第18話
案内されたのはキルミースさんの部屋。
執務室ではなく、私室のほうだった。
カロルとラムレアは、ドアの外に待機する……らしい。
ソファセットに向かい合わせに座ったのはいいけれど……キルミースさんがイケメンすぎて直視できない。
ふたりきりでいる事がなんとなく居心地悪くて、つい部屋の中をきょろきょろと見回してしまう。
「どうか、しましたか?」
「あ、いえ」
さっきまでさんざんしゃべって、一緒に石碑の解読もしたのに、それも暗い中ふたりきりで。
超イケメンとわかったとたんにしゃべれなくなるなんて、私ってこんなにヘタレだった?
一目ぼれしたイケメンに玉砕上等!ってコクりに突撃したことだってあるじゃない。
いや、そりゃあ、あの時のイケメンと、目の前のキルミースさんとではイケメン度合いの次元が違うけど!!
「ほんとに、どうもないのですか?」
近くから聞こえる声に顔をあげると。
!!!
目の前、すぐ近くでキルミースさんが私の顔をのぞきこんでいた。
超イケメンのどアップ!まぶしすぎる!!
「ひゃぁ、って、あの、キ、キルミースさん?ちょ、近。顔、近」
何言ってるんだ?私、おまけに多分、顔は真っ赤になってるはずだ。
「大丈夫ですか?顔が真っ赤ですが?」
……やっぱり。
「気になることがあるなら、なんでも言ってくださいよ?あなたは私の大切な嫁ですし、ここには私とニーナのふたりしかいませんから遠慮はいりません」
「ええっと。はい。いや、何にもございませんです。はい」
うぁぁ、言葉遣いが無茶苦茶だよ、私。
キルミースさんの表情がくもる。
「もしかして、私のこの姿がお気に召さないとか?」
「違います!逆です。超絶好みというか、なんというか。あの、イケメンすぎて緊張しちゃったんです」
あ、しゃべれた。
「あ、の。キルミースさんの今のお姿って望まれた姿なんですか?それとも、もともとの?」
しゃべれたことで落ち着きを取り戻した私は、気になったことを聞いてみる。
願わくば望んだ姿だと言ってほしい。
「望むも何も、私は他の者の姿を知りません。もちろん自分の姿も見たことはありませんから比べようもありませんが。何も望んでいないからには、この姿はきっと、もともとの姿なのでしょう」
……一発
生まれながらの超絶イケメン。
「でも、ニーナも元々の姿のまま、でしょう?」
そう。
望むままの姿を得ることもできるって言われたけど、望まなかったんだよね。
ルケッヘさんにはスタイル抜群の美女だとか、サラッサラのロングヘアとか言ったけど、それって私じゃない気がするし。
「よかったです。ニーナが元の姿のままでいてくれて。違う姿になっていたら、どうしようかと思ってましたよ」
「それって、どういう意味ですか?」
「言葉通りですよ。ありのままのニーナを私は好ましく思っています。謎解きは終わりましたが、これからもずっと私の嫁として隣にいてくれますか?」
私の顔をのぞきこんだままの姿勢でキルミースさんがたずねてくる。
いや、もちろん異存なんてないし、OKなんだけど。
「あのっ!キルミースさんのお顔がまぶしすぎて、うまく答えられません」
「それでは、目を閉じたらいかがですか?そうしたら、顔は見えなくなりますよ」
クスッと笑いながらキルミースさんが言った。
あ、それいい考えかも。
私は目を閉じた。
うん、見えていないというだけで落ち着いてくる。
「改めて聞きますね。ニーナ、謎解きは終わりましたが、これからもずっと私の嫁として隣にいてくれますか?愛しいニーナ」
なんか、さっきのと比べて最後にひと言増えてる気がする……けど。
「はい。私でよろしければ。いつまでもキルミースさんの隣に居させてください」
……ちゃんと言えた。
ちゃんと答えられてました?そう聞きたくて、目を開こうとしたその時、柔らかくあたたかいもので、私の口は覆われた。
Fin
転生したら、おヨメ様。 奈那美 @mike7691
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