魔王城のつくりかた
南瓜の王冠
第1話
「…………………」
”彼”は目が覚めたら石造りの部屋に居た。
少なくても彼は昨日まで自室に居たし勿論こんな石造の部屋なんて知らない。
寝ぼけた視界、霧掛かった思考の中彼は「これって出席は如何なるのだろうか?」と思った。
やる気は無くとも曲がりなりにも高校生なので出席日数が足りず卒業出来ないのは少し洒落になら無い。
「…ゲーム…パソコン…すm《Pikon!!》…はい?」
やる事も無いので”何か娯楽用具も一緒に来てないだろうか?”そんな事を思いながら周囲を見回していた彼だったが、独り言を喋っていたら目の前に半透明の画面が浮かび上がってきた。
「魔物…設計…コスト…ダンジョン…ツール?」
奇妙な現象では有るものの”まあ、ゲームの代わりにはなるか”一通り触った後に彼はそう考えた。この奇妙な状況にそんな下らない事しか考えてないあたり完全にアホ且つマヌケだが現代人なんてこんなものである。
彼は”さて、まずはダンジョンの名前を如何しようか?”と考えた。
暫くした後、結局彼は”後で良いか”と結論づけた。
今現在このダンジョンは3階層まである。
とは言え、それぞれ一部屋分しかないので拡張は必須だが。今彼は最終層である3階層のフロアに居た。
現在のコストはそこそこと言った所…またダンジョンツールに記載されている情報によるとこのダンジョンがある場所の危険度は3/10といった感じだ。ダンジョンが解放されるまで最大でも3日程の猶予がある辺り彼は割と幸運だった…本人に自覚は無かったが。
まず彼はフロアの改装…では無く魔物の設計をする事にした。
既存の魔物を設置してもいいが、それは面白く無いと彼は考えていた。極めてアホ見たいで楽観的な思考だが現代人なんて割りかしこんな感じである。
彼はまずベースをクラゲの魔物にした。見た目は透明で細い触手を多数持っているパッと思いつく感じのクラゲでスキルは〔水中浮遊〕と〔分裂〕の二つだけだ。
まず〔水中浮遊〕のスキルを〔空中浮遊〕に変える。多少コストは上がったものの”大差はないのでありよりのあり”と彼は判断した。分裂はそのままにした。勝手に増える分にはコスト的に助かるからだった…と言うよりクラゲをベースにした理由の一つがそれだった。
次に〔呪撃:脱力〕と〔自爆〕のスキルを付与した。〔自爆〕はデメリット扱いだった為逆にコストが減少し〔呪撃:脱力〕のコストを相殺出来るのも彼的には可成り魅力的だった。ステータスはHPと敏捷に極振りした。ここまで来ると立派なクソモンスターだった。MMOなら害悪扱いされて運営に非難轟轟なレベルである。〔自爆〕に[貫通属性]があるのも含めてガチの害悪だった。
とは言えダンジョンに来るものは大概稼ぎに来ているのだ、こんな経験値も性能もクソな魔物がいるダンジョンなんて誰も来ない…なのでドロップを良くする事にした。撒き餌である。ドロップはドロップする魔物と関連がある程コストが安くなる。
だから彼は通常ドロップを〔初級解呪ポーション〕にした。ダンジョンツールの相場アプリで見た限り初級でも人類的に価値が高くダンジョン的に安上がりな事も理由の一つだった。
ドロップ率を高めた代わりに他のドロップを無くして稼ぎ用の魔物にした。
因みにこの稼ぎとは攻略者と彼の両方から見てだ。懸命な者はもうすでに気づいてるかも知れないが彼はクラゲ…命名{カースジェリー}(後に冒険者達に害悪クソクラゲと呼ばれる)によって負わされた呪いを〔初級解呪ポーション〕で回復させる事でお互いに十分な利益が出るまで戦わせようとしたのだ。その発想は完全に悪魔のそれだった。
ダンジョンはダンジョン内で消費したものを吸収して成長する。自動的に生成するエネルギーも一定量あるとは言え、成長に使うコストは専ら攻略者から奪ったものである。殺害が一番エネルギーが取れるが長期的に見ると普通に戦い続けた方がお得なのだ。
レベルは諸々の事情を考える上げない方がいいので1にした。出現量は1フロアにつき5体としたコストと敷地の面積の兼ね合いもあったのだ。
最後に彼は2階層への扉の前に「現在工事中」の看板を設置して、ダンジョンを解放した後に寝た。
少々不用心だったが冒険者ギルドはドロップ資源的に有益な場所と認識したらしく2階層に来る事はなかった。
魔王城のつくりかた 南瓜の王冠 @pumpkinthecrown
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔王城のつくりかたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます