今日と同じ明日のこと
神﨑公威
今日と同じ明日のこと
先生はホームルームが終わってすぐに僕を見た。
夏休みの宿題を提出しなかったことのために、捕まえて説教しようというのだろう。僕が宿題を済ませているかどうか先生は知る由がない。
僕はうやむやにするために、明日には提出すると伝えるつもりだ。多少あとになったところで先生は、今日一日ですべてに目を通さないだろうから。
いずれにしても今日はもう帰る。わざわざ持ってきなさいとまでは言うまい。
しかし僕はこれから友達の家でゲームをする予定だ。夏休み終わり間近からハマりだしたものがある。それは毎日しなくちゃならないと感じる。宿題には感じない。
ここで明らかにしておくが、宿題はしていない。ドリルのさんぶんのいちだけは済ませた。いっそ、先生の視線を無視して帰ってしまおうか。
そうしよう。帰った。
もう既に友達の家でゲームをしている。ここで友達に聞いてみる。
「夏休みの宿題もうだした?」
「そりゃそうやろ」
そりゃそうだ。まだしていないのかという目で見てきた瞬間に、友達のキャラクターを伸した。簡単なゲームだ。気分がいい。
しばらくして夕5時半を知らせるチャイムが鳴った。宿題はもちろん進んでいない。家に置いたままでもない。実は、ずっと荷物に入っている。
ランドセルにも、今握っているナップサックにも。持ち歩いている。けれど一向に終わらせようという気がおきない。
とうとう夕飯を食べて、シャワーを浴び、布団を被ってしまった。なにが起きたのか。いや、何も起きていない。
父と二人の寝室で、バラエティ番組の声が聴こえている。戦争はどうしてなくならないのかな。
宿題を済ませて眠るのはどんな気分なんだろうか。おぼろ月はモヤモヤしたままだろう。
明日になれば、友達に聞いてみよう。宿題を済ませた気分を。そして僕も今の気持ちを教えてやろう。
戦争はたぶん終わらない。明日も先生に会えるといいな。
今日と同じ明日のこと 神﨑公威 @Sandaruku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます