幸せな夢
ray
月光の安全圏
眠るときに、落ちるという表現はきっと適切ではない。しいて言うのならば、降りていく。降りていくという表現が適切であろうと、少年は考えた。
曲がりくねった階段が足元で軋む。華やかな彫刻の間をくぐって、壁一面にべたべたと……重ねに重ねて張られた今日の出来事を横目に通り過ぎる。通り過ぎてさえしまえば、彼らは自分に訴えかけられない。
埃っぽい古代の所を一冊、腕の中に抱えて階段を下りてく。
自分と闇の境界線があいまいになったころ、やっとたどり着いた入り江に小さな潜水艇を浮かべる。小さな艇が沈んでいくと、もうここには自分以外は入れない。
沈んで沈んで、沈んでいくと星がチカチカし始めるから、艇は三日月の横にでも止めておけばいい。足元の町の煌めきは足元灯だと思えばいい。
そうやって、沈み切った先にある黄金の上に横たわってしまえば、自分だけの安全圏が出来上がる。月明りに縋って夢を描く夜は星の寝物語を抱きしめて。そうしてようやく自分の夢に寄り添った少年は今日も幸せな夢を見る。
幸せな夢 ray @pen-kane
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