第23話 空に光る花火
花火が間近に見える場所から離れるにつれ、ぎゅうぎゅうの人混みから解放された。
それでも全然人がいないわけじゃないから、気をつけないとぶつかってしまう。
「俊ちゃん、だめ!」
声と同時に突然小さな男の子がわたしの後ろにぶつかって、そのまま走り去って行った。
その一瞬、颯太とわたしの指先が触れた。
「ごめんなさい。」
後ろから追いかけてきた母親がわたしに謝って、男の子を追いかけて行く。
颯太が、ふれたわたしの指先を、そっとつないだ。
その時、一つ目の花火が空に花を咲かせた。
「優衣さん。」
何?
続けて花火が空に光る。
「あっちから来るの、岡島先輩です。」
颯太に言われた方を見ると、男バスの、一学年下だった後輩が友達と歩いて来ていた。
わたしが見るのと同時に向こうも気がついた。
花火が次から次へと、大きな音と共に空を色とりどりに染める。
わたしが手を離そうとしたら、颯太が強く手をつないできた。
岡島くんはわたしに
「こんばんは。優衣先輩お久しぶりです。」
とだけ言った。
「うん、久しぶりだね。」
そう答えると、颯太には
「じゃあな。」
と言った。
颯太が軽く頭を下げると、岡島くんは行ってしまった。
空では絶え間なく、花火が夜空に光を放っている。
花火の音が、わたしの心臓の音を消してくれますように…
そうじゃないと、颯太に聞こえてしまう…
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