロランがふと目を覚ますと、ベッドの異変に気付く。
(……? なんか濡れてる? ニョムがまた泣いたのか? ……いや、これはおもらしか)
ロランは冷静にシーツを手で探り、過去の記憶が蘇る。
アニエスが小さかった頃、おもらしをして泣いていたことを思い出す。
(こういう時は叱らず、普段通りに接するのが一番だよな。……エリクシル、聞こえてるか? 着替えの準備を頼む)
{{その判断は正解です。"おもらしプロトコル"を実行しましょうか}}
《なに? おも……プロトコル?》
{{はい、おもらしの後処理機能です。布団の洗濯や着替えを準備しますね}}
《……そんな機能があったのか?》
{{興味があれば、マニュアルを読み取りますが……}}
ロランは驚きながらも、エリクシルに任せることにした。
サイドテーブルから取扱説明書のチップを取り出し、エリクシルが読み取る。
{{スキャン終了。"おもらしプロトコル"についての情報を表示します}}
《本当にあったのかよ……何々……》
ロランはザックリと目を通す。
おもらしプロトコルの概要……
排泄物とは……
排泄物の及ぼす悪影響……
排泄物の及ぼす良い影響……良い影響なんかあるか!? 気になるが今は読んでいる暇はない。
悪影響の事例……
種族別の排泄物の処理について……
排泄物の処理方法……
排泄物処理の設定……これか? ……これだな。
《よし、流れはわかった。あとは頼むぞ、エリクシル》
{{承知しました}}
エリクシルが作業に取り掛かる間、ロランはニョムを優しく起こした。
「……ニョム、おはよう」
「ニャムニャムワウ…………」
ロランがニョムを起こすと、目をこすりながら寝ぼけている様子だ。
しかしベッドに手をついた時、腰回りが濡れていることに気が付き、事態を理解したようだ。
恥ずかしそうに口をパクパクとしているかと思えば、ぎゅっと両目を瞑ってしまった。
「大丈夫だよ。怒らないし、気にすることはないさ。怖い夢でも見たんだろう?」
ロランの温かい声に、ニョムは涙をこらえながら小さく頷く。
「シャワーを浴びようか。服のまま入っていいから。終わったら洗濯に出してね」
ニョムは素直にうなずき、バスルームへと急いで向かった。
ロランがシーツを片付けようとすると、アームが現れ、スムーズに後片付けを始める。
「おぉ、これが"おもらしプロトコル"か……」
{あとはお任せください}
ロランの隣に急に現れたエリクシルに驚きつつ、目の前で淀みなく進む作業に目を奪われる。
壁面から箱がパカッと飛び出すと、シーツとカバーが無造作に突っ込まれる。
ベッドはアームから霧吹き上に吹きかけられた液体によって消臭・除菌がされているようだ。
新品のシーツとカバーが壁面の箱から取り出されると、ものの2~3分でベッドメイキングまでされる。
「すっげぇ……。俺のベッドってたまに綺麗になってたけど、こんな風に掃除されてたのか……」
{はい、わたしが臭いレベルや汚染度を測定して定期的に掃除していましたね}
「臭い……」
エリクシルに自分が清潔かどうかチェックされていたという事実に、恥ずかしさを感じながらロランはクリーンルームにニョムの様子を見に行った。
そこではちょうど汚れたシーツとカバーが洗濯用バスケットに入れられていた。
バスルームの中からは、ニョムがシャワーを浴びる音がする。
ガラス扉のそばには、エリクシルがアームで用意したと思われるバスローブが置かれている。
ロランはそれを確認し、委細問題ないことを確認するとその場を離れた。
今度はキッチンへと移動し、ニョムのために温かいココアを準備して待つことにした。
しばらくしてニョムがバスローブに着替え、何とも言えない恥ずかしそうな面持ちでリビングに戻ってきた。
何かを言いたそうにしているが、ロランがそれを制する。
「ニョム、いいんだ気にすることは無い。誰だっておねしょのひとつやふたつ、したことがない方が珍しいんだ」
「ニョム、ニョムニョムしちゃった……」
ロランは無声通信でエリクシルに尋ねる。
《"ニョムニョム"って……これ、シヤン語でおもらしって意味か?》
{{その可能性がありますね。今は彼女にとってデリケートな話題なので、そっとしておきましょう}}
《そうだな……》
ロランは再びニョムに向き直り、優しく笑いかける。
「……ニョム、なんてことはないさ。俺だって、森でウンコ漏らしたことあるぞ!」
「えっ! ロラン、ウンチもらしたの!? ニョムはウンチもらしたことないよ!」
「あぁ、ニョムは偉いな! あれは大変だったんだ、親父と森に行った時でな……」
ロランの失敗談にニョムは笑顔を取り戻し、自信に満ちた表情を見せる。
朝食を共にし、またいつもの日常が始まる。
{{ところでロラン・ローグ、先ほどの話は本当のことなのですか?}}
《うるせーぞエリクシル!》
ロランの照れた様子に、エリクシルは微笑んだ。
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