第45話 十分で目の色が変わる

「お前らホンマに」

 慌てて下を向いた。


「どした? どっか痛いんか?」

 たくさんの顔、今日はお前ちゃうやろとか聞こえて来る。



「じゃ、松葉杖無しで二十分歩けるようになったらな」


「コンテ二日で読んだ男にしたら二か月後に二十分は余裕やろ」


「待ってますからね」


「というわけで光君の輸送方法はこっちでも探し出すのでまたご相談を」


「良かったわね。光すごいね、あなた。あんなにお友達がこれも光の人徳よ」

 ありがたいよな。だって休学中だぜ、僕の要求にわざわざ家のフリして通話してくるんだもんな。


 母さんは僕を抱きしめて、僕も抱きしめてわんわん泣いた。


「お、今日はやる気やね」


「二か月後までに二十分いや三十分歩くんで」


「強気だね。いつまでもつかな?」

 肩で息をして椅子に倒れ込んだ。


「よく頑張ったね。六分、すごいやん。無理せんと頑張っていこな」


 次の日、六分半。六分。七分半。六分。

 一か月で十分だった。


「この一か月で目の色が変わったね。男の子の顔や」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る