EP.027 可能性の開拓者Ⅰ/ブリーフィング
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タイトル「転生恋戦~転生者の俺だけど、国から決められた婚約者がすっごく甘やかしてきます。どうしよう~」
作品ページURL:「https://kakuyomu.jp/works/16817330666083845260」
第1話URL:「https://kakuyomu.jp/works/16817330666083845260/episodes/16817330666083892476」
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──シティ、ギルドの合同によるバルチャー討伐作戦。それを成そうではないか。
シティ〝カメロット〟傭兵ギルド支部長であるアレックス・フォーサーが提案したその言葉は、可及的速やかにシティ行政府にて可決され、即日実行に移されることとなった。
そして今日、クロウは、その一大作戦のためのブリーフィングに呼ばれた形だ。
「──それじゃあ、ブリーフィングをはじめようか」
告げて、会議室の中に集った軍人や傭兵達を睥睨するのはハニーブロンドの髪を持つきざな男──毎度おなじみ鋼槍機士団総隊長であるラスト・フレイルである。
彼が告げると同時に、全員の視線がそちらへ向けられた。クロウもハルカと共にその一席に加わりながら、ラストの言葉を聞く姿勢を取る。
「今回行われるのはシティと傭兵ギルド合同による大規模バルチャー討伐作戦だ。かねてよりシティ〝カメロット〟周辺を脅かしてきたバルチャー集団。そんな連中だが、この度ある傭兵の活躍によって、連中の居場所とその規模が判明した」
ラストはそう告げて、その視線をクロウへと向けた。名うての総隊長が意味深に見やるので他の軍人や傭兵もクロウを見詰める。
「その傭兵ってのが、そこにいるクロウだ。独立傭兵だが、その腕は俺が保証する。彼も今回の作戦に参加するから、そのつもりで」
そう告げるラストの言葉にたいし、彼を信頼している軍人はともかく、傭兵達が向けるのは訝し気な視線ばかり。
彼らから視線を向けられてクロウは居心地悪く身じろぎする。
(まあ、当然か。ここにいる奴からしたら名も知らないようなガキが一人紛れ込んでるんだから、そんな顔にもなる)
内心で苦笑を浮かべ、クロウがそんな風に思う一方、ブリーフィングはラストによってテキパキと進められていた。
「それじゃあ、本題に入ろう。今回の作戦目標はバルチャー集団の殲滅。連中の生死は問わない。とにかくバルチャーどもを倒しきればそれでOKだ」
物騒極まりないその発言も、しかし傭兵達からすれば当たり前のことなのか、彼らはその顔に理解の色を浮かべて頷く中、それを確認しながらラストは自分のすぐそばにあった機器を操作し、会議室に集った者達の前に巨大な立体映像を表示させる。
「まず、ここにいる奴らも気になっているだろうバルチャーの正体について語っておこう。今回バルチャーどもをまとめている頭目がこいつだ」
ラストの言葉と共に立体映像の中に一機のFOFが表示された。
牛の頭部にも見える特徴的なヘッドパーツが印象に残るその機体。
左腕には巨大なチェンソー、もう片方の手には連射性を重視したエーテルビームライフル。
そして背面左側の装備はエーテルビームバズーカで、逆側にはエーテルパルスシールドを投射する機能を持ったエーテルパルスシールドランチャーと、やや近接よりでありつつ、全体的にはいろいろな状況に対応できるような装備だ。
「この牛頭のFOF。この特徴的な見た目から知っている奴もいるかもしれないが、こいつのコードネームは〈アルデバラン〉──五年前、シティ〝トロイア〟を単独で壊滅させた史上最悪の虐殺者だ」
ラストの言葉に、クロウを除く会議室の面々がざわめきだす。
「こいつ自身、もとは傭兵ではなくサルベージャー──要は旧文明の遺構都市とかから遺物や技術を漁って拾ってくるのが役目の人間だった。だが、ある日突如としてシティに反旗を翻し、当時そこにいたシティを守っていた傭兵のFOF30機あまりと百万人の市民をともども虐殺……一夜にして壊滅させた史上最悪のバルチャーだ」
よほど有名な事件らしく、それだけで会議室内の面々はその表情を引き締める。
それを見やりながらラストはさらに解説を続け、
「こいつを中心にバルチャーどもは現在30機のFOFと100機以上の武装した
と、言ってそこでラストは一度言葉を切り、映像を切り替える。
そうして映し出されたのは、やたら濃い霧に包まれた都市? の遠望だ。
「──そこのクロウがバルチャーから情報を引き出してくれたおかげで、その居場所がわかった。それがここ。旧時代の遺構都市〝霧の都〟リヴァイアだ」
「……リヴァイア……?」
ラストの言葉に俺が疑問を浮かべる中、それを受けて隣に立つハルカが声を潜めながらも、解説を口にしてくれる。
「カメロットの近郊にある旧時代の都市だった遺跡です。大崩壊以前から存在するなにかしらの技術が暴走した影響で、都市は常に濃い霧で覆われていているのが特徴でして」
ハルカからの言葉を聞いてなるほど、頷く俺に同じような説明を外部から来て事情が分からないだろう傭兵にもしていたラストは、そこで首を縦に振り、
「この遺構都市は、もう五十年以上も前にサルベージャ―達によって調査されつくしていて、めぼしい遺物もないことがわかっていたから、完全に忘れ去られていた形だな。シティも今回の件を受けて、大昔の資料を慌てて引っ張り出したって始末だ」
苦笑するラスト。それに周囲の人間も同じような表情を浮かべる中、ふとその中で一人の傭兵が片手を上げた。
「一つ、質問をよろしいだろうか」
生真面目そうな声音でそう問いかける傭兵にラストは視線を向けながら頷く。
「ああ、えっとあんたは──」
「──傭兵団〝
それはある意味傭兵として確認するべき問いかけだった。そんなオスカーからの問いにラストも理解の色を示しながらそれを告げる。
「いや、確認されていない。というか、この遺構都市は現在でも稼働している旧時代の機械が影響して、強烈なエーテルの嵐が起こっていてな。それが原因かは不明だが、ガイスト達は好んでこの都市に近づこうとはしないんだ」
「なるほど。いや、バルチャーを相手にしながらガイストの相手も、となるとなかなか骨が折れる。そうだというのならこちらしてもありがたい」
「おう、それともう一つ朗報だ。今回バルチャーどもが有するFOFは30機と先に言ったが実際にはその内二機はすでに撃破済み──それもそこにいるクロウがやった」
また俺へと注目する傭兵達。彼らが驚きの視線を向ける中、ラストはニヤリとした笑みを浮かべて、傭兵達へさらにこう告げてくる。
「倒されたのはヘッド&ガデル兄弟。指名手配犯としてあちこちに出没していたバルチャーだから知っている奴も多いだろう。ああ、そういえばそこの〝誠実なる揺り籠〟とも浅からぬ因縁があったはずだな?」
ラストの問いかけに頷くオスカー。
「ああ。我々にとっては『父』を殺した仇敵だ……なるほど、君があの兄弟を……」
言ってまじまじとオスカーがこちらを見やってくるのでクロウはひょいと肩をすくめる仕草をした。そんなクロウとオスカーに横から別の人物が声を上げる。
「んなことはどうでもいいっての。要はバルチャーどもを倒せばいいんだろ。そのために俺達〝
横柄な態度でそう告げる大柄な傭兵。〝狂気なる猫〟なる名前らしい傭兵団のリーダーだと思われるそいつは、ジロリとラストを睨みながら問いを発した。
「んで? あんたらシティの軍隊はどうすんだ? まさか、俺達に仕事させてなにもしないってのはないだろ? いくらここが内陸の生産シティだからって高みの見物とか決め込まれたらたまらないぞ」
「その点は安心しろよ、傭兵。シティからは総勢で18機のFOFを出す。うち3機は遠距離砲撃タイプの
18機。それは現在のシティ〝カメロット〟が投入できるほぼ全戦力と言えた。
先の近衛従兵型の件で、大きく戦力を減らした鋼槍機士団。
シティの守りにつく最低限を除けば、ほぼそれだけしか戦力として残っていない。
逆に言えば、今回のバルチャー討伐にシティの軍はそれだけ本気だという所作でもあった。
「ハッ、だったらいいけどよ」
「……シティ側から18機。さらに我々傭兵団側のFOFも15機ほど。総数は33機か。28機のFOFを有するとはいえ、いっそバルチャーどもが可哀そうになってくる戦力差だな」
各々がそう会話を交わす中、ラストはパンパンッと両手を叩いて注目を集め、その上でその場に集った面々に告げる。
「そういうわけだ。ここにいる奴らはどいつもこいつも名をとどろかせた凄腕の傭兵ばかり。この戦力ならバルチャーなんて敵じゃない。さっさと連中をぶちのめして、その後の祝杯をいただくとしようぜ」
にやりと笑ってそう結ぶラスト。
それにたいしてその場の全員が同じような表情を浮かべた。
クロウもまたそんな彼らの表情を見ながら思う。
(さあて、久しぶりの対人戦といきますかねえ──)
内心でそう独り言ちるクロウ。
彼がそんな風に思う頃、リヴァイアにいるバルチャーはというと──
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【直立重機】
パワーローダー。この世界に存在する二脚または四脚以上の脚部で直立する重機の総称。いわば簡易版FOFであり、FOFからその絶対要件であるダイレクトリンク、HbE、APRAを抜いたもの。
直立するゆえにどんな傾斜のきつい場所、でこぼこの地面でも安定して作業ができることから、この世界の住民にとっては当たり前に運用される乗り物であるが、バルチャーなど一部の者はこの直立重機に無理やり武装を乗せることで、兵器化し、略奪行為などに使う。
ただししょせんは兵器でない重機なのでFOF相手には無力。エーテルビームがかすれば爆発四散し、なんならちょっと足を振り上げて蹴り飛ばせばそれだけで数機まとめて吹っ飛ばせるようなそんな雑魚敵である。
そのため今回のブリーフィングでもほぼ存在はない者として扱われることとなった。
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