第41話 幼馴染とベッドの中で

 この状況、どうすれば……。

 頭を抱える余裕もなく、俺は藍と都に腕を引っ張られていた。


「うぉい!! 藍、本当に寝るのか!?」

「うん、寝る。いいじゃん、寝るくらい」


 なんで視線を外して恥ずかしそうに言うかな!


「都、各々の部屋で寝よう。その方が間違いが起きない!」

「間違いが起きても大丈夫です!」


 だめだ、都は完全に受け入れ体勢だ。説得をしても無駄そうだな。

 ここは観念して一緒に寝るしか……。

 そうだ、ただ寝るだけだ!


 それ以上でもそれ以下でもない……はずだ。


 結局、俺の部屋に到着。

 もう逃げられない。


「もう一度確認するが、本当に良いんだな……?」


「うん……緊張するけど大丈夫」

「はいっ」


 覚悟は決まっているということか。

 ならば俺ももう迷っている場合じゃないな。いよいよ大人の階段をのぼる時が来たのだ。


 ベッドに横たわり、俺を挟むように藍と都が添い寝してくれた。


 ……おぉ、すっごく新鮮だ。


 確かに子供の頃にお泊りはあった。けど、もうあの頃の記憶なんて曖昧だ。昔と今では状況も大違い。


 心臓が死ぬほどバクバクしている。


 ここから先は未知でしかない。



「二人とも……俺」



「Zzz……」

「……兄さん、おやすみなさい……」



 ――って、アレぇ!?


 藍も都もなんかもう寝てるしー!?


 ここは普通、間違いが起こるところじゃないのか……。期待した俺が馬鹿だったのか……。チクショウ!!


 涙目になりながらも、俺は瞼を閉じた。


 まあいいや。

 こうして藍と都と一緒に寝られるだけでも幸せなんだから。


 しかし、本当に寝ちゃったのかな。


 二人とも俺に背を向けている。

 それに、ゴソゴソと音も聞こえている。これは寝ているというよりは、ソワソワしている感じだ。もしかして、起きてる?



「お、おい……藍。実は寝てないんだろ?」

「……っ」


 妙に反応があるけど、こちらを向いてくれない。

 耳が赤いな。


 む~、これはどうしたものか。


 今度は都の様子を見てみる。


「都、寝たふりはやめてくれ」

「…………あ、ぅ」


 妙な声を漏らす都は、明らかに起きていた。けど、こちらを振り向こうとしない。だめか……。


 けど、なんだろうなぁ。

 藍も都もなんだか息が荒いような。


 ああ、きっと緊張しているんだな。そういうことか。

 俺もこんな状況だから身動きのひとつもできない。出来ることと言えば、藍と都の後姿を眺めるくらいだ。……寝間着、可愛いな。あと良い匂いがする。


 なんて、ぼうっとしていると寝息が聞こえてきた。


 これは都か?


「…………」


 おいおい、寝ちゃったのかよ。

 こうなったら藍も寝てしまいそうな予感。


 一応確認しておこうと俺は身を起こす。すると藍がようやくこちらへ振り向いた。



「……ごめん。都が寝たっぽいから、やっと赤くんに顔を合せられた」

「べ、別に気軽にしろよ。こっちまで緊張するじゃないか。……してるけど」

「だって、ねえ……? ちょっと気まずいし、ドキドキするし……もう頭の中が真っ白だよ……」


 そういうことか。お互いにパニック状態だったわけだ。


「ま、まあ……今日はちょっと状況がアレか」

「そう、だね。うん、そうだよ」


 自分に言い聞かせるように藍は納得していた。


「寝る……か?」

「ううん、まだ起きてる。ねえ、赤くん……このまましてもいいよ」

「!? な、なにを!?」

「キスとか」

「な、なるほどキスな……おーけー」


 寝ている都には悪いが、今なら俺の気持ちをきちんと伝えるチャンスだ。

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隣の席の幼馴染が可愛すぎる 桜井正宗 @hana6hana

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