高校デビュー

@hiroking555

高校デビュー

この物語はいじめられっ子の主人公の音が高校生入学からアーティストデビューするまでの物語です。


「うぉー!みんなありがとう!また、会おう!!」「いやー、最高のライブだったな。なぁ、音!」「うん。みんなの楽しんでる顔を見れるってすげーよな。


人気ロックバンドTIROは最近話題になってるアーティストだ。ボーカルの音(OTO)ギターの引(IN)ベースの塁(RUI)ドラムの叩(TATAKI)の4人で構成されてる。


「よっしゃー打ち上げいくぜー!」「うるさいのはドラムだけにしろ叩。」「んだと、真面目ヤロー!ベースの安定感は認めるがこんな時はいいだろ。」「すいません!お菓子ください。」マイペースなギター担当、引。。「とりあえずいこう!!」


打ち上げは焼き肉屋さんに向かった。


「水で。」「お前お菓子食べ過ぎだろ。」「オレはカルビ5人前!」「音は?何すんの?」「サラダ!」「えー!!」「うそうそ。僕もカルビ!」とにかく、今はすごく楽しい。バンドやるくらいだからみんな個性的で面白い。でも、幼少期の自分は本当に孤独だった。


学生時代━━━━━僕は典型的ないじめられっ子だ。学校に行けば子供の遊びだと見逃されがちで解決しようと動くこともない暴力を振るわれ、筆記用具を壊され、いくと仲間はずれにされる。もう諦めていた。学校に行っても楽しいことが見出せないから行きたくない。そんな時に支えになったのが音楽だった。


休日は部屋にこもって音楽だけの声を聞くそんな時もあるぐらい熱中していた。平日になると学校に行かされる。休み時間が何よりも苦痛だ。


「ボン。急に無言で腹を殴られた。」今でも理由はわからない。自分は抵抗するという選択肢がなかった。弱いというか、暴力を振るわれる時はよくわからなかった。


ある日から学校に行かなくなった、もちろん勉強はしてない、でも、大好きな音楽だけは聞いていた。小、中はいじめられ続けて、たまに学校行く生活。転機は高校の時訪れた。


高校の文化祭━━━━━4月高校に入学し、新しい学校生活になることに。アンラッキーなことに以前中学校でいじめてきた荒と一緒の学校だ。一緒と聞いた時はついてないなと思った。


大学デビューとかは聞いたことあるが、はっちゃけるというかそういうことじゃなくて、普通の学校生活をしてみたかった。


そして、想定はしていたが同じクラスになり、友達を作るための話のネタになるように、音っているだろ、アイツいじめられていたんだぜ。と3人グループができていた。僕を見つけるとニヤニヤしだし、イジってくる。「お前本当に変な髪質だな。あっはっはっ」いつも通りシカトして席に着こうとすると、ペンを投げられ「何シカトしてんだ?」後ろへ振り向きざまに殴られた。


キンコンカンコーン。キンコンカンコーン。


チャイムが鳴り、何事もなかったかのように席についた。以前も同じことがあった時は小学生の時に泣いていた。今は泣かなかった理由は人に対して諦めていたからだと思っている。過去に助けを求めたときに気づいた、誰も助けてくれないことを。


自分は何かしているような人間でもない。おとなしいかというと人と話せば普通に話す。でも、なぜかイジメられる。この時は諦めていた。


人に対して。自分もいじめられる奴を見たことがあるが、やり返せばいいと思っていてた。かくいう自分も今のように殴られたら殴り返していいとは思うが、そうしたら可哀想な気がしてできなかった。だから、無視するという対応にした。


いじめっ子を無視をし続け、それ以外は友達と過ごしていた「音、あいつらなんなんだ?お前よくやり返さないよな。悔しくないのか?」んー悔しいと言われるとそうでもないけど、やり返したいとは思っているよ。昔も俺いじめられっ子でさ、やり返すという選択肢がなかったんだ。


でも、誰も助けてくれないことを知って、今は反撃しようと考えるようになった。でも、あいつらのように暴言、暴力で返すのは違うと思っている。「そうか。やり返すの俺も手伝うぞ!わっはっはっ」今話しているのが後にドラムの叩だ。いい意味で周りを明るくするタイプのバカで友達だ。


高校入学から席が近く、家も近いから自然と仲良くなった。「音!カラオケ行こうぜ。」ベタだけどカラオケに付き合った。彼は聞いたことないラップの曲を歌った。結構渋くて男らしい声で僕は好きだ。


「ふー。よーし次お前な。」友達とのカラオケは初めてで少し緊張した「お前大丈夫かよ?気にするな下手くそなら笑ってや、、、」昔からの癖みたいなもので、歌を歌うと周りが見えなくなり自分の世界観に入る。終わってみると、叩が口を開けてた。


「おっおっおっお前!!お前!!!」とびっくりした顔で指を差して、アンコールしてきた。それから、1時間ぐらい歌わされた。いや、歌わされたというか、歌わせてくれてよかった。「なんか、おれ初めて人の歌で感動した。紅白歌合戦とか、音楽番組を聞くこともある。すげーとは思うことはあるけど、感動したのは初めてだ。喉大切にしろよ!」飴をくれた。


「ほいじゃーな!ありがとう!また明日!」手を振って別れた。てか、ありがとう?なんで歌を歌ってありがとう?オレがありがとうと思ったのっていつだろ?あーそうだそうだ。大好きな歌手のライブにいってボーカルの人が「きてくれてありがとう!」の時に、いや、こちらこそありがとう!だよって思った時だ。


そんな時のありがとうに近いなぁ今のは。なんか、歌手みたいじゃねぇかよバカやろー。と電車でニヤニヤしてるところを母ちゃんに見られてしまった。


9月。文化祭の時期になった。キンコンカンコーン。ガラガラガラ、バタンッ!えーそろそろ文化祭が近くなった!そろそろやりたいこと決めてくれ!ドア閉めるのが強いのがウチの担任「筋」の特徴だ。


やりたいことあるやついるか?はい!!叩!なんだ!「前夜祭でバンドやらしてください!」なにー?バンドだと?そんなふざけたことウチの学校が許すと思ってんのか?生徒は凍りついて一瞬沈み帰ったと、ドォぉん!教卓を平手で叩くとパンッってのが普通だけど、ウチの担任はドォぉん!だ。そして「いいに決まってるだろ!」なんなの。


こいつ。よーし、じゃーバンド決っ、、ちょっと待った!!オレもバンドやりてー!わたしも!候補が3組に変わった。「わかった。他に出たいものはいるか?・・・よし、実はな前夜祭出場可能なのは各クラス1組だけなんだ。つまり、この3組でバンド選手権を開催する。来週月曜放課後16時!体育館で行う!いいな!」はい!珍しく元気な挨拶が出た。授業終了後、叩と打ち合わせするがてらファミレスへ行った。


「ピンポーン。ドリンクバーとドリアとステーキで。てか、どうしようか。おれ何もできないんだよね。」


えー!!お前何もできないのにバンドやりたいって言ったの?「そうそう。だって、オレには音がいるからさ何とかなるかなと思って。」そうなのかな?でも、何かしらやらないと、、、じゃードラムやれば?「ドラム?あの叩くやつ?いいよ。まー今の時代インターネットで見ればわかることもあるしやってみるよ。ボーカルは音だから、あとギターとベースが必要だよな。」


確かに。ギターとベースはどうしようか?そういえば、クラスにいなかったけ?名前がわからない。


「塁のことか?あーそういえばアイツ。ガチンコでやってるみたいよ。ギターってバンドの中では花形っていわれるポジションで雰囲気とか操る人だよな。ちょっと連絡してくみるよ。」


トゥルルルル、トゥルルルル、ガチャあーもしもし。オレオレ叩。お前ギターできるだろ?・・・だよな。今度さ文化祭でバンドやるじゃん。ギターお前に決定な。んじゃ。ガチャ。・・決まった。」


いやいやいやいや、今の聞いてる感じ、ギターしてるよね?の質問だけだったよね。お前何なの。。


翌日、叩と一緒に塁に話してみると「やるなんていってねぇよ。お前が勝手に決めたんだろ。」案の定断られたが今度は自分からお願いした。


少しだけでいいんだ。お願い。「音に言われちゃ、なんか断りづらい。昨日、叩に聞いたけどボーカルはお前なんだろ?お前そんな歌えんのか?」フッフッフッフッ「何笑ってんだよ叩」「お前ビビるぞ。」「ん?」放課後カラオケに行って音は歌った。


聴いた塁は叩と目を合わせて、口を大きく開けていた。歌い終わって2人を見ると前回と同じく「おっおっおっお前!!お前!!!」とびっくりした顔で指を差して、アンコールしてきた。そして、前回同様叩から飴をもらった「喉大事にしろよ。音。んで、塁!オメェどうする、、、って、泣いてんじゃないかよ。」


こういうやつをずっと探してたんだ。


オレだってギターだけで食っていいけると思ってない。やっぱり、バンドデビューしてライブしてという王道で行きたいんだ。でも、ずっと1人だったけど、今こうやって出会えた。やろう!バンド!」こうして3人で笑って解散した。


あとはベースだな。誰かいないか?塁。あそこでお菓子食べてるやついるだろ。あいつギターできるみたいよ。本当か?なんかおとなしそうというか、ほんわかしてる感じの見た目なのに?まーギターを持つと人が変わるってやつだ。じゃーちょっと声かけてみっ、、、てもう音が向かってる!喋るのは初めてだね。僕は音よろしく。おれ引。好きな食べ物はお菓子よろしく。


お菓子美味しいもんね。僕はチョコバットが好き。「おれ、それだけは好きくない。チョコだけでいい。パンだけでいい。でも、チョココロネのようにチョコを包むのは好きだ。」


・・・あのさ、今度文化祭やるんだけどギターやってくれない?「いやだ。でも、お菓子くれたらいいよ。おれの好きなお菓子持ってきて。」それってなんなの?「んー日によって違うからわからない。まーそういうことで。バクバクバクバク。」叩と塁の元に帰って説明した。


「お菓子?しかもわからん?何だ!アイツ!!」まぁーまぁ叩落ち着いて。とりあえず今日は放課後にお菓子買おう。


引はおそらく相当のお菓子好きだ。コンビニでは手に入らないようなマニアックなのがおそらくいいのではないかと3人で話し合った結果、学校近くの駄菓子屋に来た。


すいません!


「はい〜よ。ゲーッ。」駄菓子屋のおばちゃん、通称オバハン、よくゲップしてる。


とりあえず3人で好きなものを買った。叩はビッグカツ。塁はブタメン。音はチューチューゼリー。そして、3人は引のことを忘れてやった〜麺やら、フィリックスガムなど、駄菓子屋を楽しんだ。いかんいかん。こんなことしてる場合じゃない!


「引の好きそうなお菓子を買うんだろ。」そうだった!じゃーこれが1番手っ取り早い、オバハン!この店で人気の駄菓子3つちょうだい!はいよー。翌日、引に駄菓子を渡すことに。引おはよ!お菓子買ってきたから、好きなもの入ってたらギター頼むよ。


「わかった。それではお菓子を机の上に置いてくれ」お菓子をあげるだけなのに謎の緊張感だ。まずは、ビッグカツ。違う。それじゃーブタメン!違う。チューチューゼリー!違う。それから10個ぐらい出したけど全部ダメだった。なんだよー。駄菓子じゃないのか。チェ。ばさっ「誰も駄菓子とは言ってない。これじゃギターはできないなぁぁぁ!!塁それは!」


えっ?薄皮チョココロネだけど。おーそれそれ!えー!そういえば、以前話した時包んだやつが好きみたいなこと言ってたな。


それ早く言えよな音。


「お菓子くれてありがとう。約束通りギターやるぞ。」


どんな組み方なのこれ。。まぁーとりあえず、これでバンド選手権は参加できそうだな。


今日から練習しよう。音楽室へ行くことに。塁と引はマイギターを持参し、叩は学校にあるドラムを使った。未経験の叩と僕はギターを持った2人の顔の変化に驚いた。ボクサーがバンテージをはめた瞬間変わるみたいな感じ。今日は曲を選ぶことにした。あんまり学園祭のイメージがわかなかったので、インターネットで検索してその中でも叩は初めてなので「ドラム 初心者 学園祭」で検索して曲を決めた。


「MONGOL800 小さな恋のうた」にすることに決定。4人一致で何か色っぽいからという理由だった。叩は頑張る!と意気込んで塁に教わっていた。かくいう自分もボーカルだが、やはり素人なので、いいものにするために引に教えてもらうことに。(お菓子をくれたら教えてやる。というので仕方なくあげた)そして、週末も音楽スタジオをレンタルして合わせの練習し1週間経った。いよいよ明日。前夜祭に出場するためのバンド選手権。


叩は初めたてで中々苦戦していたができるようになっていたと塁「じゃー1回通しでやっていこうか。」♪〜〜、、、もう大丈夫なんじゃないかと思うほど、息の合ったものが仕上がった。


「じゃー今度は客目線で映像を撮ってみよう。」♪ーーーー「ん!オッケー、今日はこれで終わりにしよう!飯いこうぜ!」不思議なぐらいうまくいった。前夜祭当日3組のバンドメンバーが揃ったが、自分らが本気すぎていたのか、残りの2組のうち1組はバックれて、残りの1組はバンドというか歌を歌いたいって感じの1人だった。


「ゴォホォん。えーそれではバンド選手権開催する。まずはポンタ!!」ポンタくんは1人でバラード歌った。パチパチパチ。別に下手くそとかじゃない。でも、カラオケなんじゃないかと「じゃーオメェら!」準備しながら小さな声で叩が話しかけてきた「おい。音。なんか自分達だけ、ガチすぎて恥ずかしいな?なんかポンタの方が1人で来て堂々と歌っていてよぉ。かっこよかったしさ。」確かにそうだ。1対4で試合しているようなもんだ。


そもそもポンタはなぜバンド選手権なのに1人で来たんだ。。。。。まーあいつはちょっと変わったところがあるから仕方ないか。


「ジャーーーん!」塁が音を鳴らして一言!「まーオレらの想定した選手権ではなかったが、せっかくだし練習してきたとこと見せよう!」おーー!(3人同時)改めて1週間と短い活動だが、一緒に練習していてわかった。リーダーは塁だ。見た目チャラいけど意外と真面目。「終わったらお菓子くれ。」「だまれ」「はーい」そして、全員の準備が整ったことを目を見て確認したところで始めることに。先生とポンタの2人だけで少し緊張するけど、やるしかない。♪ーーーーー、曲が終わり先生とポンタを見ると、5秒間ぐらい沈黙があってから拍手があった。


「よくやった。おめぇらアーティストでもやれば?はっはっはっ。」最後にポンタが言った「仕方ねぇ。今回は譲ってやる。」4人で顔を合わせて、お?おーありがとう。こうして文化祭の前夜祭に出場することが決定した。


キンコンカンコーン、「よーし練習だー!」いざバンドを披露するとなると、やる気のない授業とは違い自然と体が動くいて叩は活動的に見える。最近は土日は音楽スタジオを借りて、平日の放課後は音楽室を貸してもらい平日は3〜4時間、土日は4〜5時間ほど練習する。前夜祭でもらった時間は3学年2クラスのため1クラス10分の計60分になるため片付けなど含めて1曲になる予定。曲はMr.Childrenのtomorrow never knowsに決定した。


理由は塁がミスチル好きだからなんでもそうだが、見せ物はとても派手に見えるが、実際の音楽の練習というのは地道で、楽しみといえば、少し上手くなったとかの、ちょっとした変化に嬉しさを覚えたり、これを見せて観客がどういう反応をするのか?ということがモチベーションになってる。


今回初めてお会いは経験者の塁が教えてくれているのでなんとかできてる。普通なら音楽教室に通って習わないといけない技術を僕らは無料で教わってる。こんなことは社会に出たらほとんどない。


残り2週間。アクシデントが起きた、朝起きると声が出なくなってしまったのだ。全く出ないというよりウィスパーボイスぐらいだが、歌い手としては致命傷であることは間違いない。バンドメンバーにもメッセージでやり取りをして、「飴舐めろ」とか「まー治るよ」とか「焦んな」とメッセージが来たが、本当に申し訳ない気持ちがある。気を紛らわすために大好きなアニメを見続けて時間を潰そうとしたが、バンドのことが頭の片隅にあるのでアニメの内容なんて入ってこない。


そして、紛らわそうとすればするほど紛れないことに気づいて諦めることにした。布団の上で横になりながら不安と向き合うと昔のことから今のことまで思い出した。


考えてみると今までこんな緊張感や不安感というものは初めてだ。ずっといじめられていて自分に対してどこか諦めていたことから、自分がボーカルという責任のある立場にあるというのはなんとも不思議なものだった。


今はこうしてバンドメンバーと楽しく過ごせることがとても貴重な経験してるなと思うと、なんだか嬉しくなった。だからこそ、早く治そう。そう決意すると安心したのか睡魔が襲ってきた。


前夜祭まで残り1週間。喉の調子はよくならなかった。このことは担任の先生とも話していてバンド4人集まって5人で放課後話し合いをしていた。


「音、声出ないのか。んー。オレは個人的には聞きたいぞ。でも、こうなったらポンタに任せる可能性も出てくるな。それでもいいか?」「ボーカルだけを変えるってこと?それなら出ない。オレたちのボーカルは音だから。」塁が言うと2人ともうなづいた。僕は泣きそうになった。


「それはそうだよな。わかった。じゃー1日前まで待つ。ここで無理させて音の喉に支障が出る方がマズイと先生は思うから理解できるな?お前ら。」解散後、3人は練習に行き、安静第一とメンバーに言われてるので帰宅しようとすると「音!ほらよ!これで元気出せ!待ってるからよ。」と飴をもらった。


ありがとう!とは言わず、自然な笑顔で返事をした。何かできることはないかと思っていたのだが、何をすればいいかわからずここ最近、喉をやられてからは悶々としていたが、メンバーから飴をもらってから不思議と安心感があり、前向きに声が出ないことに向き合うことができた。声の出ない理由はなんなのかとネットで調べると、喉に負担かけすぎて、お腹を使えてない。というのが見つかった。


どこかで聞いたことのある腹から声を出すというのをすれば喉への負担を減らせるかもしれない。と思い、腹筋を鍛えることにした。腹筋を鍛えた後は、声を出さずに腹から声を出すイメトレをして本番に備えた。


前日。喉の調子はベストではないが、徐々によくなってきたが腹筋の成果もあってか、声が楽に大きく出るようになった。メンバーにまず会いに行き大丈夫とのことを伝え、先生からもオッケーをもらいなんとか明日の前夜祭に出る許可は得ることができた。


そして放課後。最終調整をして4人で合わせることに。互いにできることをやっていたから、レベルアップしていた、特に叩のドラムは上手くなりすぎていてびっくりした。そして最終調整は終わると明日に向けて話していた。


「ふーよかったー。いやーオレら無理だと思ってたんだよ。それに無理させるのもどうかと思っていたし。とりあえずよかったな音。」「意外と叩が1番心配してたな。」「ほらお菓子やるよ。治った祝いだ。」あっありがとう。みんな心配かけてごめん!明日頑張ろう!ジュースで乾杯して明日の本番に備えた。


ついに当日!僕らの前夜祭は夜18時からなので、それまでは文化祭を楽しむことに。そこでいじめられっ子の荒が現れた「あのお前が前夜祭でバンドやるんだって?へー笑えるわ。じゃーオレは笑いに行くために見に行ってやるよ!やっはっはっはっ。」うん。ありがとう!楽しみにしてて!それじゃ!「えっ。ちょっと待、、、なんだアイツ。行こうぜお前ら。」荒には昔からいじめられてきた。


でも、なんだかわからないけど小さく感じた。大切なメンバーがいるからか、すごく小さく見えた、少なからず以前とは違う。「おーい音!そんなとこでなにしてんだ?ダンス部の可愛い先輩が出るから、体育館に見に行こうぜ!」えっ笑。叩!そんなの大きい声で言ったら、恥ずかしいだろ?笑。


まーでも、わかった!今行く!「オメェも声デカいだろ!」体育館に到着。僕は可愛い先輩のことを知らなかったので、強制的に連れてこられたみたいなものだったけど、男だから、そんな可愛い先輩がいるっていったら行くしかない。そして着席から数分後。


「ほらほら!あの真ん中!可愛いだろ?」えっどれどれどーれ!!可愛い。音は完全に恋に落ちた。いわゆる一目惚れだ。そこからは、真剣にダンス、いや先輩を見て体育館を出た。


「音、可愛かったろ?あの人はな学校のマドンナ的存在なんだぜ。いやーいいなぁ、あんな人と付き合ったら、いや、最高だな。それにさ、今夜の前夜祭は自由参加だけど、きっと、あの先輩も見にくるから、もしかしたら大チャンスかもよ。。。。なんてな笑。あはっはっはっ。」なんだその物語は?まーいいか。そういば塁と引はどこにいったの?


「あーアイツらは、、、」場面は教室に変わった。なんだなんだ。何が起こってるん、、、だ!「私が忍者だ!やーい!そこのお菓子泥棒!今退治してやる!」「なにー!お菓子は誰にも譲らん!」塁と引は欠員の関係で代理で文化祭の劇に出場していた。「アイツら何してんだよ。塁は忍者ぁ??引はお菓子泥棒って今と変わらないじゃねぇか??あはっはっはっ。」終わった後に叩と大笑いした。


文化祭が終了し、いよいよ前夜祭の準備になった。前日にリハーサルを重ねていたので段取りなどは把握している。塁と引は経験者だから落ち着いているけど、叩と僕は緊張の度が過ぎていた。


「叩!珍しいじゃん緊張してるなんて。俺も初めは緊張したけど、なんとかできた。初めてだから仕方ない。音も安心しろ緊張するのは仕方ねぇから。」「まぁーまぁー2人ともハイチュウやるからミスるなよ。」「うるせぇ!緊張なんて全くしてねぇ!なぁ音!」まぁねぇ。緊張しすぎて大きい声出すつもりが全く声が出なくて、みんなに笑われた。


前夜祭が始まった。僕らの出番はビンゴゲームが終わってからなので、ビンゴゲームは参加せず体育館裏でスタンバイをした。順番はくじ引きでまさかの最後に。「あっあっマイクのテスト中ー、あっあっマイクのテスト中、それでは前夜祭のクラス出し物を始めます!それでは1組目どうぞ!


「どうもキャンディーズでーす!えー今夜は前夜祭ということで、お後がよろしいようで。今始まったばっかりだよ!いいツッコミだね。飴ちゃんあげる。いらねぇよ(怒)」漫才が始まった。僕らはバンドだが、各々色んな出し物を用意しているようだ。


後から、先輩に聞いたのだが競争はないものの実際どこが良かったなどの学校内での話題にはなるので変な出し物をするとクラスの人気者だった人が急にイジメられることになったりもするほど影響力は大きいので気をつけろよ。とのことだった。これはこれで初めての経験だったのでやったもののみ知るというやつだ。しかし、、、


そんなリスクと引き換えに人気者になる可能性があるのだ。確かに先日のリハーサルのメンバーを見てみるといかにも人気者になりたくてやっているような人がいるような気もする。


そう考えると自分はなぜバンドなんかを人前で発表しようと思ったのだろうと振り返ってみると、叩とカラオケに行って、それからすごい喜んでもらえて、僕はずっといじめられっ子で生きることすら諦めてたのに、歌を歌って喜んでもらって、初めて自分を肯定できたのが歌を歌ったことだったからだ。


リハーサルの先輩に人気者になれるぜ!という風に言われてピンとこなかったのは、喜んでもらえたらそれでいい。という考えだったからなのだと、本番前に気づいた。そして、ついに5番目が終わり、出番が来た。4人は目を合わすと自然と肩を組んでリーダー塁が一言。


「練習してきたことやりきろう」おう!!!!


舞台裏なので小さな声で声を合わせて体育館の舞台に上がった。この時はあまり緊張しなかった。続いては1年A組によるバンドになります。曲はMr.Childrenのtomorrow never knowsです。1,2,1234!!〜〜〜♪


曲が終わった。


聴いてくれた人の顔色を伺うように辺りを見渡すと「ヒューヒュー!最高!お前らプロ顔負けだろ!」「よかったぞ!」「感動した!」「文化祭のレベルではない!」「ねぇーあのボーカルの子ちょっと可愛くない?あとで声かけに行こうよ。えっ恥ずかしい!」大きな拍手が湧き上がった。そして、いじめっ子の荒が悔しそうにしているところが見えて何とも言えなかった。


「せーの、ありがとうございました!」最後に練習通り全員での一礼をしたまま幕は閉じた。終わった後、4人で抱き合って飛び跳ねた。「お前はやっぱ最高だよ。音。」いやいやみんなのおかげだよ。


僕1人じゃ何もできなかった。ずっといじめられっ子だったし、何やっても上手くいかなくて、この前もやっと楽しいことに出会えたと思ったのに、本番前に声出なくなって本当に苦しかったけど、みんなの顔を思い出して踏みとどまることができたんだ。


グスッ。だから、なんて言えばいいんだろう。。。ありがどゔ〜「バガやろゔぉ〜俺だぢだってで、心配じだんだぞぉ〜」あ"〜〜〜ごめん〜〜叩〜


「何泣いてんだ!片付けた後にしろ!」「何だとぉ〜!オメェー人が感動しているところを台無しにしやがって、なぁー引?」お名前なんて言うんですか?「引です。」キャ〜!!これビスケットです。よかったら食べてください。モグモグモグ、お菓子ありがとう。


すぐ食べてくれたし、食べ方可愛い!!あとで写真撮ってくれませんか?いいよ。お菓子くれるなら。「片付けだろ!!引!!」と叩がモテてることに対してなのか、無視されたことになのかわからないが怒りながら引の首後ろのシャツを鷲掴みして引っ張ってステージの機材のある場所に戻した。こうして人生初めてのライブは終わった。


片付け後に体育館舞台裏から出ようとすると、自分たちを待ってくれてる人がいた。「すみません!写真お願いします!」「ギターかっこよかったです!」「サインお願いします!」「歌声感動しました!」こんなに囲まれたことは初めてだったので全部対応して30分はかかった。


「おい音!オレたち人気者みたいじゃねぇか。これどういうことだ。」「こんな反響あると思わなかった。サインしっかり考えておくんだったー!(塁)」「お菓子こんなにもらえんの〜!うわー!バンドっていいなぁ。」僕はただただ頭が真っ白になった。歌を歌っただけなのに。


こんなにも人が寄ってくる。嬉しい気持ちはあるが、同時に怖さもあった。いじめられっ子で心を塞いで生きてきた、だからこそ目の前にたくさんの人たちがいる、この景色は当たり前ではないと思えた。


そして、かるい騒動が終わり、メンバー同士で顔を見合わすと疲れた印象を受けた。「あ〜なんか有名人の気持ちが少しだけわかっだ気がする。大変なんだなぁ。とりあえずみんな飯行こう!」予想外なこともあったけど人生で初めての充実感だった。


それから、バンドのメンバー4人は学校に行っても話しかけられることが多くなった。キンコンカンコーンはい授業終わり!休み時間でーす!「おいおい、なんか最近人気ありすぎて大変だぞ。」「何が大変なんだよ?」「引を見てみろ。アイツお菓子好きということが知れ渡って、ほら!あっち!休み時間中になると他のクラスからお菓子をもってくる人がたくさんもらって、最近ちょっと太ってきたねぇか。」


ほんとだ、、「アイツいーなー。おい!引!オレにもお菓子ちょっとくらいくれよ!」「ならん。僕にとってお菓子をあげることは邪道なんだ。」「この前お菓子あげたからいいじゃぁん。」「ダメだ。お菓子は誰にもあげない。」引ってお菓子のことになると人が変わるよな。目つき鋭くなるし。キンコンカンコーン、席に戻り前夜祭を振り返った。ガラガラ、キリツ!キョウツケ!レイ!お願いしまーす。着席!


結果的にはやってよかった。メンバーのちょっとした側面も見ることができたのと、初めて学校に居場所ができた感じがする。いじめられてなかったら、小学生からこんな感じになってたのかなぁ。いや、もしかしたら気の持ちようなのかも?まだわからないけど。これを知ってたら早いうちからバンドでも何でもやっておけばよかった。


いやこのメンバーのおかげだ。初めて肯定してくれた叩から始まり、あそこで居場所を与えてもらった感じがする。そこから塁、引とメンバーが増えて、声が出ないというアクシデントがあり、それを乗り越えられたのは間違いなくメンバーの存在というか、その居場所を手放すこと、孤独に対しての恐怖心を強く知っていたから自分で掴み取ったんだ。


だから、居場所は与えられるものではなく、掴み取るものなんだ。自分にとっての前夜祭は人生における初めての成功体験だった。


それとは真逆にどん底に突き落とされた荒がいた。「お前昔から音のこといじめていたらしいじゃん。」「ヤバ。」「しかも、高校入ってからすぐに殴ってたよね?」「謝ったのか」「人としてやばいでしょ。」


明らかにおかしかったので止めに行くことにした。みんなやめてよ。これは荒君と僕の問題なんだから。みんなは関係ないだろ。別に謝っても欲しくないし、確かにいじめられていて、君のせいにしていた自分も悪いんだ。


「随分と喋るようになったじゃねぇか、音。お前の存在が昔から気に食わなかった。だからいじめた。謝る気はない。」別にいいよ。ただ、僕は僕のやりたいようにやるし、今ここへきたのも僕のせいで荒が傷ついてるのを見たくなかったから来ただけだから。


僕とは真逆に荒は1人ぼっちになっていた。ざまぁ見ろとは思えなかった。純粋に可哀想に見えた。かといって僕から手を差し伸べることをしたら彼が傷つくと思ったので、それからちょっかいをかけられることも、話すこともなくなった。


そして、その後3年連続で文化祭の前夜祭では、バンドをやった。1回目から人気を集め、2回目は待ってました!と言わんばかりの感じに。そして、3回目は寂しさゆえに泣く人も。恒例となった体育館裏から人が集まるのは、初回とは違い2回目3回目は慣れてきた。もちろん、当たり前ではない状況であるのは知ってる。


塁から真剣な話━━━━━


学生最後の文化祭を終えた僕らは、いつも通り一緒に帰宅し、ファミレスに行った。すみません!デミグラスハンバーグとポテトください。引は?」「フレンチトーストバニラアイス添え」「好きだなぁ」まぁな」いつも通りのやりとりをしているからわかる。今日は塁が変だった。異様な緊張感があったのを察した空気を読めない叩らしく質問するとこう言った。「そっか変だったか。やっぱバレるよな。。。あのさ、実は、みんなに伝えたいことがある。この4人でプロとして活動したい。文化祭のある時は、まだ来年もあるし、再来年もあると思ってたけど、真面目にプロとして、仕事して、音楽で飯を食っていきたい。と思ってる。みんなはどうだ?」


じゃー「せーの」で3に同時に「やる」か「やらない」言おう。


「せーの」


やる。


いやー実はオレもやってみたいと思っていたんだ。でも、ドラムはまだまだのレベルで現実味がなくて、よくわからなかったから、さすがに言えなかった。でも、お前が言ってくれるならやるしかないよな。やっぱりリーダーは塁だ。


「叩。。。照れるじゃねぇか。」


オイラは卒業後、お菓子の製品開発に勤めようと考えてたんだ。でも、本当は作るよりも食べる方が好きだから、文化祭後のお菓子は格別に美味いことを知ってからは続けたいなとは思ってたからそう言ってもらえて嬉しいよ。


「お前は結局、お菓子なのね、、まぁいいけど」


僕は昔から自分に自信がないというか、音楽をやるまでは本当にいじめられっ子で、何もできないやつだとおもっていたけど、やることはできるし、なによりこのメンバーで活動はし続けたいとおもってたから、言ってもらってうれしいよ。ありがとう。塁。


昔からギターをやってたからわかるのもあるが、ギターの先生が言ってた。バンド組むなら、歌声だけじゃなくて、見た目も大事だ、しかし、それ以上に大事なのは、人を惹きつける何かがあるボーカルが必要だと、ギターの先生が言ってたんだ。それがお前だ、音!初めて歌声を聴いてから、お前の声はもちろん、俺たちメンバーはお前のなんかよくわからないけど、惚れてるんだ。叩と引はうなづいた。「よーし、やるか!じゃーまず名前から決めよう!」名前かぁ。1人づつ言ってこう。


叩、大魔王バンバンいや、ドラクエか!引、チョコバンド好きなものにバンド足しただけじゃん!塁、涙腺崩壊お前どんな音楽に触れてきたんだ!音は?それぞれの頭文字をとってTIROっていうのはどう?なんか可愛いし覚えやすくない?


名前はTIROに決定した。


それじゃー根性つけるために路上ライブだ!


えー路上ライブやんの!緊張するな。


んーもしかしたら、外国人が通ってきて外国のお菓子をもらえるかもしれない!


学校の時とは違って本当に共通点のない人たちだらけのところで歌うの緊張するな。。


じゃー明日授業終わりやるぞ。


アーティスト通りで。


路上ライブ━━━━━


キンコンカンコーン!はい!授業終わります!


うわーチャイムなって欲しくなかった。そのぐらい緊張している。もし誰も止まってくれなかったらどうしよう。下手くそ。とか言われたら。あー、、


「何くらい顔してんだ!音!なんか言ってきた奴がいたら俺がぶん殴りにいくからお前はいつも通りに歌えばいいんだ。」叩


「ぶん殴るのはよくないぞ叩。胸ぐら掴んでお前の怪力で電車の改札まで送り届けるぐらいにしてやれ。」塁


いや、それの方がなんか怖いぞ。ちょっと気が晴れたよ。ありがとう。それより、引。初めてかなぁ?その寝袋みたいに大きい袋はなんだ?


「ふふふ。これはな、もしも海外の人の巨大お菓子が来た時に備えての袋だ。」


「そんなお菓子見たことねぇよ!んじゃ、とりあえず、アーティスト通りいくか!」塁


テクテクテク、ドサッ


夕方の5時。帰宅する時を狙ってライブをしようと計画していた。土日の昼間も考えたが「塁いわく土日のライブは家族連れが多いし、ちょっとうるさく感じるだろ?だから、まずは平日の夕方を攻めよう。」ということだった。


ギター、ドラム、機材の準備が終わった。


「じゃー音。ビデオカメラボタン押してくれ!一応、これを動画サイトにもアップするから、そこんとこよろしく!じゃーいくぞ!」塁


おー!


〜〜〜〜♪


始まってチラッと見てくれる人が何人か、そして帰宅中の2人の女子高生が立ち止まった。


一応今日は4曲やるのでよかったら聞いてってくだい!お願いします!


〜〜〜〜♪


4曲が無事に終了し、お辞儀をして初の路上ライブは終わった。ざっと20人ぐらい止まって終わって拍手してくれた。


すみませーん、高校生ですか?


はい、そうです!


うわぁー、素敵な音楽でした!何年生ですか?


ありがとうございます!3年です。


同じです!私は大学受験に向けて勉強中ですけど、こうやって同い年が音楽で頑張っているのをみると励みになります。私はここよく通るので、また路上ライブするなら見に来ますね。


ありがとうございます!


そうか、大学受験や、就職する人、いろんな人がいるよな。音楽ってそれでいうと元気を与える職業なんだなぁ。なんかカッケーな。叩


何ぼやいてんだよ。さぁ、帰るぞ。塁


おい引!どうした暗い顔して!


お菓子もらえなかった。。くそーーー!!!ササササッ。パタンッ!カチッ!よし帰宅準備完了!じゃー先帰るね!また明日!!!


あまりの早さに声すら出なかった。引大丈夫かな。バンドやめたいとか言わないかな。


また明日!って言ってたし大丈夫なんじゃない。予想はできないけど。。。とにかく、俺たちも帰ろう!


そして、翌日。再び路上ライブをしたが、人数は昨日より少し少ないぐらい。次の日は金曜日ということもあったからか、たくさんの人が止まってくれた。それでも30〜40人ぐらい。メンバーは悩んでいた。


んーなかなか集まらないなぁ。なんでだ?そもそも、曜日の問題なのかな?


んーオイラが思うに、曲の選択肢なんじゃないかな?知ってる曲を歌ってたら少し止まると思うんだよ。それであまりにも聞きたくないと思ったら止まらないだろ。でも、うちのボーカル音がそんなわけないと思うからさ、、つまり、年代ごとに曲を変えてみるのはどう?


確かに。


おい、、、お前本当に引なのか?!スッゲーじゃねぇ〜か。


でも、ここら辺歩いてるのって40〜60代の人じゃない?だから、その世代の人が絶対聞いてる曲を中心にライブ活動してみない?例えば、5曲やるだろ。1〜3は40〜60代4、5は今流行りの曲とか。


そうだね、そうしたら1週間練習して、その後に路上ライブやるか。


そうして、1週間が経って路上ライブ当日。


今までとは違う層人が止まってくれた。それに、以前来てくれた女子高生が立ち止まってくれたことによって、ざっと、200人は集まった。


引のいう通りだったな。すげーな!


まぁな。言いつつと照れ笑いしてた。こうして、僕らは路上ライブのコツを掴み、土日は場所を変えて若い人が集まりそうなところに行ったり、社会人の人が多そうなところでは、社会人向け ソングなどで検索して、その人たちが聴きそうな曲を選曲して路上ライブをしていると、1000人は集まっていた。途中、人が集まりすぎて、警察に止められたこともあったが今後も路上ライブは続ける方向性だ。


そして、


音たちには見えてなかったが、実は通りすがりの荒が1人で歩いていた。「ちっ。うるせーな路上ライブとか古いんだよ。今はネットだろ。ネット。あれ?、、、音じゃねぇか。」遠くから見てたけど、音が真剣に、でも、なんだか楽しそうに、歌ってる顔はデカく見え、一瞬立ち止まったが、すぐにその場を去った。


歌ってる横らへんにTIROと書いてある紙を見つけたので、検索してみるとたくさん動画が上がっていた。「こんなに路上ライブやってるのかよ。あいつ。知らなかった。」


動画のコメント欄を見ると「将来有望!」「売れて欲しいけど、売れて欲しくない」「事務所さん有望株ここにいますよ↓」すでにファンを抱え、コメントは肯定的なもので溢れていた。なんだか、むしゃくしゃしてきてコメントを書いた。「こいつ昔いじめられっ子だったやつでしょ。いじめられっ子が売れるわけない。そんな世の中甘くねぇんだよ。さっさと辞めちまえ。」と書いて・・・


送信するのをやめた。「おれ、みっともねぇな」心が虚しくなって涙が出た。なんで、、、なんで、あんなやつをいじめたんだ。もし、アイツがバンド活動やってなかったら、きっといじめ続けていた。オレってみっともねぇなぁ。


荒は泣を隠しながら帰った。


学校で話題に━━━━━


学校に到着すると突然「おっ!TIROのボーカルじゃん。サインちょうだい!」そう言われて困惑した。そうだけど、なんで急に?えっ!お前知らないのかよ?今めちゃくちゃバズってるぞ!お前らの路上ライブ!文化祭からずっと見てた奴がネットでこんなに注目を浴びるなんて信じられねぇよ。夢見させてもらってる気分だ。


ガラガラ。塁が到着した。「おーTIROの塁じゃん。サインくれ!」塁も困惑していた。サイン?そんなのまだねぇよ。それより音、引、叩!あとで話がある。


学生A「えっなに?なに?もしかして、スカウトとか?」


そうだ。事務所が決まった!


えーーー!!!(クラス中)


朝のホームルーム前に胴上げが始まろうとすると、ボン!叩が机を叩いた。「まだだ!まだCDデビューしてねぇ!!」


「まぁーそう言うなって照れ屋」「そうそう。」


「おい!やめろ!お前ら!」


わーしょい!わーしょい!わーしょい!


バンドメンバー4人の胴上げをしてると担任の筋が来た。「お前ら朝から元気だなぁ、席つけー。ホームルームやるぞー。」一旦騒ぎは収まり。放課後に塁からメンバーへ話すことになった。放課後、誰もいない教室で4人で集まった。


「実は文化祭のライブを録画していた生徒から、もらって動画サイトに投稿していたんだ。お前らに言わなかったのは、特に理由がない。そもそも、再生されるとも思ってなかったし、少し再生されてから言おうと思っていた。」


そうなのか。まーいいけど、それで本当に有名になっちゃったってわけだ?


そうだ。それで今回の話したいことなんだけど、事務所に入ってデビューしないかって話だ。それの事務所はあの有名なKIKUだ。


えー聞いたことある!オレの好きな歌手もいる!


でも、今の時代って再生回数とかでなんとかなるみたいなのってあると思うんだけど、事務所入る意味ってなにがあるんだ?


俺もその辺りは考えたことがあるが、簡単にいうと、音楽活動に専念できるんじゃないかと思う。事務所は所属しているタレントの管理、例えば、CD発売するってなった時、番組出させてくれませんか?とかの営業活動や、宣伝これどう?とか、マネージャーによって違うだろうけど、音楽以外のビジネス的な部分を手伝ってくれるみたいなイメージだ。俺もこうやってデビューすることは初めてだし、何より事務所に所属してやってみないとわからないことがたくさんあるだろうと思ってる。


やってみないか?って話なんだけど、実は話したいことはそれじゃない。これから質問する。その答え次第では、バンドはやめるかもしれない。


えっ!!!なんで?


まだ若いからわからないけど、そんなに簡単な世界じゃない。うまくいっている時はどうやっても楽しいさ。でも、うまくいかないことの方が多いはずだ。そんな時に支えとなるのは、なんでやるかだ。文化祭はキッカケに過ぎない。ここからは勝負になると思うんだ。だから、リーダーとして聞いておきたい。なぜバンド活動する?


ちなみに俺はバンドのギターリストとしてデビューするのが夢だった。いいメンバー見つけたらデビューしようと思っていた。そこにこのメンバーが集まったから、何ていうのかな。昔からの夢だったから俺は活動する。


じゃーお前らのも聞かせてくれ。


僕は誰かの支えになれればいいなぁと思ってる。不登校になった時、家で音楽をずっと聞いていた。今度は自分の歌で誰かの支えになれるからだ。


オレは音とカラオケいって、今ではドラムが楽しいのはあるけど、お前らといるとおもしろいからだ。楽しけばいいや。


オイラはお菓子を食べたい。でも、美味しいお菓子より、美味しくお菓子を食べることの方が重要なんだって文化祭で気づいたんだ。美味しくお菓子を食べるために音楽をしたい。


どうなんだ塁。


よし!なんか、人それぞれあってよかった。答えは人それぞれだけど、好きでもないのにやってたらお互い辛くなるだけだろ。だから、最終確認みたいな形で聞いた。


なんだ、そんなことかよ。でも、確かに大事なことだな。事務所の人に連絡するから、返答が来たら、また連絡する。


じゃー今日はこれで解散!


デビュー ━━━━━


翌週。TIROへ事務所に来るようにと塁から報告があったので都心部にある事務所KIKUへ向かうことになった。


お昼の13時に駅で待ち合わせすることになり、僕は1番初めについた。正直、朝から緊張が止まらず、今日は寒いのもあるからか、ブルブルと震えが止まらない。


「よっ!」3人同じ電車みたいだったようで、合流した。


「音顔色悪いぞ?もしかして緊張してんのか?」あーヤバい。どうしよう。「はっはっはっ。素直だなー。大丈夫。みんな緊張してるよ。」「途中でお菓子買っていいか?」お菓子大好き引は緊張してなさそうだったが、叩と塁は声が大きかったり、ずっと笑ってたり、ちょっと様子がおかしかった。


10分ぐらい歩くと事務所に到着した。「スッゲー!」と言いながら4人ともビルを見上げた。有名な事務所ということもあり、まずデカさに圧倒された。


よし。みんな行こう。


カタカタ、ウィーン。まず受付の人に要件を言えとのことだったので伝えると、「13時30分会議のTIRO様ですね。少々お待ちください。今確認します。、、、はい!確認取れました。突き当たり左のエレベーターで15階へどうぞ!」


わかりました!スッゲー綺麗な人だな。なんか、オシャレな人多くないここ。確かに。海外のお菓子とか売ってそうだな。


15階到着。


すげー!TIRO様って書いてある。なんか、嬉しいな。


そうしたら入ろうか。コンコン。失礼します!


誰もいない!どうする塁?座って待ってる?


「いや、立って待ってよう。あと、数分だし。」


13時30分になると、エレベーターが到着した。


「ふー。ギリギリだ。えーっと、、、おー!もしかして君たちがTIROかな?付さん。」「はい。こちらがバンドのTIRO様です。社長。」


背筋が自然とピンとした。すかさず挨拶をした。「TIROのリーダー塁と言います。よろしくお願いします!」よろしくお願いします!(3人)


「KIKU事務所の代表取締役の上と言います。こちらこそよろしく!」


それでは、皆様、中へお入りください。


どうぞお水です。


ありがとうございます。


「早速だけど、君たちの音楽は聞かせてもらった。いい意味でまだまだだが、伸び代も含めて今後面白いバンドになると思ってる。ボーカルの音くんの声も綺麗だけど人間味があって感情を揺さぶられるから最高だ。リーダーの塁くんと引くんは昔からやってたんだよね。安定感がある。叩くんはまだ初めて3年と聞くがパワフルでいい。そして、このグループにまだまだ伸び代があると勘が働いたので、今回はよかったらうちに所属してみないかと声をかけさせてもらった。一応返事で了承を得たと聞いてるが、改めて直接見ておきたかったから、今日は足を運んでもらった。」


そう言っていただけて嬉しく思います。ぜひよろしくお願いします。


社長はニコッと笑った。


「それじゃ、改めてよろしくお願いします。ということで、マネージャーを呼んでるから、あとはマネージャーと話し合ってくれ!これで飯でも食べてくれ。」


それぞれ1万円もらった。全員まだ高校生なのでお金を扱う機会が少なかったのと、知らない人からお金をもらっちゃダメという、どこかで覚えたフレーズが頭をよぎり、受け取る時に一瞬困惑したが、今回は別。テレビでも見たことある社長だから受け取れた。


「ありがとうございます!」「よっしゃーこれでお菓子買いまくれる!」「おい!引!そういうのは社長がいなくなったところで言え!」「そこは、おい!だけで説明は後でいいだろ塁!」


笑顔でその光景を見る社長「あはっはっはっ、お前たち面白いなぁ!じゃー後はよろしく!繋くん!」


「この度TIROのマネージャー担当させてもらいます。繋です。年齢は35歳。好きな食べ物は濃厚なラーメン。嫌いなものはピーマン。よろしくお願いします。」


(大学生かよ。)


「TIROです。よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします!早速だけど、まずマネージャーの役割を説明しておきますね。スケジュールの管理や仕事、取材のブッキング、ライブするならライブ機材の手配なんかもやる、要するに、君たちの活動をスムーズにしていく役割って感じかな。とりあえず連絡先だけ交換して、飯でも食いながら色々話そうよ。とりあえずラーメン食い行かないか?」


こうして、ラーメンを食いに行く間に各々の話をしたり、交流を深めて、マネージャーおすすめのラーメンキングに到着して、ラーメンを食べた。


「うめー!こんなうめーラーメン食ったのは初めてだ。」「お菓子ぐらい美味しいかも。」「濃いんだけど、くどくない。この味付け最高です!」ところで繋さん、質問なんですけど、売れ続けるために何が大事なんですか?


「んーとね。色々あるよ。社長もさっき言ってたけど。人に好かれるとか。でも、そんなのは基礎的な部分で。やっぱり音楽に時間を捧げることかな。人の音楽を聴いたり、mvみたりもそうだけど、やっぱり作り続けることだよ。質より量、とにかく、音楽に時間を捧げて、いい歌作って、届ける!シンプルでしょ?ズルッズルズルッ」


当たり前のことをサラッと言われたが、なにか途方もない感じがした。一見華やかなアーティスト。でも、歌を作るのに時間を捧げて世に出すまでには、地道な作業の繰り返し何だとTIROのメンバー全員感じて、ラーメンをすすった。」


「ごちそうさまでした!」


「はいよ!いつか売れたら奢ってな!一応これで解散するけど、事務所にレコーディングスタジオとか色々あるからさ使ってよ!慣れるまで時間かかるだろうけど、なんかあったら連絡してください!これ会社のカードキー。これで入れるから。それじゃ!」


メンバーのみになって、少しラーメン屋の前の通りで話した。


なんか、いよいよって感じだね。「そうだな。カラオケから始まって、文化祭でやって、ここまできちまった。」「お菓子も大事だけど、曲作るのも大事だと思わされたな。」「よし!さっそく、曲作りに事務所行くか?」


そうだね。


そう言って、事務所見学ついでに、曲作りに励んだ。それからも、毎日曲を作り続けた。


売れてからの人生━━━━━


5年後、僕らは1万人規模のドームを埋めるほどのアーティストになった。


コツコツと音楽を作り、ファンをつけライブができるくらいにまでになった。


ライブの歓声「きゃあー音!」「叩カッコいいぞ!」「引くんお菓子あげるよ!」「塁は安定のギターだな!」


TIROのメンバー「みんなありがとう!」


売れてからというもの、特に変わったことといえば、お金周りや移動だ。以前買えなかった高級ブランド品も、ファストフード中心の外食から個室付きの外食へ、移動は電車から車や新幹線。でも、初心を忘れたくないと思って、メンバー同士でたまにファミレスには行く。


そして、お金周りに関してはマネージャーの繋さんの存在が大きい。僕らはバンド組み立ての高校生から成人してお金は大きく稼げて、自由に使えるようになったけど「管理できなきゃだめだ!自由に使っていいのは収入の10%ね!それ以上使いたい時は要相談!」と繋さんに厳しくされた。理由を聞くと、どうやら繋さんのお父さんはお金持ちみたいで、お金の勉強を幼少期から教育されてきたみたい。その中の言葉の一部を教えてもらった。


「お金の失敗してきた人の共通点は見栄を張ることだ。たくさん稼げるときの価値観をさげられず、いざ収入が下がった時に良い生活を見せたいがために現状をみずに無理をする人。だから、生活レベルを上げないような自制心が必要なんだ。」


このおかげで、良い意味でも悪い意味でも、僕たちは学生の延長線でやらしてもらってる感じだ。


けれど、売れる前、売れた後のメンバーに対しての印象は少し変わった。


叩はブランド品が好きみたいで、チャラチャラし始めて、アメリカの黒人ラッパーみたいになってる。この前なんて「おい音!オメェにこれやるよ。」TATAKIっていうキラキラしたネックレスくれた。


引は相変わらずお菓子好きだけど、一時期チョコのフェスとか、限定品とか、都外のライブに行った時にすぐお菓子の美味しいところに行ったりとか、ここは予想できた。


塁はギターが本当に好きなんだろう。買いまくってる。「音!このギターめちゃくちゃレアなんだぜ!そんでカッコよくねぇ?すいませーん!これください!」とか言って。


みんな、繋さんいなかったら、どうなってたことやら。と思わされる。


自分はというと、「もっと欲をもてよ!」みたいなことを言われる。がなんかできない。変わったことといえば、おしゃれなカフェに行けるようになったぐらいかな。


というのも最近気づいたんだけど、そもそも、僕はずっといじめられて、1人の苦しさを知ってるからか、今バンドメンバーといられて本当に幸せなんだ。それで充分なんだ。恥ずかしくてまだ言ってないけどね。


見た目とか、物が増えたりとかはメンバーそれぞれ変わった。


でも、変わらないものもある。


「おーい音!事務所行って作るぞ!」


こうして4人が出会ったんだ。


「最近おすすめの北海道クッキー持ってきたよ。」


そう。


「ニューギターでニューソング作るか!」


楽しいを作ること。

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