第38話 魔剣祭11
Dクラスの教室に入るとレインとロイドがこちらを見て驚いていたが、声には出さない。
そう言う緊迫感をこの教師が出している。
これは、あれだ。
怖い先生というやつだ。
一度は先生に怒られたいという思いがあったがEクラスの担任であるクラウス先生は何をしても基本的に怒らない。
そういう先生だから、学年問わず好かれていた。
一方Dクラスの担任である、この男はあまり良くない噂が飛び交っている。
それもそのはず、常に威圧感を感じる。
俺はともかく普通の生徒であれば苦手になるタイプだ。
「ほら、早く挨拶しろ。」
Dクラス担任が俺に指示を出す。
「ノア・ルクレアです。よろしくお願いします」
その後、俺は自分の席に座り、授業の開始を待つ。
2限の授業は実技。
担当はDクラス担任。
名前はクレイグ・リーパー。
実技は基本的にそれぞれのクラスの担任が受け持つことになっており、内容も教官が自由に決める。
Eクラスの時の実技は魔法を的に当てる訓練がメインだったがDクラスでは何をするのか楽しみだ。
「全員集合したな。今回が初めての生徒がいるから改めて説明する。内容はいたってシンプル。一人ずつ私と勝負して負けたら腕立て100回だ。」
確かに内容はシンプルだが、そのシンプルさ故に、生徒側が勝つのは絶望的だ。
なんせ、魔法学院の教師は皆優秀な魔術師。
全世界から集めたエリート集団だ。
それは、クラウスもクレイグも同様に。
そして、訓練が始まる。
自分の番が回ってくるまで待機しているが、さっきから似たような光景が続いている。
挑戦する生徒が何もできずに敗北している。
クレイグが生徒を痛みつけて楽しんでいるようにしか見えない。
これが、クレイグの教育方針と考えたが、そんなことはないだろう。
表情を見れば分かる。
悪意に満ち溢れた表情。
まるで魔族を見ているようだ。
少し、気が立ってきたことによりお仕置きをする。
これは、俺なりの教育だ。
あと2人で俺の番。
俺は前の生徒に少しだけ細工をする。
「次、早くしろ」
「は、はい」
生徒は怯えた様子でクレイグの前に立った。
足は震え今にも泣きだしそうだ。
きっといつもこのようなことが行われているのだろう。
だが、それも今日で終わりだ。
生徒は掌を前に出し、詠唱を開始する。
どんどんと魔力が掌に集まるが、先にクレイグの詠唱が終わったのか、魔法が飛んでくる。
生徒は諦めたのか、詠唱をやめたが、掌から魔法が放たれた。
その魔法はクレイグの放った魔法よりも高威力で、クレイグの魔法を飲み込み、クレイグに命中した。
そう、俺がやったのは校内選でレナが見せた無属性魔法。
相手の魔力を操る魔法だ。
レナは、相手の魔力循環を鈍らせ、疑似的な魔力不足を誘発させたが、俺はその逆、魔力循環を滑らかにし、さらに詠唱をする間もなく魔法を放てるようにした。
それに加え、始まる前に俺の魔力を少し与えたことにより威力も高くなっている。
クレイグは地面に倒れ、ピクリとも動かなくなった。
だが、だれも助ける生徒が居ない。
これが、普段の行いというものだろう。
この後は、魔法を放った生徒は他の生徒に称賛され、クレイグは保健室に運ばれた。
騒ぎを聞きつた学園長がDクラスを訪問し、事の経緯をDクラスの生徒が話した。
これにより、クレイグの指導方法なども学院長の耳に入り、クレイグは行き過ぎた指導という事で学院を去った。
クレイグの空いた穴はクラウス先生が引き受けてくれるようだ。
2つのクラスを掛け持ちして担当するのは前例のないことだが、これはクラウスの評価と実績を信頼した学院長の推薦だ。
これにて、Dクラスに平和が戻った。
色々なことが起こった一日を終え、俺は寮に戻る。
部屋にはすでにレインとロイドが居る。
俺がベッドに腰を掛けると早速、質問が飛んでくる。
「何で、ノアがDクラスに昇格できたの?」
当然の質問だ。
彼らはリスクを承知で校内選に挑み、良い結果を掴んだのに対し、俺は何もしていない。
文句を言われても受け止めるだけの覚悟はある。
「俺も、シエラに魔法を教えてもらってたからな。ある程度の実力を評価されたんじゃないか?実技とかで」
俺がそう言と、以外にも二人は納得してくれた。
「でも、良かったぜ。ノアとまた同じクラスになれて」
「怒ってないのか?」
「怒るって何を?」
「俺は校内選にも参加せずに、2人と同じでクラスが昇格したことに。」
「いや、ノアが評価されただけだろ。俺たちが文句を言う理由なんてない」
なんて良い奴らなんだ。
涙が出そうになってしまった。
同時に、嘘をついていることへの罪悪感が芽生える。
そうして、長い1日が終わった。
翌日の放課後、俺はやることがなく剣術部へ顔を出してみようと思う。
いや、部員でもないのに2回も行くのはさすがに迷惑か?
いっそのこと入部するのもありだな。
だが、一人で入部するのも緊張する。
レインとロイドを誘ってみるか。
いや、あの2人は最近、魔法の訓練をしている。
どうやら、校内選に向けての訓練で何かを掴んだらしい。
それに混ざるのもありだが、手加減しながらの訓練は退屈で仕方がない。
2人も訓練に夢中で話したりはしないし。
俺の頭の中にもう一人適任者がいることを思い出す。
そうだ、シエラを誘おう。
世界最強の魔術師が魔法学院に入学する @nano-a
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