第5回 李苺鈴(カードキャプターさくら):異例のアニオリ人気キャラ
今回は魔法少女モノの有名所「カードキャプターさくら」のアニメオリジナルキャラ「李苺鈴(リ・メイリン)」を取り上げます。
通常、原作アリのアニメ化でオリジナルキャラはまず歓迎されないんですよね。原作の雰囲気を壊す、本来のストーリーを捻じ曲げる、そんなのいいからはやく話を進めろ、などと原作ファンには非常にウケが悪いです。
しかし彼女は多くの視聴者に受け入れられ、人気キャラとして「CCさくら」の世界に定着してみせました。原作漫画以外のすべての場所でレギュラーとしての地位を得たのです。
ここまで受け入れられるアニオリキャラはそうはいないでしょう。私の知る限りでは「ドラゴンボール」の悟空の父親「バーダック」と双璧を成す(大袈裟かな?)存在だと思います。
彼女は香港から婚約者の李小狼を追っかけて転校して来た、チャイナ風ツインお団子髪がトレードマークの元気娘。小狼好き好きオーラを全開にしながら、その彼とクロウカードを取り合うさくらを激しくライバル視する、いわゆる物語をひっかき回しに来るキャラでした。
個人的な話ですが、筆者はチャイナお団子ヘアスタイルにめっちゃ萌えるタイプです。思春期のお子様時代、「Drスランプ」の「摘鶴燐(つんつるりん)」ちゃんに滅茶苦茶魅かれて(お団子ヘアに体操服ブルマは反則過ぎる)以来、このテの髪型の中国娘にはどーしても目が行っちゃいます(苦笑)。
私の萌えはともかくとして、彼女は確かに非常にアニメ映えするキャラクターでした。魔力が一切ない彼女は日常でも、カード争奪戦においてもその身一つで大いに活躍してみせます。
マラソンで最初っから全力疾走してビリになったり、プレゼントするはずのケーキを焼き過ぎて真っ黒にしたり、カードの守護者ケロちゃんとどつき漫才を展開したり、家庭科の授業でさくらが引火させそうになった油をいち早く消し止めたりと、少女漫画原作の作品内でまるで少年漫画のドジっ子ヒーローみたいな八面六臂の活躍?を披露しつづけ、物語を大いに盛り上げてくれました。
そんなドタバタ担当の苺鈴ちゃん、実は物語の終盤に悲しい運命が待っています。
主人公の木之本さくらには憧れの男性が居ました、兄の友人で高校生の月城雪兎です。
しかし同時にさくらはクロウカードを奪い合う小狼を少しづつ魅了していきます。さくらにはその気は無いのですが、彼女の純粋な心や優しさ、その頑張る姿勢が小狼を少しづつ引き付けてしまうのです。
一度香港に帰っていた苺鈴は、小狼と再会した時に、もう彼の目には自分が写っていないことに気付いてしまいました。
小狼にそれを問いただし、絶望した彼女は自ら婚約を破棄して、泣きながら夜の街を走り続けます。同じ境遇にあった知世の元に駆けこんで嗚咽を漏らす苺鈴の痛々しさはひどく印象に残りました。
そう、彼女は今でいうNTR(ネトラレ)ヒロインになってしまったのです。
まだ小学生なんですよ、彼女は。
一方さくらは物語の終盤、雪兎に告白し、そしてフられます。その後で小狼に告白され、紆余曲折の後に彼と恋人同士になりました。
さぁ、みなさんどう思います?
苺鈴はさくらを恨んだでしょうか、小狼を裏切り者と罵ったでしょうか。
もちろんそんなことはありませんでした。彼女は小狼の、そしてさくらの幸せを望み、二人をくっつける為に知世と共にアレコレ頑張ったのです。
それを主人公を持ち上げるだけのやさしい世界と断じるのは簡単です。事実さくらは世界の中でも特別な存在で、小狼はそのさくらの伴侶になるべく生み出された、いわゆる「赤い糸」で結ばれたキャラクター、二人は結ばれるべくして結ばれたのです。
CLAMPの別作品である「ツバサ」を見てもそれは明らかでした。
最初っから苺鈴に、勝ち目なんて無かったんです。
だからこそ私は彼女に「少しぐらい愚痴ってもいいのに、恨み言を言ってもいいのに」と思わざるを得ません。
若い頃の恋なんて実らなくて当たり前です。まして小学生なんですから、それは将来甘酸っぱい思い出になればそれでいいんです。
だけど5年生でフラれた彼女が、6年生の頃にはもう二人を応援しまくるってなんか健気でもうね、彼女に幸あれと願わずにはいられませんよ本当に。
彼女は新作アニメ「クリアカード編」にも登場はしました(原作には居ない)。ですが残念ながらこれといった活躍も無く、アニメ自体が未完な形で一度終了しました。
が、今度その続編が制作されるとのことで、苺鈴の一発大逆転なエピソードがどこかで発動しないかとひそかに期待しております。
脇役でありながら大いに作品を盛り上げ、曇らせ要素まで盛り込んで、それでも元気に画面を駆け回る、お団子頭の香港娘に幸あれ!
……アッテホシイナー
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