ピース4


東京都浅草某所孤児院


彼女の事をマリアに報告しようと

お墓参りの後孤児院に寄った



マリアは少し疲れている様子だったが

久しぶりに渡良瀬の顔を見て

元気が出たようで笑顔で話を聞いてくれた


母のように慕っていたマリアに話を聞いて貰い

つらいが前向きに生きて行こうと思う渡良瀬であった


しかし数日後マリアが倒れた後急死した事を知る

数日前に笑顔で話を聞いてくれていたのになぜ?

妹のような存在の死、彼女の死、そして母親のような存在の死


前向きに生きようとしていた矢先の報告で渡良瀬の心は完全に折れてしまった

自分の存在が大切な物の命を奪ってしまうと錯覚するほど

自分自身を追い詰め壊れてしまい

ついに首吊り自殺をしてしまう



しかし苦しくて暴れてしまったからだろうか

自殺に使ったビニール紐が切れて助かってしまう


首が絞められていた事と落ちて背中を打った事で

苦しくて何回も咳き込みながら、もがき苦しみながらも

立ち上がろうと手を付いた所が棚であったが

渡良瀬を支えきれず倒れてしまう


やがて頭が回ってきたときに目に入ったのは

彼女が趣味で買っていた開運グッズの招き猫と

その下に敷いてあった宝くじ

そして落ちた勢いで開いたであろうノートであった


ノートには最近調子が悪い、もし次も癌だったら、多分無理かもしれない

もし私が死んでも絶対に後を追わないで欲しい

忘れる事は出来ないかもしれないけど重荷にならないようにしてほしい。自分らしく生きてほしい

楽しんで生きてほしい、私は幸せだった、あなたを本当に愛していたと書いてあった

最後に追伸として引きずらないように思い出は心の中にあるだけで十分なのですべて処分してねと書いてあった


彼女の妹から聞いた言葉と同じような事だが、

彼女自身が書いたノート。

嗚咽交じりに泣きながらも

何回も何回も読み直した


どれくらいそうしていたか分からなかったが

ふと招き猫と宝くじの存在を思い出す


開運グッズや宝くじは、借金があった彼女が良く買っていたもので

いつもは比較的当たりやすい確率の物だったが

癌の術後1年祝いで外食した際に

たまにはと渡良瀬に買わせた当選金の高い物だった


その時の事を思い出し、苦笑いながらもネットで参照する


結果、キャリーオーバーで40億当選であった

何回も見て間違いがない事を確認した後

気になり、自殺に使った切れた紐を見てみると

確かに苦しくて暴れ接触面が擦り切れている

でも、いくらビニール紐だとしても3重にした状態で

切れるであろうか?もちろん答えなんて出ない

またもノートを見て渇いた笑いがでる


妹の様な存在の死

最愛の彼女の死

母のような存在の死

うまくいかない人生


この世界に、お前は幸せになれないと、わからされた様だった


しかし彼女はそれでも生きろと言っているように感じた


偶然なんだろう、どんなに確立が低くても、

あり得ないと思っていても、

得てして起きる時は起きる事なんだろう


でも、それでも、彼女がこの奇跡を起こしたように感じた


もう曲がらない、もう折れない

彼女がそう望んでいるのだから





人は生まれ落ちてから未来に歩き出す

その中で死んだ人はその場で立ち止まる

自分はここまでだけどあなたは歩いて行ってと


生きている人は振り返りながらも分かったと前を見て歩みを進める

やがてその人も立ち止まる時が来る

子供や孫に、ここで止まるけど

お前たちは先に行くんだよと言って


ちょっと疲れたな、でもいい人生だったなと思う


自分の歩いてきた道を振り返ると、とうの昔に立ち止まった人達がすぐ後ろに居て

お疲れ様と笑ってくれている

いっぱい歩いたんだと言うと

見ていたよと言う

これからは一緒だねと言う

そうだねと


また前を向くと遠くに歩いて行っている子供たちが居る


いつかまた会えるねと






どこかで見た事がある映像が頭をよぎり


渡良瀬は、またねと呟いた







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わからせ屋 @wootan-ch

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