第4話 召喚獣との過ごし方
瞼(まぶた)が重い。
何時間寝たのだろうか。
まあ、俺の様な人間には時間はあって無い様なものだ。
結城「……ふぅ」
疲れがドッと体に圧し掛かる。
単発の夜勤バイトが終わってから妙な事ばかり続いた。
結局今は夜勤明けから半日経っている、外はもう暗い。
結城「そうだ」
カードはどこにいった。
プラスチックの様なゴムの様な金属みたいなカードだ。
ソファーの下に落ちているカードを拾い上げ観察してみる。
この中に女の姿をした召喚獣が入っているとは…驚きはしないが不思議ではある。
結城「おい、リリア」
カードの状態で話せれば手っ取り早い、俺はカードに向かって話しかけた。
結城「ちっ」
無反応。
やっぱり夢なんじゃないかとすら思える。
大体こう言うのは主の傍に居て色々盛り上げるものだろうが。
そう言えば手の傷もいつの間にか治っている。
妄想。
幻覚。
俺も終わりか。
結城「ん…?」
嫌な予感がした。
手の平に【カードを通せそうな跡】が残っている。
クレジットカードとかを通すあれだ。
結城「はぁ…」
俺はカードを手に取りスキャンしてみた。
…
…
…
何だ?
何も起きない。
いや…。
スキャンした部分が僅かに光っている。
そしてすぐ光は消えた。
結城「何も無い訳ではなさそうだな」
俺はカードを真上に飛ばした。
閃光。
そして女。
そして落下。
リリア「わわわ…!!」
結城「!!」
リリアは俺をすり抜けて俺と一体化している。
リリア「あっ…ご主人様ぁ、動いたら駄目ですからね」
そう言うとリリアは俺から離れ少し間隔を空けて座った。
リリア「もぅ~酷いです……びっくりしました」
結城「空は飛べないのか」
リリア「こっちの世界では殆ど能力は使えないです…」
結城「成程…」
聞いてみるか。
結城「リリア、この傷は何だ?お前が付けたのだろう?」
リリア「ご主人様…ごめんなさい…」
リリア「その…触られてビックリしてしまって…」
召喚獣ってのはもっとこう、火を噴いたり敵をなぎ倒したりみたいな奴じゃ無いのか?
結城「まあいい、だがカードをスキャンしたら少し光ったぞ」
リリア「ぐすん…わかりません…」
リリアはもじもじしている、本当にわからない様だ。
結城「おい」
結城「服は着れるのか?」
リリア「あ…はい!着れます私!」
リリア「ご主人様から手渡しして貰えれば干渉できます!」
着れるのか…。
じゃあ佐伯の孫娘が服を着ているから人間、だとは言えなくなるな。
結城「これを着とけ、触れもしないのに裸でいられたらたまらん」
リリア「こ、これ…」
結城「俺のトレーナーと短パンだ、どうせ俺にしか見えないんだからこだわる必要も無いだろ」
リリア「ご主人様からのプレゼント…」
リリアはニコニコしている。
変な奴だ、こんなので嬉しそうにするとは。
結城「人間の食べ物は食えるのか?」
リリア「はっはい!」
リリア「あの…その…、直接食べさせて頂ければ…」
謎理論だ。
結城「こっちの世界のをお前が持ったり食べたら、他人にはどう見えるんだ?」
リリア「ご主人様経由で頂くとそれは本星のテリトリーに変わるんです」
リリア「透明っ、になります!」
そもそもこの現状が狂ってはいるのだが、俺から渡せばこっちの物を透明に出来るって事は。
手品で食っていけるレベルのイリュージョンになる訳だが。
結城「色々とガバガバだな、召喚士も召喚獣も」
リリア「えへへ…、実は私も詳しくわからないんです」
まあどうでも良いか。
適当で。
結城「さっき寝たからか、召喚しても全然疲れてないな」
結城「おい、一緒にコンビニでも行くか?」
リリア「は…はい!」
コンビニは事務所から歩いて数分の距離にある。
カゴにお菓子やジュースを入れレジに向かう前にATMの存在に気が付いた。
リリア「ご、ご主人様…私この【激辛王】って言うの食べてみたいですぅ…」
結城「ちょっと待ってろ」
激辛王は辛さレベルマックスのインスタントラーメンだ。
と、解説の前にATMの残高を確認しなければならない。
佐伯からの着手金が入金されているかの確認だ。
残高が40万増えている。
まさかこっちの言い値を受けるとは思わなかった。
まあ前回はかなりお得にしたから丁度良いだろう。
結城「リリア、激辛王はお前には早い」
リリア「そ、そんなぁ…」
結城「この辛丸そばを食ってからだ、俺が鍛えてやる」
リリア「お…押忍…!」
かれこれ一時間位はリリアと居る。
意外と、いけるな。
…
…
…
リリア「~~~!!!」
辛丸そばはインスタントそばの中で一番の辛さだ。
正直これと激辛王は、コンビニで販売してはいけないレベルの商品と言える。
結城「だから先に牛乳を飲めと言ったんだ」
リリアは辛さのあまり立ち上がってヒーヒー言っている。
リリア「ばんばりまふ!!」
俺は麺をすくいリリアの口元に持って行った。
ずるずる…
結城「頑張るじゃないか」
リリア「はぁ…はぁ…辛いです~」
少し冷めた麺をすすりリリアは何とか完食した。
結城「ほら」
乳酸菌飲料をコップで飲ませる。
リリア「あ~生き返りましたぁ……」
リリアと過ごして三時間が経つころ、少し眠気が襲って来た。
結城「一旦寝るぞ」
リリア「ご主人様…今日はとても楽しかったです」
リリアは拳を向けて来た。
俺はそれを無視してリリアの頭をなでた。
リリア「あっ…わっ私子供じゃないですぅ…」
目を細めて嬉しそうな顔のままリリアは光に消えた。
―続く
召喚探偵士と召喚獣リリアの冒険 @miyuki-mahiro
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