第13話 大教会ギネヴァーとザイゼン王国
確かに、ガスプ王と大教会とは一度は袂を分かったようであったが、それでも王国を建国するにあたって大陸との交わりを完全になくす事は難しかったようだ。
大陸の国々の多くはやはり大教会と交わりを持っているのであり、彼らと国交を結ぶにあたって、大教会との交わりをなくすのは不可能だった。
なるほど、あの堂主には王族すらもなかなか口を出せないような後ろ盾があるが故に、あれだけ強気でムカつく態度でいることができたのか。
「噂には聞いていたけど、王国と教会はかなり複雑な関係性みたいね。そんな中でゴルージャが王都の教会に通っていると言うのはやはり気になるところ。その辺すぐにでもゴルージャに聞いてみるか」
「さすがに今からでは婚約者のお前と言えど王子の部屋に行くのはやめておいた方がいいかもな。一応は正規の手続きをとったほうがいい」
「そうする」
明日やることも決まった。今日は王都の様子を見て、王宮の外側にある庶民の様子を見たが、今度はその逆、王宮の内側にある人々の様子を見よう。
「まずは兵舎に」
「行きたくてたまらないんだろ」
「うるさい。兄さんが楽しそうな話をするから」
兄さんの方の収穫もあって、今日だけでもかなり色々なことが分かってきた。それはとてもありがたいことだが、それはそれ、これはこれである。
大教会か。戦士の一族の故郷にいた頃も、彼らの噂を全然耳にしなかったわけではない。おそらくは一族は彼らの教義に従ってきた人々もまた大勢殺してきただろうし、その辺りにもきっと確執は存在する。
ガスプ王はきっと、その辺りのしがらみも含めてこの国を自由にしたいという理念があるのかもしれないが、それは現実には厳しい道だ。
そうした現実と理想の乖離こそが、この王宮の壁に見るような、またはテリーが言っていたように「王族の人間と庶民とでは考え方が違う」というような気持ちの離れ方に関係していそうだった。
蛮族姫と勇猛王 宮塚恵一 @miyaduka3rd
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