第十四回 一人称と三人称、今回はなんにんしょう?(=なんにしよう?)

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。


 さて第十四回ですが、前回までで、物語の大枠と、個々のイベントについても決まってきました。なら、書くべ! といいたいところですけれど、まあ待て(偉そう)。


 文体をどうするか、そこも意外と重要な要素のひとつだと思うんですよね。


 ということで、今回は「物語の文体について」です!

 では、張り切ってお送りします!




■「文体」ってなんだろう?


 あくまでこけばしの考える「文体」とは、以下のような要素で構成されていると思うのです。



 ・何人称の視点で書くか

 ・「口語体」で書くか、「文語体」で書くか

 ・「です・ます」調で書くか、「だ・である」調で書くか



 これだけだとピンとこない、という方もいらっしゃるかもですので、それぞれ具体的に掘り下げてみましょう。



■何人称の視点で書くか


 しばしば作家界隈では、「一人称視点」、「三人称視点」と言ったりしますけれど、これは言い換えると「主人公視点」なのか「作者視点」なのか、という意味になります。


 より分かりやすく表現するとしますと、



「主人公の目で見たもの、聞いたもの、体験したものをベースに書くのが一人称」

「作者の視点から物語の世界を俯瞰視ふかんしして、全体の出来事を書き記すのが三人称」



 となるかと思います。

 これにより、具体的に何が起こりうるかと言うと、



「一人称では、主人公が不在の場合や見聞きしなかったものは表現できない」

「一方で、主人公の心の機微きび(心の繊細な動きやおもむき)をあらわすことができる」



 となり、



「三人称では、すべての登場人物の動きや言葉を表現することができる」

「一方で、個々の登場人物の心の機微に触れることはかなり難しい」



 となるのかな、と思います。


 どちらが正しい、どちらが偉いはありません。どちらで書く方が「自分の物語にマッチしているのか」、「自分の執筆スタイルに合っているのか」を考えれば良いと思います。なお、ライトノベルに関して言えば、一人称で書かれた作品の方が優勢であるという印象ですね。


 少々引火性の高い話題ではありますけれど、ライトノベルはいわゆる「地の文」(セリフや心象風景以外の、その場面の説明など)が少ない傾向にありますから(間違っていたらスミマセン……)、必然的に一人称が多く用いられるのでしょう。ただ、三人称で書かれた優れたライトノベルだっていくつもございますので、やっぱり書き手それぞれでいいと思うのですよね。



 ちなみに。

 一人称、とひと口に言っても、若干バリエーションがあると、こけばしは思っています。


 文中に登場する、主人公の名称。

 大きく分けて、これが「あたし(俺)」になるか、「主人公の名前」になるか、です。


 セリフ文の中ではさらに変わりますけれど、主人公の行動を文章にする際に、「あたし(俺)」と書く場合と「主人公の名前」になる2パターンがある、ということですね。



健太けんた――――。


 健太――。


「健太!」


 まだぼんやりとしていた俺の意識は、その騒々しい呼び声で無理矢理覚醒させられた。』



 ■ラブ×リープ×ループ!

 https://kakuyomu.jp/works/16816700427245926152



 これは拙作【ラブ×リープ×ループ!】の第二話冒頭の文章ですが(ここ、大事な宣伝です!)、具体的にげると、ここの『俺の意識は』を『健太の意識は』にするかどうか、ということになります。



「はぁ? なんそれwww」


 うんうん。

 書き分けしないと変なーなる箇所も出てきそうですよねー。



 でもこれ、かの大ヒット学園異能アクション(?)鎌池かまち和馬かずまセンセイの「とある魔術の禁書目録インデックス」がその代表例であり、傑作例であります。文中に主人公・上条かみじょう当麻とうまの心情文を織り交ぜながらも、地の文の個所では「上条は」と書くパターンなのです。当時は珍しかったのか『神の視点』と呼ばれることもあったようです(解釈、間違ってませんよね? ガクブル……)。


 で。

 こけばしもやってみました。


 その結果が、拙作【異世界喫茶「銀」】になります。



『(……シオンは俺の孫だ。そう約束しちまったからにゃ、面倒事に巻き込む訳にゃいかねえ)


 うむ、とうなずく。


「……なんだい、ええ?」


 と、少し前から様子を窺っていたシリルがからかいの言葉を投げてきた。


「そんな気難しい顔しちゃってさ? そのひと匙で最後だからって、むくれてんのかい?」

「ばっ、馬鹿言え!」


 意表を突かれた銀次郎ぎんじろうは慌てふためいた。』



 ■異世界喫茶「銀」

 https://kakuyomu.jp/works/16817330654556345312



 つたない例で恐縮ですけれど、()カッコ内は主人公・八十海やそがい銀次郎の心情文ですね。そして『うなずく』のは銀次郎の主観であり、行動です。次のセリフと地の文は、銀次郎の視点から見た物語の登場人物、シリルの行動になります。


 うまく書き分けをしないと読み手の混乱を招く恐れはあるものの、このように「あたし(俺)」以外の書き方でも一人称は成立するのです。名称・呼称がすなわち「一人称視点」の特徴ではなく、あくまで「誰の視点によって書かれているのか」、これが重要になるのです。




 おっと、そろそろお終いの時間ですね。


 今回のテーマ「文体」については、まだふたつ、残っていますよね。スミマセン!

 なので、次回も引き続き綴っていけたらと思います。



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