第25話 ずっと
中央図書館入り口前のベンチが最近の待ち合わせ場所。
勉強の邪魔にならないように、わたしのバイトの前にちょっとだけ会う。
颯太は全然問題ないと言うけれど、わたしが気にする。
颯太が望む第一希望に受かって欲しい。離れるのは嫌だけど。
今日は、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「前に莉子が言ってたこと、聞いていい?」
「何?」
「なんで莉子は、颯太が風鈴の向かいにある塾に行ってること知ってたの?」
颯太はわたしを見ると、観念したように言った。
「…気づかれてたみたいで。」
「何を?」
「本当に偶然だったから。」
「何が?」
よくわからない。
「…6時になると…お店の看板出すよね?」
「よく知ってるね。」
「…それを…向かいのビルから、見てた。」
「え?いつから?」
「気がついたのは、去年の2月、雪が積もった日。休憩時間にぼんやり外見てたら、雪の中半袖でいる人がいたから。何で雪の中半袖?って気になって、そうしたら店の制服ってわかって、それが誰かもわかった。」
「嘘…」
「『見てました』とか言えなくて。だってひくでしょ?」
「そうだね!」
颯太は一瞬真顔になったけれど、わたしが笑っているのに気が付いて、言った。
「いつからそんなに意地悪な人になったの?」
「えー?もともとこうだよ。ずっとわたしのこと好きだったんだねー。」
冗談で言ったのに、
「そうだよ。」
颯太が普通に答えるから、恥ずかしくなった。
「そうだって何回も言ってるじゃん。気持ちが変わらない自信あるし。何回でも言えるよ。」
颯太は真っすぐに向き合ってくれる。
「優衣が好きだよ。」
わたしも颯太が好きだよ。
END
Overwrite 野宮麻永 @ruchicape
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