第十五回 「喋り言葉」と「書き言葉」

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。


 さて第十五回ですが、前回の第十四回で書き切れなかった「文体」についての残りふたつ、



 ・「口語体」で書くか、「文語体」で書くか

 ・「です・ます」調で書くか、「だ・である」調で書くか



 こちらについても綴って参りましょう。

 では、張り切ってお送りします!




■「口語体」とは? 「文語体」とは? その違い


 パッとこの言葉を耳にしたあなたは、どういうイメージをそれぞれに抱くでしょうか?


 俗に言いますと、「喋り言葉」に「書き言葉」ということになりますけれど、この解釈で進めようとすると、きっとこのパターンで混乱するはずです。



「え……じゃあ、普段話す言葉=喋り言葉を文章にしたら、それは書き言葉ってことぉ!?」


 うんうん。

 でも、それは違いますねー。



 実は、これはこれで正しい解釈なのですけれど、物語を書くときの「口語体」と「文語体」の場合には、少し意味が違ってきます。なので、僭越せんえつながら不肖ふしょうこけばしが、なるべく平易な文章にまとめようとすると、



「口語体とは、わたしたちが現代において使用している話し言葉に基づく文章のことである」


「文語体とは、平安時代の言葉をベースにして作られた古式ゆかしい文体のことである」



 となります。はい。

 ここであなたは、きっとこう思ったはずです。



「そんなモン、使うワケねーじゃん!」


 うんうん。

 そうですよね、分かります。



 しかしながら「文語体」は昭和初期まで普通に使用されておりましたし、現代が舞台の小説やマンガなどでも使われることはあるのです。これは、具体的に例をげれば分かるかもです。


 たとえば、ですね。



「武士道と云うは死ぬことと見つけ

「昔、男あり……。」

「ふと、彼女の在り日の記憶が蘇る」

「ひ……引か!! 媚び省み!!」



 みたいな奴のことです。


 さらっと「葉隠はがくれ」だったり、BLマンガのタイトルが入っていたり、しまいにゃ拳王と呼ばないとキレるお方の名セリフだったりしておりますが、まあ、こういったたぐいのモノです。どうでしょう? そうそう頻繁ひんぱんには使わないかもしれませんけれど、一度くらいはお使いになられたご経験もあるのではないかなー? って思うのですよ。


 では、さらにこちらの場合はどうでしょうか?



「その姿、まさに鬼神の

「何度も後悔、あたしはひたすら前へと進んだ」

「いいか? 現時刻をもってあの者たちを反逆者と



 こんな文章なら、もしかしたら頻繁に使用されている方も多いのではないでしょうか?


 実はこれもまた「文語体」的な言い回しなのです。それぞれ「~のように(な)」「~しながらも」「~とみて(る)」とした方が親しみやすさが増しますよね。



 ズバリ、です。

「文語体」のメリットとは以下となります。



 ・簡潔で歯切れの良い表現ができる

 ・文章に品位や品格を与えることができる

 ・口語に直してしまうとニュアンスが正しく伝わらないものもある



 最後のはメリットじゃない(?)気も激しくするのですけれど、前述の例が示すとおりで、「反逆者とみなす」を「反逆者とみる」としてしまうと、どこか変なカンジですよね(『そもそも別の言葉をチョイスするだろwww』というのは正論ですけれど、ここは敢えて、です)。


 結論としましては。

 使っちゃダメ、ではありません。


 ただし、意味の分かりにくい言葉もありますので、使う際にはきちんと下調べして、意味を間違えないようにしたいものです。なんとなーくのイメージだけで使ってしまうと、全然違う意味になってしまいネットで晒し者にされる、ということもにしばしばございます(謎)。



■「デス・マス」と「ダ・デアール」ってカナ表記にするとファンタジー色が増すよね


 物語に限らずですけれど、「です・ます調」で書くか、「だ・である調」で書くか、皆様も一度はお悩みになられたことがあるのでは? と思います。ここはそうだね、と言って下さい。


 このふたつでは、単なる表記上の違いだけでなく、使い方や与える印象が変わってきます。


 では、ズバリ、何が違うのでしょうか?



・「です・ます調」の特徴・使い方


「です・ます調」は、正式には「敬体けいたい」と呼ばれ、丁寧ていねい語で統一された文体のことを指します。柔らかく語りかけるような文章になり、読みやすく、親しみやすい印象を与えます。また、読み手に共感・同意を求めたり、柔らかなアプローチで主張を訴えることに向いています。


 その反面、何かを強く訴えるような場面では不向きで、若干インパクト不足になります。


 他にも「~ました」、「~ください」、「~ありません」といった文末も敬体に属します。



・「だ・である調」の特徴・使い方


「だ・である調」は、正式には「常体じょうたい」と呼び、丁寧語・敬語を用いない普通の文章形式である。一切の感情を省いた硬質の文章となり、説得力をもった、断定的な文章となる。そのため、正確な事実を伝えたり、強い意志・メッセージとして訴えかけたりすることに適している。


 その反面、冷たい印象を与え、言い切り表現が反対意見を持つ者から嫌悪感を抱かれやすい。


 その他、「~た」、「~いる」、「~だろう」といった文末も常体に属する。



 説明文もあわせてそれぞれ「です・ます調」と「だ・である調」に見えるよう配慮して書いてみました。似たようなついになる文章ですけれど、ずいぶんと印象が違ってみえると思います。


 ラノベを書く時の注意点としては、物語中できちんと統一すること、この一点です。


 でもでも、もちろんセリフ文の中に関してはこの限りではありません。


 これを逆に考えますと、横柄で傲慢な領主のようなキャラクターは「だ・である調」の方がしっくりくる、ということですね。ドSメガネ執事(CV:石田あきら)の場合なら「です・ます調」の方が似合いそうですよね。堅物な女生徒会長(裏設定:ホントはウブで甘えん坊)は「だ・である調」。誰とでもすぐ仲良くなれる学校一の人気を誇る陽キャJKインフルエンサー(裏設定:闇垢で取り巻き連中の悪口を書きこんでいる)なら「です・ます調」みたいな。


 どちらが好印象を与えるか、どちらが説得力と発言力が表現できるか、前述の特徴なども踏まえてキャラクターづくりをすると良いと思います!




 おっと、そろそろお終いの時間ですね。


 今回で無事「文体」も定まりました! 第十二回で「プロッター型」の一員である、こけばし流の「物語の作り方」ロードマップに沿って進めたとすると、ようやく書くパートになります。ヤッター!


 なので、次回はこけばしがどのようなことを考えて書き進めるか、そういった部分をかいつまんでお話しできたらと思います!



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