第24話 不機嫌なんかじゃない
唐突に颯太が言った。
「この前みたいなの、もうやめてください。」
わたしが颯太に助けてもらった日のことだ…
「うん。わかってる。もう合コンには行かない…」
「合コンに行ってたんですか?」
あからさまに颯太がムッとした。
「え?うん。」
「優衣さんと初めて会ったのは3年前でした。」
「それ、違うよ。初めて会ったのが部活の入部の時だから。」
「違います。オレが中3の夏です。」
「どこで?」
「ウィンターカップの予選会場。誰もいないところで、1人で泣いているのを見ました。」
高2のウィンターカップの予選だ…
その前の練習試合で、一番上手い子が靭帯を切ってしまって、代わりに入った子が上手くボールを回せなくてギクシャクしたまま試合に臨んだやつ…
みんな誰が悪いってわけじゃないのはわかっていながらイライラしてた。
試合が終わった後、何もできない自分が情けなくて、1人で泣いてしまった…
「次に会ったのは高校の体育館の前。うちの高校って、なぜか体育館が道路挟んだとこにあるじゃないですか?受験の下見してたら、校舎から道路渡って体育館に向かう優衣さんを見ました。重いジャグを1人で運んでました。それを見てたら、声をかけられました。」
「もしかしてこの学校受験するの?」
「はい。」
「ねぇ、バスケ好き?」
「…はい。今もバスケ部です。」
「じゃあ、待ってるね。」
「笑顔で話しかけれたけど、あの時の人だってすぐにわかりました。」
わたしには全然記憶がなかった。
「それで皐月高校のバスケ部入ったら、優衣さん高3で、すぐ引退して。河野が偶然優衣さんに会わなかったら、連絡先もわからないままだった。」
「でも、男バスのみんなはわたしのアドレス知ってたから…」
「バスケ部入った初日に3年から釘を刺されました。『マネに気のある素振りとか見せたやつ即退部だから。気を使わせるようなことさせるやつはしめる』って。連絡先聞ける雰囲気全然ないですから。」
「そんなの知らなかった…」
初めて聞く話ばっかりだった。
颯太はいつもよりたくさん話をしてくれる。
「それで…さっきから、微妙にスルーされてるんですけど、ちゃんと伝わってます?」
「何を?」
「3年片想いしてるって言ってるんです。前に駅前で会った時、オレのこと『後輩』って言ってたけど、オレは後輩ポジではいたくないんです。」
不機嫌に見えてしまってたのは…
「今日、絶対言おうって決めてきたのに、優衣さんが可愛すぎて、顔見れなくて…」
機嫌が悪いんじゃなくて…もしかして照れてる?
「優衣さんが、ずっと好きでした。これからもずっと好きです。」
「え?はい。」
「『彼女』って呼びたいです。ダメですか?」
今日、初めて、颯太が真っ直ぐにわたしを見て言った。
2歳年下なんだよね、とか。
颯太、受験生じゃん、とか。
志望大学、全部県外だったけど、じゃあ最初から遠恋ってこと?とか。
いろいろ頭に浮かんだのに…
「わたしでいいの?」
って、泣きながら言ってしまった。
「優衣さんじゃないとダメなんです。」
そう言って、颯太は、ぎこちなく抱きしめてくれた。
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