人間嫌いな英雄~固有スキル【魔獣操作】はチートスキル

パンパース

第1話 光

「人間は嫌いだ」


小さい頃、嫌がらせを受けていた。

なぜ嫌われているのか、嫌がらせを受けているのか分からなかった。

そして歳を重ねるごとにその意味を理解し始め、それと同時に大人だけでなく、同世代の者たちや先輩達からも嫌がらせを受けるようになっていた。

そしてある日、一つの魔王軍が一国を滅ぼした一報が入ったその日。

地獄が始まった。

俺は牢屋に入れられた。

食事は一日一回。

薄黄色のスープ一杯。

そんなもので栄養が取れるはずも無く、俺の身体は細くなっていき、出されるスープの皿を持ち上げられない程まで筋力が落ちた。

だから地面に這いつくばって犬の様にペロペロとお皿を舐めて食事をする。

お腹が空くという概念はとっくに無くなっていた。

一週間に一回、拷問があった。

指を切り落とす拷問。

囚われて最初の頃は一日に一回、指を切られていたが、回復速度が次第に落ちていき、一週間に一回のペースで拷問が行われる。

目をくり剥く拷問。

俺の目は生まれつき青く輝いていて、それが気持ち悪かったようだ。

しかし、くり剥いてもくり剥いても俺の目は再生をしていた。

たくさんのあらゆる拷問を受けた。

その拷問に意味があったのかはわからない。

殺してほしくても殺してくれない。

夜の数だけ死を願った。


「おい、何だこれは、、」


「酷すぎる、、

 早く手当てを!!」


誰かが騒いでいる。

目を開けることすら出来ない。

ただ、誰かに持ち上げられたことだけがわかり、俺は意識を失った。



食欲をそそる匂いが脳内を覚醒させる。

目を開けようとするが、あまりの眩しさに一度目を細め、呼吸を整える。


「あ!起きた!!」


子供の声が聞こえ、誰かがこちらをのぞき込んでいる。


「目は覚めたかな?」


「え、」


ふかふかのベット。

いつもの固い地面ではない。

排泄物のような臭いもしない。

牢屋ではない。

それだけで青年は鼓動が唸った。


「回復魔法で何とか身体は維持してるけど、、とにかくご飯食べて!」


上半身を起き上がらせて、金髪の女性は笑顔でそう話す。

スプーンを口に放り込まれ、口の中に暖かいとろけた何かが口の中に広がってく。


「シチューは美味しい?」


「シ、チュー?」


「知らないの?

 まぁ無理もないか」


こんなに優しくされたのは初めてで、心が温かくなる。

人が嫌いで仕方なかったのに、あっさり好きになりそうになる。

そんな自分が嫌いだ。

涙は出ない。

ただ、今までの辛く・苦しい牢屋生活を涙で流した。

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