第四十二回 パクリとリスペクトとオマージュと
はじめての方はよろしくお願いします。
お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。
さて第四十二回ですがー。
また性懲りもなく、可燃性のテーマを……学習しない猿、それがこけばしでござる。
では、早速お送りしますか……(嫌ならやめとけ)。
■センセイに憧れて書きました!
死ぬまでに、誰かに言って欲しいセリフです!
……でもないか。
されど。
どこかの誰かに影響を与える人物になりたい、そんな思いはこけばしにだってあるのです。まあ手始めに、このエッセイが「執筆活動の励みになった」、「役に立った」と言われるように頑張るとしましょうか。
……役に立つ要素、今までにあったっけ?
い、いやいやいや!
考えてる場合じゃない、早速はじめましょう。
■それぞれの言葉の意味「パクり」
タイトルに挙げた「パクり」、「リスペクト」、「オマージュ」の意味、知っていますか?
「パクる」という言葉には複数の意味がありまして。
いわゆる「
一方、元々の言葉の意味としては「ぱくりと食べる」であり、これは古くは明治時代、もしくはもう少し以前から使われていたとされています。これが転じ、「
ただし、「盗作・盗用する」ということを示す言葉として、一般人レベルがニュースなどにおいて目にするようになったのは、二十世紀後半からでした。さらに『三省堂国語辞典』で「パクる」に「盗用する」の意味を掲載したのは二十一世紀になってのことで、二〇〇八年の第六版からだそうです。
どちらが先か?
という話になりますが、「縛」を動詞化した「
■それぞれの言葉の意味「リスペクト」
続いて「リスペクト」です。
英語での元々の意味は、「尊敬する」、「重んじる」、「敬意を表す」、「価値を認めて心服する」といったところです。他人の視点を理解して、その立場や意見を「尊重する」という意味合いで使われるようです。また、似たような言葉として「esteem」(エスティーム)があります。
このふたつの決定的な違いとしては、「リスペクト」がその対象者の「ありのまま」を評価するのに対し、「エスティーム」はその対象者の「他者と比較した」評価をするところです。
さらに「admire」(アドマイヤー)というのもありまして、こちらは「(好意を伴う)尊敬」。「リスペクト」に関しては、嫌いであっても「リスペクト」なんですって。へー。
「確かに嫌なヤツには違いないが、俺はアイツをリスペクトしている」
そんなセリフを海外ラッパーへのインタビュー等で見かけたことがありますけれど、良くも悪くも「尊敬」している、ってことなんでしょうね。好き嫌いは別として。なるほどー。
■それぞれの言葉の意味「オマージュ」
そして「オマージュ」。
前項の「リスペクト」が対人(?)なのに対し、「オマージュ」となるとその対象は「対物」、「作品」へと変わっていくようです。芸術や文学において、尊敬する作家やその作品に影響を受けて、それと似た作品を創作すること、これを「オマージュ」と言います。
この「オマージュ」は、騎士道に
「君主の前でナイト・スツールに
というシーン、「
「オマージュ」には、必ずしも類似した表現やセリフがある必要はなく、作品のモチーフを過去作品に求めることを指し、敬意ある親和性を感じられるかどうかが鍵となるようです。なので、単純に「似たシーンがある」だけでは「オマージュ」とは呼べないんですね。
要するに、そこに愛はあるんか? という感覚的・感情的なモノがとっても重要だということになります。
■まだまだあるんだけど……
この他にも「パロディ」、「インスパイア」、「模倣」、「
(脚注:「本歌取り」とは、歌学における表現技法のひとつ。誰もが知る本歌(古歌)の一句もしくは二句を自作の句に引用して作歌を行う手法で、本歌を背景に置くことで作品に奥行きを持たせることができる。ただし当時も「盗古歌」(こかをとる)と非難する歌人もいたとか)
ここ、とっても大事です。
引用元である「本家」との類似性という観点においては、「盗作」でも「オマージュ」でも、「パロディ」であっても共通であり、その識別、問題性はそれぞれの感性に委ねられています。
しかし、あえて違いを挙げるとすると、
・広く世間に知れ渡ってしまうと大問題になるのが「盗作」
・広く世間(または元ネタの作者)に気づいてもらいたい! と思い願うのが「オマージュ」
・広く世間に気づいてもらわないと滑った感じになって超恥ずかしいのが「パロディ」
となるんだと思うのです。
つまり、純粋な愛や敬意、ちょっと
そりゃ「パロディ」だって、怒られる時には怒られます。
あのアル・ヤンコビックだって最初の「Eat it」(「Beat it」のパロディ)リリース直後はMJにかなり嫌がられたことでしょう。しかし、のちにマイケルは彼の才能を認め、続く「Fat」(「Bad」のパロディ)と共に「公認の」パロディ作品になり、二〇一八年にはハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム(ハリウッド殿堂)入りを果たしています。
かの漫画の神様、手塚治虫センセのタッチをはじめとした「イタコ芸」を得意とする漫画家・田中
でも、どちらも愛があるからこそ、許されたと思うんですよね。
そういう意味においては、こけばしの、
■吾輩は異世界転生した猫である
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892574466
もまた、「オマージュ」であり「パロディ」作品です。きっとこれなら、漱石センセも苦笑いしてくれるのではないか、と。それだけの「愛」を込めて書きました、胸を張って言えます。
■最後に
さて。
執筆現在(二〇二三年一〇月)、「京都アニメーション放火殺人事件」の裁判が行われています。被告人・青葉真司は、「自作の小説を盗用された」と、犯行に至った動機を語りました。
正直に言って、被告の主張する程度の相似(そのレベルにすら達していませんが)で「パクり」、「盗作」が認められるのであれば、おそらく星新一センセクラスにもなると、かなりの被害者ですよね。
そうでなくても「垂れ幕が登場するシーンがある」、「ヒロインが値引き品を買い漁っている」、「留年するぞと警告される」といった程度の共通項を、「それは俺のアイディアだ!」と主張する胆力はかなりのものです(これらの主張ですら、ほぼ違うシーンなのですけど)。
ただ、こういうことが起こりうる時代なのだ、とこの事件はわたしたちに警告しているように感じます。異世界モノのテンプレ化、AIの台頭……そうでなくても、いくら日本語という豊かで多彩な表現が可能な言語に恵まれたとはいえ、限りはあります。
いつかはどこかのなにかに類似してしまう可能性があるのです。
皆様、くれぐれもご注意下さいませ。
そろそろお終いの時間です。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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