第13話 到着
時刻は11時を少し過ぎた頃、龍也は香織とともに目的地の映画館の入っている大型商業施設にたどり着き、映画館のある最上階に向かった。
「ところで何を見るの?」
「これだよー」
そう言って隣で一緒に歩いている香織がスマホの画面を龍也に見せる。
「これって」
香織が龍也に見せたのは鬼と戦う隊士を描いた人気漫画が原作のアニメが映画告知されている画面だった。
もちろん龍也は全巻揃えている。
「普段漫画とかはあんまり読まないんだけど友恵がこれは面白いからってお勧めされたから1.2クール見てみたらとても面白くて」
「そうなんだ」
「龍也君はこういうアニメとかって見るの?」
そう問われた龍也はオタク趣味を悪く言わないのは分かっていても少し身構えてしまう。
「うん、見るよ」
「そうなんだ!良かった」
嫌われてしまうかもと恐る恐る答えた龍也の香織は嬉しそうに答える。
「じゃあ、楽しみだね。それに、また1つ龍也君のこと知れて嬉しい」
「...っ!」
「これからもっとお互いのこと知ってもっと仲良しになりたいな」
(★最終的には付き合っちゃったり...なんちゃって)
「そ、そうだね」
(☆そんなこと言われたら勘違いしてしまうだろ...)
そうやって龍也が心の中で悶えていると目的地である映画館に到着する。
「とーちゃーく」
「結構人多いね、これは早めにチケット買っといたほうがいいね」
「そうだね」
そして二人はチケット販売機に向かい座る席を決める。
予想通り、かなり席が埋まってしまっているが運よく中央付近の席のを確保することができた。
「龍也君、上映時間までどうしようか」
「確か一つ下の階ゲームセンターだったと思う」
「それじゃあ、ゲームセンター行こっか!」
「う、うん」
と龍也は香織に腕をひかれゲームセンターへと向かった。
☆
ゲームセンターの光景はどこに行ってもあまり変わらないのだなと改めて思う。ここのゲームセンターは俺がいつも行っているところよりもかなり小規模だがあちらこちらから様々な種類のゲームの音がガヤガヤと聞こえてくる。
ゲームセンターもだが今日はいつもとは絶対的に異なるところがある。
それは俺の隣に学校一の美少女と言われている篠崎 香織がいることだ。
そのための俺はいつも通りソロのアーケードゲームをプレイするわけにはいかず、とりあえず香織が気になったゲームをすることにしよう。
「何かやりたいゲームある」
「うーんっとそうだな」
香織はそう言いあたりを見渡した。
「あれはどうかな?」
それは大抵どこのゲームセンターにもあるがゲームではない機械、香織が指をさす先はプリクラコーナーだった。
女の子経験ゼロというか友達経験すら香織と出会うまでほとんどなかった俺にとって未知の領域、というか俺みたいなのが踏み入っていい領域なのだろうか。
「龍也君?」
「あぁ、うん」
「じゃあ、行こう!」
「⁉(えっ)」
そうして香織に手を引かれプリ機の方に歩みを進める。
「龍也君はどれがいい?」
「お、俺はあまりこういうところ来ないから香織に任せるよ」
「それじゃあ、これで」
香織は迷うことなくプリント機を操作し初期設定を終わらせる。
『それではスタート』
香織と撮影ブースに移動すると、明るい機械音声と同時に撮影が開始する。
俺たちは目の前のモニターに表示されたポーズを次々にし撮影を進め、撮影を終わらせる。意外と指定されたポーズをとるのが難しくどこか達成感を感じる。
その後、落書きタイムに移りそれぞれ分担を決めて落書きを始める。
「あはは、龍也君女の子みたい」
何か言い返そうと思い香織の写真を見るがどれも様になっていて可愛い。これが本物の美少女か-、一方の俺はいつもより目が大きくなり肌が化粧したように白くなり何とも言えない俺の姿があった
「なんか写真の俺、いつもに増して気持ち悪い」
「えっ、そんなことないよ。可愛いよ」
「そうなのか?」
「そうだよ、やっぱり元がいいからかな?」
「いやそれは絶対ないと思うよ」
「そんなー、こんなにかっ...」
香織が何かを言ったが最後までは俺の耳には届かず、俺は落書きを続ける。
そのあとは香織と写真の中の自分たちを笑い合いながら落書きをしているとあっという間に時間は過ぎ終了時間になる。
『終了~』
落書き時間が終了し、落書きがされた写真がプリントされ機械の受け取り口から取り出す。
「はい、龍也君の」
「うん、ありがとう」
写真を見てみるそこには文字や猫や犬などの可愛らしい耳や髭などが書き加えられた普段の姿とはかけ離れた二人の姿が映っていた。
「龍也君との思い出がまた一つ増えて嬉しいな」
「そうだね、俺も嬉しいよ」
「そろそろ上映時間だしそろそろ行こ」
香織にそう言われ俺たちは映画館へ向った。
どうやら学校一の美少女に好かれてるようです 皐月 ふつ @futsu22
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