第5話

「正直、こんな生活があったことを言わなかったら、きっと、昔に囚われ続けてたと思うんだ。」

「それは、そうだな。」


 そうは答えても、やっぱりどこかでは、申し訳ない気持ちは残り続けるし、そんなことはないという思いもある。


「そんな暗い顔しないでくれよ。これだって一つの正解。よっちゃんが言ってこなくてもそれはそれで一つの正解。間違いなんてないんだよ。」


 その言葉は心に響いた。

 勝手に正解は一つしかないと決めつけていた。

 その事実が本当に申し訳なかった。


「ごめんな。」

「気にしないで。」


 やっちゃんはやっぱりすごい。それを実感した。


「そうだ! 今日って6月30日だよね。」

「そうだね。」

「七夕、あそこ行こうよ!」

「あそこって?」

「忘れたの? 約束したじゃん。」

「何だっけ?」

「もう! 引っ越す前にしたじゃん。」


 そうしてやっと思い出した。


「あ~! あの直前のやつね。あったね。」

「なんで忘れてたんだよ。」

「ごめんごめん。」



 それからの日々は、小学生だったころと同じようで違うような生活を過ごしつつ、近づいてくる七夕を待ち望んでいた。



 そして、来た七夕。

 今日も学校ではあったものの、そんなものはどうでもよかった。


 今日の夜のことしか考えていなかった。

 思い返すのはあのときのこと。

 安心したのは、今日は晴れ続けるということ。


 退屈だった学校もあっという間に過ぎ去っていき、いつの間にか夜になっていた。


「待たせたか?」

「いいや、全然だよ、よっちゃん。」


 そうして集まったのはいつも登校するときにも集まる交差点。


 あのときと変わらない道のりであの展望台へ向かっていく。


「あのときと全然変わってないな。」

「そりゃね。田舎ですからね。」


 そんなことを言ってしまうほど、その道のりは変わっていなかった。

 それをあのときよりも早く進んでいく。


 そうして、あっという間にあの展望台についてしまった。


「早かったね。」

「そうだな。」


 あのときと同じように自転車を置き、展望デッキへ向かってく。


 そうして、見えた星空は、あのときよりも明るく、美しかった。


「あれが天の川で、左側にあるのが彦星だったよね。」

「ふふ、そうだったな。」


 あのとき聞いてきたものを確認してきていて少し面白かった。


「よく覚えてるもんだな。」

「それはそうでしょ。最後の思い出だったんだよ。」

「それもそうか。」

「冷たい感じになるなよ。あのときみたいに。」


 そうやって肘でやっちゃんは押してくる。


「わりいわりい。そんなつもりはなかったんだよ。」

「わかってるよ。」


 それから、毎年、ここで天の川を見に来ている。

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天の川を見るために 学生初心者@NIT所属 @gakuseisyosinsya

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