24話 動向
・聖獣界 円卓の間
とある一室に、円卓を囲む四人の人影があった。
「ガイウスさんが先程亡くなりました」
穏やかな口調で語りかけてくるその老人は、たった今同胞を亡くしたとは思えぬほどの落ち着きを見していた。そして、それを聞いていたその他3人も同様である。
「せやな。うちもさっき感じ取ったよ」
白虎柄のスカジャンを見に纏う白髪の女性があっけらかんと言う。
「ガイウスが誰かにやられたとは思えんがね。しかし、亡くなったことは事実。彼の悲願が達せられたことを祈るしかない」
青色の着物に身を包んだ長身の男性は窓から見える空を見上げガイウスの冥福を祈る。
「そうだね。ガイウスちゃんが亡くなっちゃったことはすごく悲しいけど、今日はめでたい日でもあるよ?なんせ数千年ぶりに同胞が生まれたんだからさ。ガイウスちゃんのためにも、その同胞のためにも祝わなきゃ!はい、お酒!」
しんみりとした空気をぶち壊す明るく元気な赤髪の女の子は[不死の舞]と書かれた一升瓶を円卓に置く。
「度数はいくらなん?」
「100パーセント」
「アルコールやないか!飲めんのお前だけや」
赤髪の少女はキレの良いツッコミに満足したのか[不死の舞](アルコール)をがぶ飲みし始めた。
「それで翁よ。その新しい同胞とやらはどんな奴なんだ?」
着物の男が老人に聞く。
「そうですね。まだ、なんとも分かっていませんので近々会いに行こうとは思っています」
その答えに白髪の女性が反応する。
「じゃあ、うちも付いて行くわ。久しぶりに[一なる世界]の温泉に浸かりたいし」
そこで、着物の男と赤髪の少女も便乗し温泉旅行兼、新たな同胞との邂逅を果たすため[一なる世界]へ赴くことが決定した。
◇◇◇◇◇
・ギルドハウス【月夜の遠吠え】
「それで?あの子は手に入りましたか?」
とあるギルドの一室。そこで、二人の男が密談していた。一人は、上等な衣類に身を包む商人にもう一人は背中に大太刀を背負った筋骨隆々の大男。両者の唯一の共通点といえば種族が白狼獣人であることのみである。
「すまんな。まだ時間がかかりそうだ。なんせ、そのガキは暁の連中共に守られてやがる。面倒くせーことにな」
はあ、とため息を付く大男は商人の男に文句を垂れる。
「本当に成功するんだろうな?」
「もちろんです。もし、このことが実証されれば我々一族は神の血脈であると証明されるのです。証明されればこの国の王位に就ける」
まるで、夢物語のような話だがこの男はそれを証明できる。ある少女さえ手に入れれば。
「クソ!よりにもよって暁の星に保護されてしまうだなんて」
壁というものは誰にでも立ちはだかってくる。しかし、その商人はとあるユニークスキルで毎度乗り越えて来た。今回も乗り越えられる壁であると確信している。しかし、なかなか上手くことが運ばないことに次第に苛立ちを覚えていた。
「クラウド、時間は有限だ。次の【紫月】を逃せばもうチャンスはやってこない。頼むぞ」
「分かったよ。それまでには必ず連れてくる。それに、アイツもそろそろ遠征から帰ってくるだろうしな」
クラウドは下劣な笑みを浮かべる。
「そうか、アイツが帰ってくるのか。良いか?あの少女は殺すな。あとはどうなってもかまわん。いざとなれば領主でさえもな」
「はいよ」
そう言い残し、商人はギルドハウスを発った。
カーバンクルさん、異世界を満喫する。〜そのモフ、聖獣につき〜 ピョン太郎 @Kanesama0709
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