ECHO LOG 002
世界の終わりとか、人類の最期とか、そういうのは物語の中だけの出来事だと思っていたのは、私一人じゃないだろう。
考えたこともない。考えようとも思わなかった人が大多数じゃないのかな。
でも、絵空事みたいな現実は本当に訪れた。
二一二〇年四月十八日。アメリカ西部ヘンダーソンの街中で、一人の男性が突然意識を失った。その人は基礎疾患もなかったし、何かの事件に巻き込まれたわけでもない。
ただ、急に眠りに落ちて、二度と目覚めなかった。声を掛けても頬を叩いても、様々な医療的措置を試みて、もっと刺激的なことをしても、その男性は目覚めることなく眠ったまま息を引き取った。
これが、
それから世界のあちこちで同じように突然眠りに落ち、二度と目覚めない人達がたくさん出てきた。
実際には、最初に眠ってしまった人を治療している間に、発症する人は増え続けていたから、死に至る病だとわかった頃には世界中に広まっていたらしい。
ESSになった人は突然眠ってしまい、脳波が一定の波を描くようになって、体はゆっくりと生命活動を止めていく。
言葉にしてみるとなんだか馬鹿みたいな奇病は、そもそも病気なのかもわからなくて、感染症みたいに媒介となるウイルスもないから予防もできない。発症するタイミングはバラバラでも、世界規模で起きているから、いつかは全ての人が永遠の眠りにつくことになる。
それが、物語に書かれているような世界の終わりらしい。
……と多くの人々が現実を認識したときには世界人口の四割が失われていて、最終戦争や自暴自棄の大規模暴動へ走れるほどの元気も失われていた。
そうなった理由は色々あると思うけど、たぶん日常生活を支えているインフラの運営をほぼ機械に任せられるようになっていたからだろう。
いっとき広まっていた動揺や緊張もおさまり、世界は静かに終焉に向かっている。
‥
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