10 再び、七月。

 再び、七月。


 松野菘が椎名はち先輩に恋の告白をしたのはその日の部活動終わりの帰り道でのことだった。

 菘はずっと前からはち先輩のことが大好きだった。

 友達のことりとはち先輩が恋人同士のときからそうだった。

 はち先輩とことりがお別れをして、別々の高校に進学して、菘ははち先輩のあとを追いかけて同じ高校の後輩になった。

 はち先輩は菘のことを覚えてはいなかった。

 でもいつかはあの日の自分のことをはち先輩が思い出してくれる日がくるかもしれないと菘は思っていた。

 なぜなら菘とことりは今も友達同士で菘がはち先輩のことが好きで今度はち先輩に告白をすることをことりは知っていたからだ。


「先輩。両手に花ですね」

 と菘ははち先輩にそう言った。

 その言葉の意味をはち先輩はよくわかっていないようだった。

「はち先輩ってさえないし、すごくかっこいいわけでもないし、背も高くないし、性格も明るくないのに、なんでこんなに女の子にモテるんでしょうね。すごく不思議です」

 と菘は言う。

「僕は女の子にモテたりしないよ」

 はち先輩は言う。

 そのはち先輩の言葉を聞いてそれは嘘だとはち先輩のことが大好きな菘は思った。


 先輩。両手に花ですね。 終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先輩。両手に花ですね。(菘) 雨世界 @amesekai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ