第二十六回 異なるジャンルの作品を複数同時に書く! その1
はじめての方はよろしくお願いします。
お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。
さて第二十六回ですが、今回はタイトルにもありますように、異なるジャンルの作品を、複数並列で執筆・掲載することについて、です。
これもまた、自称・カクヨム中級作家であるこけばしが実際に試してみて得た知見・発見だったりしますので、作家の皆さまのなにかのお役に立つこと請け合いです。
では、張り切ってお送りしまーす!
■「あの人」みたいになりたくて
そもそも、この「異なるジャンルの作品を複数同時に書く」という一見無謀な試みは、こけばしの目標・憧れである、ひとりの偉大なる作家センセイの存在あってのことでした。
彼女の名前は「
そう、かの大長編ヒロイック・ファンタジー小説『グイン・サーガ』の生みの親であり、また、クトゥルフ神話を題材にした伝奇SF小説『魔界水滸伝』や、珈琲とタバコと音楽を愛するちょっととぼけた探偵・伊集院大介を主人公としたミステリー小説『伊集院大介シリーズ』、江戸で人気絶頂の女形の嵐
と同時に、別名義「中島
最盛期には、同時に三作品の連載をこなし、毎月のように続巻・新刊が発行されていました。そんな多忙な身であるのにも関わらず、大学時代に結成し、活動を継続していたハードロック系バンド(のちにジャズに移行)『パンドラ』ではキーボードを担当。さらには、長唄、小唄、清元、津軽三味線の
ガチィでこの人、いつ寝てるんだろ? と不思議になったものです。
そして、この偉大なる才能を持った彼女は、二〇〇九年五月二十六日、五十六歳という若さで天国へと旅立ちました。
その日、こけばしは横浜にてクライアントとの打ち合わせを済ませ、直帰する帰りの電車の中で、その信じられない
早すぎます。あまりに。
そして、それと同時に、なぜか無性に悔しかったのを覚えています。なぜなら、憧れの人と同じ小説家になって、直接お会いしてお話しをしてみたかったから。そして、そんな夢とは遠くかけ離れた世界で、あくせく働いている自分のことがとてもキライになったからです。
そう、憧れの「あの人」の名前は「栗本薫」。
こけばしは、あの人のようになりたかったのです。
■「あの人」にできるなら、当然「こけばし」もできなければならない
少し湿っぽい話になりましたけれど。
そんな理由があって、この見出しのような決意を改めて胸に抱いたのでした。
これだけ見ると、かなり誤解を受けそうですが……www。
前項をお読みいただければ、「並び立つことを目標としていた」こけばしならば、当然「栗本薫」センセイと同じことができなければいけない、でなければ、そんな資格なんてこけばしには無い、という意味なのだとご推察いただけるのではないかしら、と思うのです。
とはいえ、ことは容易ではありません。
同じジャンルで複数作品を執筆する――しかも、ある程度高い頻度で、という行為ですら高難度なのに、まったく異なるジャンルの作品を最低三本並行運用しようとしたのです。
この最初の試みは、二〇一九年の秋、まもなくはじまるであろう「第5回カクヨムWeb小説コンテスト」の際にスタートしました。
その結果、こけばしの挑戦は無残にも失敗という結果に終わりました。
コンテストの結果云々はもちろん無関係ではありませんけれど、そもそも三作品を同時に執筆して連載することができなかったのです。ある程度、それぞれの作品を書き貯めして、準備を万端にしていた、と思い込んでいただけに、この失敗かなりショックな出来事でした。
当時の「近況ノート」を振り返ると、
■吾輩は異世界転生した猫である
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892574466
■世界を動かすものは、ほかならぬ百合である。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890953337
■被告人「勇者A」
https://kakuyomu.jp/works/16817330653870628957
の、それぞれ「純文学オマージュ異世界転生モノ」、「百合妄想JKと双子の探偵が織りなすライトミステリー」、「敗戦後戦犯となった勇者のその後を描くリーガルファンタジー」の三作品を書いていました。そう、現在連載中の「被告人『勇者A』」って、この時のリベンジ作品だったりするんです。はい。
結論から述べてしまうと、並行運用ができなかった最大の理由は、「執筆コストの大きな差」でした。
この三作品の中でも、ずば抜けて執筆コストが高かったのが、『吾輩は異世界転生した猫である』です。
簡単に中身をご紹介しますと。
原典である夏目漱石センセイ作、『吾輩は猫である』のラストで主人公である三毛猫(注:諸説アリ)の「吾輩」は、はじめて目にしたビールで酩酊してしまい、水瓶の中に落ちて溺死してしまいます。ですが、このラストが非常に
あれほど人間たちの実に浅ましくもせせこましい日々の暮らしを皮肉げに観察し、ああはなるまい、なりたくない、と、ある種達観していた「吾輩」ですのに、その最後はあまりに愚のひと言で、あたかも都合が悪くなったので早々ご退場いただいた、と言わんばかりではなかったでしょうか。あまりに唐突で、脈絡もないように感じてしまった記憶があります。
それがいいのだ、その万物に等しい無常観がいいのだ、というご意見もあるでしょうけれど、こけばしにはとてもとてもそうは思えなかったのです。悪く言えば、漱石センセイの作家的都合で消されてしまった、哀れな主人公だと感じてしまったのですね(多分、気のせい)。
なので、昨今流行の「異世界転生モノ」の主人公同様、その後の物語に続きがあったとしたら? というテーマで書きました。夏目漱石センセイがご存命であれば、きっとこのように書かれることだろう、という推察と分析と、希望を込めて、交霊するイキオイで書いたのです。
ですが。
その道のりは、「へっへーん! こんなの誰も思いつかないでしょー!」などという、安直で楽観的な着想からは想像もつかないほどに遠く、またはるかに険しいものだったのでした。
おっと、そろそろお終いの時間ですね。
というか、文字数。
なので、次回はこの続きから。
怒らず、嘆かず、どうぞ懲りずによろしくお願いいたします。
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